あの「ギニーピッグ」リリーズの”正統な”スピンオフとして、ステファン・バイロ氏率いるアメリカのアンアースド・フィルムス(Unearthed Films)から、シリーズ3作目となる「アメリカン・ギニーピッグ:ソング・オブ・ソロモン(原題)」と4作目となる「アメリカン・ギニーピッグ:サクリファイス(原題)」が続けてリリースされました。
「アメリカン・ギニーピッグ:ソング・オブ・ソロモン(原題)/American Guinea Pig: Song of Solomon」は、1作目「アメリカン・ギニーピッグ~血と臓物の花束~」のステファン・バイロ監督が再びメガホンを取っています。前作はオリジナルの「ギニーピッグ」シリーズへのオマージュでしたが、本作はジャンルとしては”エクソシスト”ものです。
父親(ステファン・バイロ)の自殺という衝撃的な光景を目の前にした娘のメリー(ジェシカ・キャメロン)は、悪魔に取り憑かれてしまいます。どうやら、メリーは父親の社会的な立場を傷つけるようなことを言いふらしていたようなのです。父親は自分で喉を切り裂くだけでなく、その切り口から指を突っ込んで舌を引っ張り出すという・・・ちょっとアリエナイ自殺方法であります。
その後、PTSDではない奇妙な症状がメリーに現れたため、メリーの母親スーザン(モリーン・ペラマッティ)がファミリーカウンセラーのリチャードソン医師(スコット・アラン・ワーナー)に相談したところ、カウンセリングでは手に負える事態ではないと、悪魔払い(エクソシスト)を奨められるのです。そこで、カソリック教会長(アンディ・ウィトソン)により、メリーの元に神父が送り込まれることになります。
母親のスーザンとホームドクターとなったジョンソン医師(ジョッシュ・タウンゼン)が自宅の一階で待機する中・・・、コービン神父(ジーン・パルビッキ)、ブレーク神父(ジム・ヴァン・ベーバー)により、メリーにエクソシストの儀式が行なわれるのですが、メリーに取り憑いた悪魔の力に敗北して(エクソシストに失敗した神父は魂を失うらしい)、舌を引き抜いたり指で目玉を引き抜くなどの自傷行為で、血みどろの肉体破壊をしていくことになるのです。
ここから「アメリカン・ギニーピッグ:ソング・オブ・ソロモン」のネタバレを含みます。
実は、カソリック教会長は、アンチクライスト(反キリスト)が世界を支配した7年後にアンチクライストとすべての悪を滅ぼすためにキリストが地上再臨することを求めて・・・アンチクライストの誕生を目論んでいたのです。そのためには”ソロモンの歌”(愛の歌)の”本当の意味”がキーとなるらしいのです。
続いて派遣されたローレンス神父(スコット・ギャビー)の目の前で、メリーは自分の内蔵を一度吐き出して、再びそれらを口から食べて戻してみせます。ローレンス神父は自ら腕を切り裂き、そこから滴る生き血で洗礼を試みるものの失敗・・・メリーは部屋に入ってきた看護婦を素手で殺し、ローレンス神父の息の根も止めてしまうのです。
最後に派遣されてきたのは、童貞のパウウェル神父(デヴィット・E・マックマホン)・・・正体をあらわにした悪魔のメリーと二人きりで向き合います。パウウェル神父の純潔な祈りは、メリーの腕や足を歪ませて骨が破壊してしまうほどです。身動きが取れなくなったメリーの上に覆いかぶさって、パウウェル神父はメリーを強姦します。行為が終わると、メリーのお腹はみるみる大きくなるのです。そのお腹から素手で引っ張り出したのは、アンチクライストとして誕生した赤ん坊であります。
赤ん坊を抱えたパウウェル神父を待ち構えていたのは、誰あろうカソリック教会長です。自らの行為の意味を理解したパウウェル神父は、その場で十字架を目に突き刺して自害・・・キリストの再臨のためのアンチクライストは、こうしてカソリック教会長の手に渡ったのであります!
