2017/06/21

「信じる者は呪われる!」・・・”検索してはいけないワード”になったスプラッター系アダルトビデオ「猟奇エロチカ 肉だるま」、都市伝説の元ネタになった後日談ドキュメンタリー風アダルトビデオ「オソレザン 降霊ファック」


インターネットで”検索してはいけないワード”として知られる言葉に「肉だるま」というのがあります。これは、1999年にマニア系ビデオメーカーのアロマ企画から発売されたアダルトビデオのタイトルで・・・「観たら呪われるビデオ」としても知られています。

タイトルどおり女性の四肢を切り落として”肉だるま”にするという、スプラッター系のアダルトビデオではあるのですが、都市伝説となった理由は、内容の過激さだけではありません。本作に出演したAV女優の大場加奈子(大馬鹿な子をもじった芸名/本作のエンドタイトルで”香菜子”とあるが主な文献では”加奈子”と表記)さんが、発売日の前日(1週間前という説もあり)に、下北沢駅近くの踏切で電車に轢かれて亡くなったからなのです。


お酒が好きで一人で飲み歩くことが日課だったいう彼女が泥酔して踏切に侵入して、運悪く”事故”に遭遇したとも言われる一方・・・「肉だるま」出演後、精神的に不安定になり自ら踏切に飛び込んだ”自殺”だったという人もいます。地元の友人にアダルトビデオに出演していることが知られて、精神的に苦しんでいたらしいという証言や、当時付き合ってた彼氏との関係が上手くいっていなかったという話もあるのです。

”事故”か”自殺”のいずれだとしても「肉だるま」発売日直前に彼女が亡くなられたことは事実のようで・・・出演作品の中で手足を切断されてバラバラになった彼女が、実際に亡くなった時も同じように電車にひかれてバラバラになってしまったということが、本作の”呪われている”感を煽っているのかもしれません。

「肉だるま」は、多くのスナッフフィルムにありがちな”ドキュメンタリー”というスタイルになっています。出演者は4人だけ・・・カナ役の大場加奈子さん、キク役の菊淋、悪徳カメラマン役の北野雄二氏(当時のアロマ企画社長)、そして悪徳監督役の穴留玉狂監督です。

大場加奈子さんは、下北沢の飲み屋で北野雄二氏にスカウトされた”素人さん”(少なくとも業界的には)で、本作以外には一作だけハメ撮りビデオに出演したことはあったそうです。穴留玉狂監督は「私の赤い腸(はな)」というアダルトビデオ(女性が過激な自傷行為を行い続ける)でアロマ企画からデビューして、本作が2作目。菊淋は、現在でもAV男優と監督の二足のわらじをはいてアダルトビデオ業界で活躍しています。


悪徳監督(穴留玉狂)は、クライアントの趣味嗜好(フェチ)に合わせたアダルトビデオを撮っている人物らしく・・・撮影の一週間前、カメラマンから次回作の連絡があり「最後に男優も殺しちゃって」と伝えられます。その後、監督はカナ(大場加奈子)とキク(菊淋)という素人を面接。カナは愛人バンクに登録しながら、いろんな仕事を掛け持ちしている女性で、SMもスカトロも「NGなし」と断言して”やる気”を見せます。キクは”死体好き”という根っからの変態で、今回の撮影内容に関しては「了解済み」ということらしいのです。


撮影現場は、伊豆の一軒家(実際に北野雄二氏の知り合いから借りた家らしい)・・・4人が到着するやいなや、絡みの撮影が始まります。ベットの底板が壊れたり、ダミーの射精用の”疑似”が使われたり・・・アダルトビデオ撮影現場の裏側を垣間みるようです。その夜には、豪勢に生きた伊勢エビをさばいて、和気あいあいとした食事会が繰り広げられます。


翌朝、グラドル風のイメージビデオのような着衣での撮影が行なわれた後、いよいよメインの撮影が始まるのですが・・・面談で「NGなし」とカナが断言していたこともあり、縄縛りや鞭打ちなどのSMや、浣腸プレイが待っていたのです。しかし実際に撮影が始まると「恥ずかしい」「痛い」「嫌だ」と、カナは駄々をこね始めます。クライアントの意向で”スカトロ”だけは、絶対に必要らしく、当初は優しく説得しようとする監督とカメラマン。しかし、本気で嫌がるカナの態度に撮影現場は一気にシラケ気味・・・監督はキレて激しく叱咤しますが、カナの意志は固く、結局カナひとり帰宅することになるのです。実は、ここからが「肉だるま」の本編なのであります!

