2010/05/19

「愛し続ければ、奇跡は起こるのよ!」切なくもドロドロの同性愛メロドラマ~同窓会(日本テレビ/1993年)~






このドラマを初めて観たのは、ボクがニューヨークにまだ住んでいる頃でした。
日本語放送のケーブルチャンネルで放映された時には、ゲイ、ストレートに関わらず日本人コミュニティーで非常に話題になっており、英語の字幕なしでも夢中になって観ていたアメリカ人のゲイの友人も多くいました。

斉藤由貴出演で、ほぼ同名の「同窓会~ラブ・アゲイン症候群~」というテレビドラマがありますが、まったく無関係です。
1993年に放映された井沢満脚本の「同窓会」は、同性愛を描きながら「愛」を観念的に追求した・・・トンデモナイ結末に突き進んでいく「メロドラマ」の傑作だと、ボクは思っています。
キャラクターたちは高校卒業から10年、改めて人生について考え出す時期・・・当時の日本の「27歳」の若者の人生観は意外にしっかりとしていて、現在(2010年)の27歳より随分と大人っぽいという印象です。
もしも、このシナリオを現在の設定にして再制作したならば、35歳ぐらいの設定ぐらいが、ちょうど良いくらいかもしれません。
このドラマのようなキャスティングを、今、再現することも困難かもしれません・・・準主役の「TOKIO」の山口達也をはじめ、オネエを演じる「TOKIO」の国分太一、そして不良ゲイ(?)のボスを演じる「V6」の坂本昌行と、主役以外のゲイ役にジャニーズを起用したのは、井沢満氏直々のリクエストだったらしいのですが、回を重ねるごとに役柄の存在が大きくなっていったそうです。

複雑な伏線とサブストーリーが織り込まれていて、すべての物語を説明するのは困難なことです。
それほど井沢満氏の脚本は練り上げられており、中盤の修羅場までは息つく間もなく、完璧なシナリオと言っても言い過ぎではありません。
風馬(西村雅彦)は、自分がゲイであることを認められず、七月(斉藤由貴)の元彼である康介(高嶋政宏)への愛を隠したまま、七月にプロポーズすることろからドラマは始まります。
しかし、結婚を前に男への衝動を抑えられず、バイセクシャルの(山口達也)とも、肉体関係を持ってしまうのです。
結婚後、風馬がゲイであることに気付き、自暴自棄になった七月に声を掛けられて、行きずりのセックスを一度だけしてしまいます。
実は、という少年は、高校時代の後輩の唯子(田中美奈子)の弟だったのです。
高校時代から交際していた七月康介、夫婦となった七月風馬七月風馬の夫婦二人と関係を持った、究極の友情の証として肉体関係を持つ風馬康介
七月風馬から女として愛されないことに苦悩しながらも、風馬を受け入れようとしていくのです。
そして、康介と交際を始めたの姉の唯子が加わり、四角関係、プラス、バイの少年というドロドロとした物語へと発展していくいきます。
男同士のラブシーンを、あやふやでなく、ハッキリと見せたこと自体が、当時は衝撃的だったとは思いますが、このドラマの目的は、流行りのゲイを風俗的に扱うことでも、男の全裸ばかり(女性のヌードシーンは一切なし!)をテレビで放映することでも、二丁目のゲイカルチャーやゲイコミュニティーを正しく表現することでもなかったようです。
古典悲劇のような登場人物たちの感情とドンデン返し連続のメロドラマによって、ゲイが潜在的に潜めている悲劇を、普遍的に描くということを目指していたように思えます。


「同窓会」の全10話のなかで、最も印象的なシーンは、第7話の七月風馬孝介唯子の5人が初めて一同に集まるという、有名な(?)修羅場です。
康介のマンションの部屋だけでのワンシーンという緊張感溢れる舞台劇のような場面は、このドラマが描こうとした「愛」の究極の形を語っています。
七月は幼い頃、母親に海で溺れさせられて殺されそうになり、自分は生きていることを許されている存在なのか・・・というトラウマを抱えて生きています。
ゲイである風馬の純粋な愛情を感じることで、七月は自分の存在の意味と場所を徐々に見出していくのですが・・・そのために彼女が受け入れなければならない事実は、あまりにも過酷です。
見返りを求めない愛情を風馬に捧げた「悟りの領域」で、七月はやっと自分自身を受け入れることが出来たのかもしれません。
風馬からの愛情をあくまでも求め続けるに対して、そんな七月は説くのです。

「愛し続けなさい・・・そうすれば、奇跡は起こるの。
心の中で、ある日突然、何かが分かる・・・変わるの」

ボクは、この台詞を、しばらく”心の拠りどころ”にして生きてきたようなところががあります。
しかし、そんな「悟りの領域」に達することなんて、そう簡単に出来ることではありません。
人と人との関わりの中で「奇跡」なんてあり得ないと・・・あえて深く関わることをせず、お互いの都合の良いように、適度な距離のある人間関係に満足しようと、歳を取るとともに自分を納得させてきたのです。
しかし「奇跡」は、本当に起こりました。
その「奇跡」というのは、ボクにとって、肉体や時空を超えた純粋で誠実な存在になること・・・のような気がしています。
それは「親友の死」にまつわる悲しみを受け入れることで、ボクが近づくことのできた心の中の「奇跡」だったのです。

「同窓会」
1993年10月20日~12月22日
水曜日午後22時より、日本テレビ系列
スタッフ
脚本/井沢満、演出/細野英延、五木田竜一
キャスト
斉藤由貴(折原七月)、西村和彦(安藤風馬)、高嶋政宏(中康介)、山口達也(丹野嵐)、田中美奈子(丹野唯子)、荻野目慶子(宮脇ちの)、松村達雄(幣原先生)、国分太一(藤島潮)、坂本昌行(嵐の友人)、別所哲也(勝呂克茂)、長与千種(同窓生・翔子)、高杢禎彦(同窓生・ヒゲ)、田口浩正(同窓生・タカマサ)吉行和子(風馬の母)、高田敏江(七月の母)


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