2010/05/28

奈落の底まで、いらっしゃい・・・救いのない復讐と思惑の悪循環~映画版「告白」~


原作を先に読んでいると、映画やドラマを観た時に「ガッカリ」ということはありがちですが、時には原作を超えることもあります。

湊かなえ原作の「告白」は娘を殺された女教師の復讐劇で、虚言を含む違う立場から語られるモノローグを読み進めていくうちに、徐々に深みにはまっていくような小説的な手法が効果的で、読後感が最悪の素晴らしい(!)作品でした。
原作を読んだ人なら分かると思うのですが、あまり色彩というのを感じさせない小説で・・・あえて言えば、グレーな感じでしょうか?
それを極彩色の映像ミュージカル仕立ての奇抜な演出中島哲也監督によって映画化するというのは、ある意味、驚きでした。
原作のストーリーを忠実に映像化しながらも独自の映画的演出で、原作を読んだ時以上のインパクトを与えてくれる中島監督なので、湊かなえの原作に狂信的にハマったボクとしては、見逃すわけにはいきません!

映画版「告白」は、6月5日より劇場公開ですが、待ちきれなかったボクは一足先に観てきました。
・・・というのは、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された「中島哲也映画祭」のチケットが抽選販売で当たったからなのです。
(それも、かなり良い席!)
「嫌われ松子の一生」「告白」「下妻物語」「パコと魔法の絵本」の4作を続けて上映し、中島監督と4作品の出演者たち(土屋アンナ、深田恭子、中谷美紀、役所広司、アヤカ・ウィルソン、阿部サダヲ、松たか子、木村佳乃)の舞台挨拶とトークショーという・・・まさに「中島哲也」漬けのイベントでありました。

さて、映画版「告白」ですが、ボクの期待通り原作を超えた映像化といって過言ではありませんでした!
原作のイメージどおり全編に渡ってグレーで、中島監督独特の蜷川実花チックな毒々しい色使いや唐突な花々、マリオ・ヴァーバ風のサイケデリックな照明は今回は封印されています。
しかし、イメージビデオのようにワンショットワンショットのすべてが絵になる美しい画面の連続で、鮮やかな色彩が殆どないにも関わらず、中島監督らしい陶酔感さえ感じさせるのです。
原作の第1章にあたる映画の冒頭は、松たか子扮する女教師の30分近いモノローグで、淡々とこの物語の発端となる娘の事故死の真相を語ります
序盤では、女教師の行った犯人への稚拙な復讐が告白されるだけなのですが、後日談が、犯人のふたりの少年学級委員の少女新任の熱血教師犯人のひとりの母親・・・と、それぞれの立場で語られていくと、徐々に事件に秘められた悪意が明らかになっていくのです。
犯人探しのミステリーではまったくなく・・・事件に関わる人たち、ひとりひとりの思惑悪循環を生み、さらにお互いの状況と関係を悪化させていくという連鎖を描いて、人と人が生み出す地獄を見せつけてくれます。
詩的な映像を切り返しながら、それぞれの心情を表現していくので、原作よりも加速的に登場人物達が堕ちていくような印象を与えていました。

エンディング近く、針が逆回りする時計という小道具を利用して、時間の逆戻りさせる妄想を映像化し、後悔という感情を「これでもか!」と視覚的に感じさせます。
幾重にも仕組まれた底なし救いようのなさを、原作よりも巧みに表現した中島監督の見事な映画的な表現でした。
そして・・・松たか子の微妙な笑みをたたえた表情で終わる、誰も報われないエンディングによって、さらなる奈落の底へ導かれるのです・・・。

「告白」
2010年/日本
監督 : 中島哲也
脚本 : 中島哲也
原作 : 湊かなえ
出演 : 松たか子、木村佳乃、岡田将生


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