ここからネタバレとグロテスクな描写が含まれます。


玄関先で靴を履こうとしているカナを、監督が背後からバットで殴って気を失わせて、失神状態で撮影部屋へ連れ戻すのです。股間の部分だけ衣服を切り取られて丸出し状態にされながら、頭は包帯をぐるぐる巻きにして、手足をベットに括りつけられてしまいます。監督はキクにカナを犯すように指示・・・そして、キクが腰を振っている最中、監督はナタを取り出して女優の右足首を切り落としていまうのです。


キクは一瞬戸惑いを見せながらも、そのまま行為を続けます。カナが無反応なことあり、監督は次に膝下にナタを振り落すのです。今度はカナも叫び声を上げて反応・・・監督はキクを突き飛ばしてカナに馬乗りになり、舌を引っ張り出して皮むき器で舌を削ぎ始めます。(本物の豚の舌を使ったらしい)苦痛の悲鳴をあげるカナに興奮した監督は、裁ちバサミで舌先を二つに切ってしまうのです。


監督とカメラマンによるカナへの残虐行為は夜通しで行なわれます。監督はナイフで右腕を切り落とそうとするのですが、骨や皮を切り落とすのに試行錯誤することさえも、どこか監督は楽しんでいる様子。さらに、止血剤や痛み止めのモルヒネを打ちながら、息絶え絶えのカナに向かって「痛いの~?生きたいの~?」と、子供をあやすかのように問いかけるのです。息絶え絶えのカナを愛しんでいるかのようで・・・残酷なフェチに恐怖を感じます。


居眠りしていた(この状況のショックから?)キクを起こして、監督は左足を切り落とすように命令・・・監督の言いなりのキクは、素直にカナの膝下にナタを振り下ろすのです。もはや、カナが生きていることがアリエナイ感じではありますが・・・カナのお腹をナイフで裂いた監督は、その切り口を広げながら「気持ちいいよ~」と、キクに切り口を犯すように促すのです。そもそも”死体好き”を自負していたキクでありますから、すぐさま勃起したモノを挿入して、異様に興奮して射精してしまいます。


その様子を背後から眺めていた監督は、今度はキクの後頭部に一撃・・・「なんで、なんで」と断末魔のつぶやきをしながら、キクも息絶えます。監督はキクの股間から睾丸を取り出し、カナの顔面にナタを振り下ろし顔を二つに割って殺害・・・カメラマンは惨劇の現場をじっくりとカメラに収めて、撮影は終了します。監督は誰か(スナッフビデオの製作を依頼したクライアント?)に電話で後片付けの依頼をすると・・・「帰りますかっ」とカメラマンに向かって話しかけ、本編は終わるのです。


本作よりも十数年前につくられた「ギニーピッグ2 血肉の華」と比較すると、特殊効果は稚拙なレベルです。しかし、本作の制作費が65万円であったことを考慮すると、これはこれで上出来なのかもしれません。穴留玉狂監督は、美容学校に通った経験を生かして特殊効果も担当したそうです。人体分解が見せ場の本作には、全身のダミーは制作しなければならなかったようなので、制作費の殆どはダミー制作費であったと思われます。ちなみに、大場加奈子さんの本作のギャラは5万円だったそうで・・・当時のアダルトビデオ業界の常識でも破格の低ギャラだったそうです。

アダルトビデオとしては”ヌケない”ことがアダ(?)となってか、一時期にはVHSテープのセールワゴンで100円で投げ売りされていたこともあったようですが、ネット上で「肉だるま」が都市伝説化したことによって、世間の注目を浴びる作品となったのです。2000年代半ばには、アロマ企画直営の高円寺バロック(現在は新宿に移転?)で、DVD版が販売されていたようですし、去年(2016年)にはアロマ企画の通販サイトでもDVD版が再販されています。

現在は再び販売終了となり、国内DVD版の入手は困難になっていますが、アメリカのMASSCRE VIDEO社から発売されたDVD版の「Tumbling Doll of Flesh(英語タイトル)」は、日本のアマゾンでも購入可能(2017年6月時点)。ボクが視聴したのは、この海外版ですが、日本国内で流通したビデオと同じマスターを使用しているらしく、モザイク加工されています。実は、このモザイク加工が本作のリアル感に貢献しているところありまして・・・ぼかされている部分があることで、特殊効果の”粗”が気にならないのです。

「観たら呪われるビデオ」と言われている本作に、どのような”呪い”があるのかと調べてみると・・・かなり胡散臭いところがあります。何故なら、どれもこれも「肉だるま」のスタッフに起こった出来事で、あくまでも彼らの自己申告であるからです。また”呪い”と言われる話の元になったのは、女優さんが亡くなってから3年後に「肉だるま」と同じスタッフとキャストによって(性懲りもなく!)制作された「オソレザン 降霊ファック」というドキュメンタリー風アダルトビデオの中で語られていた事なのであります。


