2009/07/11

ある時代の終わりとラブストーリー~「Valentino : the Last Emperor」~


それほど長くはないニューヨーク滞在期間(7日間)のあいだに映画を観るつもりはありませんでしたが、おそらく日本では劇場公開はしないであろう興味深い映画が、SOHO近くのAngelica(アンジェリカ・シアター)で上映されていたので観てきました。

Valentino : the Last Emperor/ヴァレンティノ:最後の皇帝」は、イタリアのファッションデザイナー、ヴァレンティノ・ガラヴァー二(Valemtino Garavani)の45周年イベントと彼の引退を追ったドキュメンタリー映画です。
日本では知名度があるデザイナーではあるものの、デザイナーラインは日本人が好む雰囲気ではなく(あらゆる意味で)リッチな洋服なので、同じプライスゾーンのシャネルやアルマーニほどポピュラーだという印象はありません。
どちらかというとライセンスの商品で目にするデザイナーの名前だったりします。

誤解がないように言わせてもらうのであれば・・・ヴァレンティノは革新的なファッションを提案したというよりも、社交界などのハイソサエティのレディーたちのライフスタイルに合わせた「ワードローブ」を提供してきたデザイナーだと思います。
ヴァレンティノは、その時々の流行を要素に取り入れながらも、ヴァレンティノの顧客層に向けて45年間ビジネスを続けてきたと言えるのかもしれません。

映画は、今まで殆ど明らかにされることのなかった、ヴァレンティノのビジネスパートナーであるジャンカルロ・ジアメッティ(Giancarlo Giammetti)とバレンティノの親密な関係を追いかけます。
ファッション誌の社交欄などを見たことある方なら、ヴァレンティノの側に付き添うハンサムな白髪の男性の存在を記憶しているかもしれません。
公に、ヴァレンティノ自身はジャンカルロとの恋人関係(約12年間続いたらしい)を認めることはありませんでしたが、この映画の冒頭で、彼らが出会った経緯も語られます。
他のファッションデザイナーの会社組織でもありがちなことですが、プレスオフィスにしてもスタジオにしても、バレンティノとジャンカルロのお気に入り(肉体関係にあったか、なかったかは別にして)を、社内にはべらかしていることは画面の端々から伺えます。

映画が進んでいくと、ヴァレンティノというデザイナーはジャンカルロというパートナーなしでは、これほど世界的なデザイナーにはならなかったのではないかと思うほど、ジャンカルロの存在というのは大きいというのが伝わってきました。
気難しいヴァレンティノとスタッフの間を取り持ち、バレンティノに対しては最大の理解者であり続ける姿には、献身的な妻のようであり、裏ですべてをコントロールする司令官のようでもありました。

この映画の見せ場は、外部に対しては影の存在であり続けたジャンカルロに、バレンティノが勲章の表彰を受けるスピーチで、心からの感謝と彼への愛情を涙ながらに伝えるシーンでしょう。
彼らの関係が公に出来なかった時代背景の哀しさ・・・そして、ゲイの男性がハイソサエティーのレディーたちを美しく着飾らせるというアイロニーと、ファッションが「夢」であった時代の終りを感じずにはいられませんでした。

そして何よりも・・・バレンティノとジャンカルロの(ある意味今でも続いている)秘められたラブストーリーに最も感銘を憶えたのでした。


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