2011/10/04

韓国映画史上最高傑作と言われるキム・ギヨン監督の代表作・・・梅図かずお的なドロドロの”恐怖映画”の驚愕のエンディング!~オリジナル版「下女」とリメイク版「ハウスメイド」~


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ブルジョワの家庭に務めるハウスメイドが家の主人の手篭めにされて、その末に復讐するという・・・いかにもボクの大好物そうな韓国映画「ハウスメイド」が、キム・ギヨン監督の「下女」という1960年に制作された韓国映画のリメイクだと知って、どうしてもオリジナルを先に観たくなってしまいました。オリジナルとリメイクのある作品だと「オリジナルの方が断然良い!」ってことが殆どだったりしますから・・・。

ところが、韓国映像資料院の100選で第1位と韓国映画史上の最高傑作(韓国映画の「市民ケーン」!?)にも関わらず「下女」は、日本ではDVD未発売どころか、正式な劇場公開(映画祭のみ)もされていない作品だったのです。しかし2年ほど前、マーティン・スコセッシが代表を務めるワールド・シネマ・ファンデーションによって、現存するフィルムをデジタル復元したバージョンが、日本語字幕付きで韓国国内でDVDリリースされていたことを知りました。そして、オンラインの韓流ショップで購入して、視聴することができたのです。

アメリカやヨーロッパの映画はサイレント時代から20世紀の有名な作品まで、ひととおり観てきたけれど・・アジア圏の映画については、あまり知らないボクは、キム・ギヨン監督という名前さえ知りませんでした。「下女」を観て、キム・ギヨン監督の作品をもっと観たいと思ったのですが・・・現在観ることのできる作品は、かなり限られているようなのです。2008年には、日本語字幕付きの「高麗葬」「蟲女」「肉体の約束」「異魚島(イオド)」の4作品を納めたDVDボックスが韓国で発売されていたのですが、すでに絶版・・・現在入手はほぼ不可能になっているのが非常に悔やまれます。

以下「下女」と「ハウスメイド」のエンディングまでのネタバレを含みます。

50年前に製作されたキム・ギヨン監督の「下女」ですが・・・噂に勝るトンデモナイ怪作でありました!まず、家政婦(下女)が家の主人と関係を持って一家が破滅していく・・・という、下世話な内容の映画が「韓国映画史上最高傑作」に選んでしまう韓国のセンスにシンパシーを感じてしまいます。日本映画史上の最高傑作と言われると・・・黒澤明の「七人の侍」とか「生きる」、または溝口健二の「雨月物語」や、小津安二郎の「東京物語」あたりを上げて、海外向けに格好つけてしまいます。増村保造とか、石井輝男とか、今村昌平とかのエグイ作品を「我が国の最高傑作!」として挙げる日本人って、あまりいませんから・・・。

「下女」は雨の夜、一家の団欒風景から始まります。夫は「住み込みの家政婦と浮気したという男」の新聞記事を妻に読み聞かせるのですが・・・妻は「家政婦なんかに惹かれるなんて」と相手にしません。夫は。いつでも傍にいて家事をこなしてくれる家政婦がウチにも必要だと言うのですが、妻は「神聖な家庭で変なこと言わないで」と睨み返します。そして、あやとりをする娘と息子を背景にオープニングタイトルが流れます。

紡績工場に勤める女工たちの就業の合唱部で講師をしている夫トンシク(キム・ジンギュ)は、ブルジョワ一家の大黒柱で妻思いの優しい夫であります。新居のために夜な夜なミシンを踏んで内職に励む貞淑な妻(チュ・ジュンニョ)と足の不自由な娘エスン(イ・ユリ)と息子チャンスン(アン・ソンギ)と暮らしています。トンシクに好意をよせる女工ギョンヒ(オム・エンナン)が仲間の女工ソニョンに身代わりでラブレターを書かせるのですが、儒教的で潔癖なトンシクは風紀が乱れていると舎監に告げ口してしまい、ソニョンは数日間の停職処分となってしまいます。それをとして、ソニョンは仕事やめて帰省してしまうのです。