「エクソシスト」ものの二番煎じかと思っていたらビックリ・・・聖書の終末思想的予言(?)にスポットを当てるという”クリスチャン”だったからこそできる”反クリスチャン”=サタニスト的な世界観だったのであります。
本作のため、バチカンでエクソシストの儀式についてリサーチをしたそうなのですが、ステファン・バイロ氏が本物の神父と勘違いされて、門外不出の資料もみることができたそうで、本作で描かれているエクソシストの儀式はバイロ氏によると・・・「かなり本物に近い」ということです。(ホントかよ?)
本作のため、バチカンでエクソシストの儀式についてリサーチをしたそうなのですが、ステファン・バイロ氏が本物の神父と勘違いされて、門外不出の資料もみることができたそうで、本作で描かれているエクソシストの儀式はバイロ氏によると・・・「かなり本物に近い」ということです。(ホントかよ?)
本作で残念なのは・・・悪魔に取り憑かれる娘のメリーが全然少女っぽくないこと。やたら顔のドアップが多いので開いた毛穴が目立つし、妙にムチムチした体型にネグリジェ姿なので”オバちゃん”にしか見えないのです。演じている女優さんはプロフィールで年齢未公開なので実年齢は分かりませんが、2008年頃から女優として活躍しているので若く見積もっても20代後半ぐらいでしょうか?インタビュー映像では普通にキレイな女優さんなのですが、悪魔に取り憑かれていくにつれて”汚い大人の女”にしか見えないのであります。
もうひとつ残念なところは、一部のキャストの明らかな演技力不足・・・特に重要な役柄であるはずのカソリック教会長と母親スーザンは、台詞を言わされている感が強くて、本作の緊迫感を伝えきれていません。
「アメリカン・ギニーピッグ」シリーズの第3作目として位置づけされている作品ではあるのですが、広報的に「アメリカン・ギニーピッグ」は前面には出されていません。これは「ギニーピッグ」というタイトルだと、販売したがらない小売店が存在するという事情があるらしいのですが・・・本末転倒な話です。ただ「ギニーピッグ」らしいさは炸裂しており、シリーズの中で高く評価されるべき一作だと思います。
「アメリカン・ギニーピッグ」シリーズ第4作目に位置づけられる「アメリカン・ギニーピッグ:サクリファイス(原題)/American Guinea Pig: Sacrifice」は、これまで3作品と全く違う事情のある作品かもしれません。
本作は女優、モデル、キックボクサー、ボディペインとアーティストとしても活躍する(?)ポイズン・ルージュ(Poison Rouge)の初監督作品を、ステファン・バイロ氏が気に入り「アメリカン・ギニーピッグ」シリーズとしたというのです。制作に関わっていない映像作品を、あとからシリーズに加えるのもありならば・・・今後「アメリカン・ギニーピッグ」シリーズの作品も増えるかもしれません。
本作は女優、モデル、キックボクサー、ボディペインとアーティストとしても活躍する(?)ポイズン・ルージュ(Poison Rouge)の初監督作品を、ステファン・バイロ氏が気に入り「アメリカン・ギニーピッグ」シリーズとしたというのです。制作に関わっていない映像作品を、あとからシリーズに加えるのもありならば・・・今後「アメリカン・ギニーピッグ」シリーズの作品も増えるかもしれません。
本作の出演者は基本的に一人で、台詞は殆どなく(僅かなモノローグだけ)・・・ひとりの男性(全編ほぼ半裸)が、ひたすらに自傷行為する様子を淡々と映し出しているのですが、撮影されれているのは殆ど浴室内のみで、超クロースアップを多用して撮られています。
オリジナル「ギニーピッグ」シリーズの第3作目「ギニーピッグ3 戦慄”死なない男」のパロディのようでもありますが、ドラマ仕立てでもコメディ調ではなく、オリジナルの第1作目の「ギニーピッグ 悪魔の実験」や、穴留玉狂監督の「私の赤い腸(はな)」のように、イメージを積み重ねているのです。
オリジナル「ギニーピッグ」シリーズの第3作目「ギニーピッグ3 戦慄”死なない男」のパロディのようでもありますが、ドラマ仕立てでもコメディ調ではなく、オリジナルの第1作目の「ギニーピッグ 悪魔の実験」や、穴留玉狂監督の「私の赤い腸(はな)」のように、イメージを積み重ねているのです。