松永花葉という女優を伴って、北野雄二氏、AV男優の菊淋、穴留玉狂と他スタッフ2名と恐山のイタコさんに大場加奈子さんの降霊して、彼女の死の真相を解明することが目的の作品なのですが・・・アダルトビデオとしての要素は、北野氏と菊淋が代わる代わるで女優とエッチをするというところです。口内射精したザーメンをお地蔵様に吐いたり、わざわざ恐山の賽の河原でエッチしたり、仏様のフィギュアをアソコに挿入したり・・・と、不謹慎極まりありません。


大場加奈子さんとの思い出などを「肉だるま」の映像を挟みながら、北野雄二氏が出演女優に語るのが・・・彼女の命日になると不思議なことが起きるという”呪い”の数々(まとめサイトよって多少の違いあり)なのであります。

撮影スタジオに行こうとしたら、彼女が埋葬された雑司ヶ谷霊園に着いた。

サラリーマンのスーツであるはずの男優の衣装が、喪服になっていた。

北野雄二監督が絡みをする撮影が、呼吸困難になって出来なくなった。

撮影後の帰路で、いきなり黒猫が道に飛び出してきて事故りそうになった。

菊淋が共演することになった女優の名前が「カナ」だった。

打ち上げをしようとして、辿り着いた店が「スナック カナ」だった。

お酒をお供えしたら、不思議なことが起こらなくなった。

スプラッター系の作品の企画をすると、穴留玉狂監督の精神が不安定になる。

”呪い”であって欲しい(そうであった方が楽しい?おもしろい?儲かりそう?)という先入観が、偶発的な出来事を”呪い”と結びつけているとしか思えません。大場加奈子さんの死をネタにしたビデオの販売促進のために、不届きにも”呪い”を利用しているだけなのです。「オソレザン」の中で語られていた”呪い”の現象が、真しやかにネットで拡散し、やがて「本当の呪いのビデオであって欲しい!」という”オカルト好きな人々”の願望と結びついて「検索してはいけないワード」や「観たら呪われるビデオ」という都市伝説になっていったのだと思われます。

「信じる者は呪われる!」


販促の”呪い”には恐怖心を感じませんでしたが・・・「肉だるま」撮影時の話でドン引きしたことがあります。スプラッターシーンの撮影後、現場は異様な興奮状態になり、北野雄二氏、菊淋、穴留玉狂監督、大場加奈子さんの(プライベートな?)4Pで盛り上がったというのです。やはり「肉だるま」に関わった全員、フツーの精神の人たちではありません。ただ、大場加奈子さんが嫌々撮影に臨んでいたわけでなく、本人的には結構ノリノリであった(楽しんでいた?)であったのかもしれないというのは・・・妙にホッとしてしまうところもあります。

穴留玉狂監督は、近年はスカトロ系のアダルトビデオを専門としているようで、手掛けている殆どのタイトルに「糞」の文字が入っているという徹底ぶり!本当の殺人や傷害行為を行なっている映像を販売/流通させることは法律上不可能なので、スプラッタービデオは疑似で制作するしかありませんが、スカトロビデオならマニア(もしくはお金のためにできる人)が出演すれば「本物」が法律に触れることなく撮影することができます。性のタブーのハードルは年々低くなっているので、アダルトビデオ業界ではスカトロも珍しくはなくなっているようですが・・・まだまだ一般的には一線を越えた世界です。

ただ「ジャンク」「デスファイル」の死体ビデオ、極限のSMドキュメント、獣姦モノ、スカトロ、障害者や奇形者とのセックスと、倫理観とアダルトビデオの可能性に挑戦していたV&Rカンパニー(安達かおるやバクシーシ山下による1980~90年代の一連の作品)のタブー破りな”メッセージ性”は、穴留玉狂監督に欠如しているように思います。しかし、逆に安っぽい禍々しさに際立つからこそ、都市伝説になりえたのかもしれません。

ちなみに、ボクは「肉だるま」を数回観ましたが、現時点で体調不良などの呪われている兆候は、全く起こっていません。そもそも、ボクは霊的に敏感な方ではないし、都市伝説のたぐいは信じない方なので、たとえ呪われていても(!)気付つかない可能性もありそうです。しかし、この記事を最後に本ブログが二度と更新されることがなかっとしたら「観たら呪われるビデオ」という都市伝説どおり、ボクは本当に呪われてしまったということなのかもしれません・・・(笑)


「猟奇エロチカ 肉だるま」
1999年/日本
監督 : 穴留玉狂
出演 : 大場加奈子、菊淋、穴留玉狂


「オソレザン~降霊ファック~」
2002年/日本
監督 : 北野雄二
監督 : 松永花葉、北野雄二、菊淋、穴留玉狂



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