ギョンヒは新居を構えたために金が必要だというトンシクの家で、ピアノの個人レッスンを受けるようになります。妊娠をしている上に内職で体調を崩してしまっている妻のために、ギョンヒに家政婦を紹介してくれないかと頼みます。そうして、元女工のミョンジャ(イ・ウンシム)が、トンシクの新居で住み込みで働くようになるのです。ミョンジャは、タバコをスパスパ吸うような当時にしてはあばずれ女・・・鼠を素手で殺したりするので、子供たちを含めて家族は気を許していない様子であります。

トンシクの妻が里帰りをしている間に、ソニョンが自殺していたニュースが伝わります。葬式の帰りに、ギョンヒはトンシクに片思いをしていたのは、ソニョンではなく実は自分であったことを告白します。しかし、潔癖なトンシクはギョンヒを思い強く突っぱねます。自暴自棄になったギョンヒは、服をひきちぎり胸元をはだけて「強姦されたと訴える!」と脅して立ち去っていきます。一部始終を見ていたミョンジャは、ギョンヒと同じように自分にもピアノのレッスンをしてくれと迫りつつ、服を脱いでトンシクを誘惑・・・ソニョンの自殺のショックもあって、トンシクはミョンジャと肉体関係を持ってしまうのです。

数ヶ月後、妻が実家から戻ってくるのですが・・・その頃、ミョンジャが妊娠していることが判明して、トンシクは家庭内で追い詰められていきます。トンシクが妻にミョンジャが自分の子を孕んでいることを告白すると、何よりも世間体を重んじる妻はミョンジャに直接掛け合い、堕胎することを巧みに誘導します。ミョンジュは言われた通りに階段の上から身を投げるのです。その結果、中絶手術が行われて、ミョンジャはお腹の子を失います。術後、ミョンジャのわがまま放題に振り回されながらも、臨月の妻は世話を続けます。

妻が男の子を出産した後も、ミョンジャは相変わらず家に居座り続けます。「何故、自分の子だけ堕ろさなければならなかったの?」と、二人をなじるミョンジャ・・密かに復讐を試みるのです。息子チャンスンに毒を飲ませたと噓をつくのですが、パニックに陥ったチャンスンは、誤って階段から落ちて死んでしまいます。警察にミョンジャを突き出そうとするトンシクに、妻は物事を大きくして仕事を失ってしまっては家族が生きていけなくなってしまうと諭します。これ以後、家政婦のミョンジャの言いなりになってしまい・・・トンシクはミョンジャの二階の寝室でベットを共にしなければならなくなるのです。

妻と家政婦の立場は逆転して、妻がミョンジャと夫のトンシクが過ごす部屋に食事を運ぶような生活になっています。妻はミョンジャに毒入りスープを飲ませようとするのですが、ミョンジャは前もって毒を水飴に入れ替えていて、妻の作戦は失敗に終わってしまいます。弱みをさらに握ったミョンジャは、ますます大きな態度になり、妻と娘の生活までも支配してしまうようになるのです。

そんな状態の中、久しぶりにギョンヒがトンシクのところへピアノのレッスンにやってくるのですが、親しげにするギョンヒに嫉妬したミョンジャは、包丁でギョンヒの肩を突き刺したりします。血を流しながら逃げ出すギョンヒが、警察に行くのはもはや時間の問題・・・ミョンジャとトンシクは破滅的になり、服毒心中をして、すべてを終わらせようとします。毒が効いてきたところで、トンシクは「命はおまえにくれたが、魂まではやらない。最期は妻のそばで迎えたい」と、息も絶え絶えで階下の妻の部屋を目指すします。

「そうはさせるものか」とトンシクの足にすがるミョンジャ・・・逆さまのまま、頭を階段にゴンゴンぶつけながら落ちていき、すがるように手を伸ばしながら絶命します。まるで梅図かずおマンガのワンシーンのような地獄絵図というか・・・爆笑(ボクだけ?)してしまう「下女」の最高のシーンであります!(動画参照)


トンシクは必死に這いずりながら、内職をする妻の近くで息を引き取ります。「新しい家なんて建てなければ良かった」とつぶやきながら、涙を拭う妻のアップ・・・で、映画が終わると思いきや、この後、驚愕のエピローグが待っています。