両親との精神的なトラウマを抱えるダニエル(ロベルト・スコーザ)は父親の死後、生まれ育った実家にひとりで戻ってきます。そして、バスルームを閉め切り、ある文献に従って自傷行為の儀式を始めるのです。
まず、ナイフで手のひらを裂き、その傷口の愛撫するかのように舐めます。そして、額の正面にナイフで8文字のシンボルを切り込み、マイナスドライバーでその中心を突き刺すのです。ドライバーの先端が頭蓋骨を姦通して脳にも達しているようで、朦朧としながら恍惚感に震えるのです。自傷行為というのは、ある意味、自慰行為であるわけで・・・切り口が女性器、凶器は男性器を比喩しているのかもしれません。
まず、ナイフで手のひらを裂き、その傷口の愛撫するかのように舐めます。そして、額の正面にナイフで8文字のシンボルを切り込み、マイナスドライバーでその中心を突き刺すのです。ドライバーの先端が頭蓋骨を姦通して脳にも達しているようで、朦朧としながら恍惚感に震えるのです。自傷行為というのは、ある意味、自慰行為であるわけで・・・切り口が女性器、凶器は男性器を比喩しているのかもしれません。
ここから「アメリカン・ギニーピッグ:サクリファイス」のネタバレを含みます。
浴室で行なわれる自傷儀式と並行して、フラッシュバックのように挿入されるイメージ・・・ダニエルのトラウマの原因であろう両親の喧嘩をする様子だったり、女性器の中のような洞窟のビーチに全裸で佇むダニエルであったり、ダニエルが崇拝する女神イシュタルの姿であったりするのですが、具体的な説明はありません。
浴室で全身血まみれになりながらも、足の指のツメを剥いだり、電動ドリルで額に穴を開けたり、尿道にドライバーを突っ込んだり(個人的にはコレだけは正視できなかった!)と、止血を繰り返しながら行なわれる拷問のような自傷行為はエスカレートしていき、男性器の切除=去勢まで行き着くのは必然なのかもしれません・・・。
最後に、浴槽に横たわり腹を切り裂き、自らの手で腸や内臓をつまみ出すことにより、ダニエルは遂に息を引き取ります。彼の脳裏には女神イシュタルへ変容した自分の姿が現れますが・・・彼の亡骸は浴槽に放置されて、ウジがわくほど腐敗していくだけなのです。
イシュタル信仰と生け贄として自らを捧げた男の物語として解釈することはできますが・・・根底には、目を覆いたくなるような自傷行為を具現化して(ある意味、性的な?)作り手の嗜好を満足させているという点で、本作は「アメリカン・ギニーピッグ」の冠をかざすに相応しい作品ではあります。
第1作目の「アメリカン・ギニーピッグ~血と臓物の花束~」は、オリジナルの焼き直しで拍子抜けしたのですが・・・2作、3作、4作シリーズ化として連作されるごとに、オリジナルシリーズへオマージュを捧げながら、より残虐嗜好の闇を掘り下げていくようです。オリジナルと同様に、トラウマ映画シリーズとして語り継がれていくようになるのかもしれません。
第1作目の「アメリカン・ギニーピッグ~血と臓物の花束~」は、オリジナルの焼き直しで拍子抜けしたのですが・・・2作、3作、4作シリーズ化として連作されるごとに、オリジナルシリーズへオマージュを捧げながら、より残虐嗜好の闇を掘り下げていくようです。オリジナルと同様に、トラウマ映画シリーズとして語り継がれていくようになるのかもしれません。
「アメリカン・ギニーピッグ:ソング・オブ・ソロモン(原題)」
原題/American Guinea Pig: Song of Solomon
2017年/アメリカ
監督 : ステファン・バイロ
出演 : ジェシカ・キャメロン、スコット・ガビー、デヴィット・E・マックマホン、ジーン・パルビッチ、モリーン・ペラマッティ
日本未公開
「アメリカン・ギニーピッグ:サクリファイス(原題)」
原題/American Guinea Pig: Sacrifice
2017年/イタリア
監督 : ポイズン・ルージュ
出演 : ロベルト・スコーザ、フローラ・ギアナタシオ
日本未公開
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