2011/10/10

日系三世のゲイ映画監督”グレッグ・アラキ”のセックス&ドラッグ満載のホラーコメディ・・・”ペドロ・アルモドバル”的極彩色と”デヴィット・リンチ”風の摩訶不思議世界の終末思想~「KABOOM/カブーン!」~


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アメリカのインディーズ映画で活躍しているグレッグ・アラキは、オープンリー”ゲイ”の”日系三世”ということもあって、ボクが常に注目してきた監督のひとりであります。

日本では、初期の「途方に暮れる三人の夜」(1987)や「リビング・エンド」(1992)から、”ティーンエイジ黙示録”「トータリー・ファックト・アップ」(1993)「ドゥーム・ジェネレーション」(1995)「ノーウェア」(1997)などが、主にレズビアン&ゲイ映画祭で上映されています。グレッグ・アラキは、いわゆる”ゲイ・フィルム”(ポルノではない)とジャンル分けされる作品を撮ってきた監督でありまして・・・ニューヨークやサンフランシスコのゲイカルチャー(マッチョ、髭、レザーなど)とは違う”ポスト・エイズ時代”のティーンエイジャーのゲイカルチャーを描くことで知られています。

”ゲイ・フィルム”というジャンルから脱却して「スレンダー/恋する3ピース」(1999)という作品で、グレッグ.アラキはメジャー映画会社からの監督デビューを果たします。男2人対女1人の三角関係の恋愛を描いた”ストレートのロマンティックコメディ”でしたが、2人の男を同時に愛して、どちらの子供だか分からない子を産んで、金持ちの男との結婚を断ってまで、2人の男性との同居を選択するヒロインの不可解さと、男性2人の理解しがたい強い絆の友情に共感の感じられませんでした。「ミステリアス・スキン/謎めいた肌」(2004)は、少年への性的虐待をテーマにした衝撃的な作品でした。虐待を受けた少年のひとりは、記憶を喪失してエイリアンに連れ去られるという幻覚を持ち続けているという設定や、妄想と現実が混じり合う不可思議さは、デヴィット・リンチのスタイルを感じさたものです。「スマイリー・フェイス」(2007)は、間違って麻薬入りのカップケーキを食べてしまった女性のトンデモナイある1日を描いたグレッグ・アラキにとっては、初めての脚本には関わらない”監督”のみの作品。ウエストコーストらしいポップ色彩と、とぼけたコメディ路線を示していました。

最新作「KABOOM/カブーン!」(2010)は、久しぶりのオリジナルストーリーによるグレッグ.アラキの集大成といえる作品と言えるでしょう。「ガブーン!というのは日本語でいうと「ドッカーン!」というような疑似音で、まさに本作のエンディングを示唆する象徴的なタイトルになっています。

18歳のゲイのスミス(トーマス・デッカー)は、大学の寮に暮らし始めてから、毎晩不思議な夢をみるようになります。謎の赤毛の女(ニコル・ラリベルテ)を、動物の仮面をかぶった男達に襲われるのを救ってから、次々とスミスの周辺では妄想か現実か分からないことが起こり始めるのです。高校時代から仲の良い女友達ステラ(ヘイリー・ベネット)、サーファーボーイでストレートのルームメイトのソア(クリス・ジルカ)、ゲイとのエッチが好きな女ロンドン(ジュノ・テンプル)、ステラをストーカーするサイキックパワーを持つレズビアンのローレライ(ロキサーヌ・メスキダ)、ロンドンのセクフレになるバイセクシャルのレックス(アンディ・フィッシャー=プライス)、30歳過ぎても寮に暮らすヒッピーのメシア(ジェームス・デュバル)、ビーチでスミスをナンパしてきたゲイの黒人のハンター(ジェイソン・オリーブ)、フェイスブックを通じて知り合ったゲイのオリバー(ブレナン・メヒア)らが、入り乱れて・・・ペドロ・アルモドバルを彷彿させる極彩色の映像と、デヴィット・リンチの「ツイン・ピークス」の世界のような不可解なことが、次から次に不規則に起こっていきます。アメリカの大学生ってキャンパスや寮でセックスとドラッグまみれなの・・・と思うほど、登場人物達はやりまくっていますが、これはある意味リアルなのかもしれません。

ここから、ネタバレを含みます。

スミスの19歳の誕生日を機に、スミスの母親ニコル(ケリー・リンチ)が動物の仮面をかぶった男達に誘拐されたりして・・・スミスの身に大きな変化が訪れていることが分かってきます。実は、死んだと思っていたスミスの父親が、”終末思想”を唱えるカルト集団のリーダーで、核兵器によって地球が終焉した後にスミスは選ばれた息子として、新世界のリーダーして君臨するというのです。そして、スミスの周辺にいたのは・・・カルト集団のメンバーと、カルト集団の地球破壊の計画を阻止しようとする元カルト集団のメンバーであったのです。最後は、スミスの父親によって核兵器発射のボタンを押されてしまい・・・地球は”こっぱみじん”。まさに「ドッカーン!」となって、何もかも終わってしまうのであります。

”ティーンエイジ黙示録”のような将来の行き先の見えないダークさはなくなり・・・「全部ぶっ飛ばされておしまいさ」的な終末思想は、カラフルでポップな映像美と、とぼけたコメディセンスと相まって、何とも”あっけらかん”としています。自分の欲望や興味の探究心は豊かなのに、自己責任の意識には欠けている”今の若者”らしい暴走っぷりの後には、本当に何も残らないのね・・・って、納得するしかないエンディングでありました。

「日系三世」というバックグラウンドだからといって・・・「第二次世界大戦中の日系人強制キャンプ」「広島/長崎への原爆投下」をテーマにした映画を制作すべきだとかは思いませんが、グレッグ・アラキの一連の作品からは「日系人」というアイデンティティーを一切感じさせません。あくまでも「平均的アメリカ人」=「アメリカ白人」の視線からという印象さえは受けてしまいます。これは「ゲイ」という強いアイデンティティーをすでに打ち出しているので、あえて人種的なアイデンティティーは排除しているとも考えられるのですが・・・グレッグ.アラキの作品を観るたびに、どうしてもボクは違和感を感じてしまうのです。

「カブーン!」
原題/KABOOM
2010年/アメリカ、フランス
監督 : グレッグ・アラキ
脚本 : グレッグ・アラキ
出演 : トーマス・デッカー、ヘイリー・ベネット、クリス・ジルカ、ロキサーヌ・メスキダ、ジュノ・テンプル、アンディ・フィッシャー=プライス、ニコル・ラリベルテ、ジェイソン・オリーブ、ジェームス・デュバル、ブレナン・メヒア、ケリー・リンチ

2011年10月10日「第20回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」にてプレミア上映

日本劇場公開未定



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