ここで場面は、冒頭と同じような雨の夜に変わるのです・・・妻が「教養と人格を備えた男がお手伝いさんに惹かれるなんて理解出来ない」と夫のトンシクに呆れたように言っています。どうやら、映画の中で繰り広げられたドロドロの事件は、実際に起こった事ではなかったようなのです。トンシクは「高い山があれば、男は上りたくなるようなもんさ」と、笑って受け流し、お手伝いさんとして雇われているミョンジャが部屋に入ってきます。「家に若いお手伝いさんを入れるのは猫に鰹節みたいね」と言いながらミョンジャと共に妻は部屋から出て行きます。

すると、いきなりトンシクがカメラに向かって「皆さん!」と語り始めるのです。「男は歳を取れば取るほど、若い女のことを考える時間が増えます。騙されて身を滅ぼすことだってあるんです」と・・・そして「あなただって、そうなるかもしれませんよ」と観客を向かってウィンク(!)までして、映画は終わるのであります。

監督のキム・ギヨンは家政婦との淫行の結果に身を滅ぼす男というメロドラマにありがちな設定が、よほど好きらしく・・・その後も「火女」(1971年)「火女82」(1982年)と二度に渡って、自ら監督してリメイクをしています。リメイクするたびにエロさや、グロさは増していったそうで・・・「炎の女82」に至っては、スプラッター的描写まであるということであります。キム・ギヨン監督の男を滅ぼす女の物語は「女」シリーズとして、他にも「虫女」「殺人蝶を追う女」「水女」があるというのですから、とにかく「恐ろしい女」にこだわって映画を作り続けた人と言えるかもしれません・・・。

「下女」で、被害者となるのは、儒教的世界では尊敬されるべき夫(男)であり、それに従う貞操な妻(女)・・・神聖なる家庭を破滅する家政婦は完全なる「悪女」であり、そんな「悪女」への制裁に容赦がないのは、理にかなった顛末であります。1980年頃までの韓国の映画館では、悪役の日本人が出てくると罵声を浴びせるのが普通のことだったそうで・・・民族的な思想だけでなく、儒教的な倫理観と観客の感情を一致させることが映画的な共感を生んだ時代には、現在では違和感を感じてしまうほどの男尊女卑とも思える登場人物の行動や判断こそ、正しき思想として支持されるものであったのかもしれません。

しかし・・・「蛇足」とも思えるオチにより「下女」の再現ドラマのような低俗さが際立ち、保守的な思想さえも薄っぺらくみせてしまっているような気がします。それが、キム・ギヨン監督の意図しているところであったのかは、分かりませんが・・・。


「下女」のリメイクとして”4度目となるのが、2010年に製作されたイム・サンス監督の「ハウスメイド」であります。しかし、リメイクといっても家政婦がブルジョワ一家の主人に手篭めにされるという設定を下敷きにしているだけ・・・映画の主題は、階級社会で報われない悲しい女の物語へと大きく変わっています。

孤独なウニ(チョン・ドヨン)は、ある日大豪邸のメイドとして雇われることになります。屋敷には、主人のフン(イ・ジョンジェ)、双児を妊娠中の美しい若妻ヘラ(ソウ)と6歳の娘ナミ(アン・ソヒョン)が暮らしており、ベテランメイドのビョンシク(ユン・ヨジョン)が取り仕切っています。屋敷は恐ろしく豪華でまるで美術館のよう・・・生活感も現実感もありません。制服として支給されたのは、ブラウスにタイトなミニスカートという秘書っぽいスタイル・・・ハッキリ言って、掃除、洗濯、料理などのメイドの仕事に適してるとは思えない制服であります。

ウニは、それほど主体性もなく頭も良さそうでない無垢な女です。「下女」のミョンジャのような悪女ではありません。娘ナミの世話をしたり、若妻ヘラに仕えることにも不満な表情さえ見せず、淡々と従っています。妊娠中で腹ぼての妻とのセックスに不自由を感じた主人のフンが、ある晩ウニの寝室に忍び込んできます。ちょっかいを出すと、いとも簡単にナミの方から積極的に求めてしまうのです。不幸な女は男のカラダにも飢えていて自ら快楽を求めていく・・・ということなのでしょうか?そこには主人を寝取ろうというような野望が垣間見えるわけでもなく、ただ単に欲しがってしまう不幸でエロい女の姿しかありません。

「ハウスメイド」ではメイドのウニ妻のヘラの女の戦いというよりも、ベテランメイドのビョンシクとヘラの母親ミヒ(パク・ジヨン)の「ふたりの女」の恐ろしさが際立っています。ウニの妊娠をウニ本人より先に察知し、ヘラの母親ミヒに告げ口するビョンシク・・・この屋敷の中で、彼女の知らないことはないのであります。まさに「家政婦は見た」であります。ミヒは自らの手を汚してでも、娘の妻の座を守ろうと画策します。ミヒは大広間のシャンデリアを掃除中のウニを、事故をよそおって突き飛ばして、大理石の床にたたき落としてしまいます。ただ・・・お腹の子供は無事で、結果的にはウニ自身が妊娠の事実を知るところとなってしまうのです。

大金をちらつかせて堕胎を迫るヘラとミヒの母娘に反して、ウニは子供を産むという苦渋のを決心します。しかし、ミヒはすでにウニに堕胎をうながす怪しいハーブを体に良いと奨めて飲ませていたのです。ヘラが双児の出産のために入院中に、ウニは浴槽の中で血を流しながらお腹の子供を失ってしまいます。遂には、暇を出されて屋敷を追われてしまうウニは、気がふれて・・・一家へ対しての復讐をするため、再び屋敷へ戻ってくるのです。それまで表向きは従順な態度をとってきたビョンシクも、遂に堪忍袋の緒が切れたのか、メイドを辞めて屋敷を去ることを決めます。当初は主体性の感じられなかったウニですが・・・窮地に陥れば陥るほどしぶとくなっていくウニの態度は、不快感さえ感じさせます。そして、ウニが決断したことは、大広間のシャンデリアで首を吊って焼身自殺という、あまりにも自虐的な復讐だったのです。なんとも救いのない絶望的な最期であります。

エンディングは、何事もなかったようにナミの7歳の誕生日を祝う一家の姿を映し出します。主人のフン、再び痩せて美しくなった妻のヘラ、新たに雇われた中年のメイドと双児の面倒をみる若いメイド2人・・・そして、すべてを見据えたような無表情の娘のナミ。貧しい者は最後まで救われずに自業自得で身を滅ぼしていき、富める者はどれほど悪事に身を染めようともノウノウと平穏に生きているという教訓にもならない、気持ちの悪い現実があります。ただ・・・4人の女たち(メイドのウニ、妻のヘラ、ベテランメイドのビョンシク、妻の母親のミヒ)の中心にいる主人のフンは、女たちが命がけで争っていても「どこ吹く風」なのであります。

結局、階級社会での女の立場なんて「男次第」・・・見て見ぬ振りをしている男こそ、最もズルくて恐ろしい存在なのかもしれません。



「下女」
原題/하녀
1960年/韓国
製作・脚本・監督: キム・ギヨン
出演      : キム・ジンギュ、チュ・ジュンニョ、イ・ウンシム、オム・エンナン、アン・ソンギ、イ・ユリ

2008年第21回東京国際映画祭にて上映


「ハウスメイド」
原題/하녀
2010年/韓国
監督・脚本 : イム・サンス
出演    : チョン・ドヨン、イ・ジョンジェ、ソウ、ユン・ヨジョン、パク・ジヨン、アン・ソヒョン

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2 件のコメント:

  1. ミョンジャなのかミンジュなのか、ごっちゃになってて非常に読みにくく、途中でやめて他のあらすじまとめたサイトに移行しました。
    素人のブログなので読みにくい文章だけならしかたないけど、せめて登場人物の名前くらいはちゃんと統一してほしいな。

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    1. 登場人物の誤字にクレームするなら、あらすじサイトを見ればいいことだと思います。
      ネットでもあまり詳しく書かれていることがない作品なので、参考になりました。ユーモアが感じられ、読ませていただいて楽しかったです。

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