アメリカの高校生のデート・ムービーと言えば・・・”スラッシャー・ムービー”っていうのは、結構「定番」だったりするわけですが、あまりにも設定が病的だったり、残酷描写の度が過ぎてしまうと、デートの後「げっそり・・・」なんて事にもなりかねません。オーストラリア産の「ラブド・ワン/The Loved Ones」は、高校生のデートにもピッタリ(?)と思える健全な正統派コメディ・スラッシャー・ムービーでありました!
ブラント(ハヴィエル・サミュエル)はイマドキのイケメンの高校生・・・父親とドライブしていたら血まみれの男がいきなり道に現れて、父親は事故で亡くなくしていまいます。それからは家族は落ち込み気味で、彼の母親(スージー・ダクハーティー)は、げっそりやつれて化け物みたいになっちゃうし、ブラントはガールフレンドのホーリー(ビクトリア・タイン)と、陰気なカーセックスなんかしてます。
そんな時、高校卒業のプロム・パーティーが近づいてきます。プロムって、オーストラリアの高校生にとっても、一大イベントのようであります。ブラントのオタクの男友達(リチャード・ウィルソン)は、黒魔術でもやってそうなゴシック系の美少女ミア(ジェシカ・マクナミー)にアタックしてプロムデートをゲット!意外なことに、同級生の垢抜けないローラ(ロビン・マクリーヴィ)も、いきなりブラントをプロムデートに誘ってきます。ブラントは恋人のハニーと行くつもりなので、ローラはあっさりと断られて玉砕・・・普通の女の子であれば落ち込んだり、ストーカー女にでもなるのでしょうが、そんな生易しいもんではありません。実は、ローラと彼女の父親(ジョン・プランプトン)は、支配欲が強くて拷問好きという”キ○ガイ親子”であったのです!
プロムナイトの前に、父親は娘のためにブラントを拉致します。目覚めるとブラントは、タキシードを着させられて椅子に拘束されていて、強制的にプロムディナー(?)に参加させられることになってしまいます。そこには魂の抜けたような中年女も座らされており、どうやら、この女は父親が拉致してきた母親代わのようです。女王さまのように振る舞うローラに逆らうものなら、痛~い拷問のお仕置きが待っていることは言うまでもありません。指をしゃぶれと命令されてやらなければ、首にぶっとい注射を打たれてしまうし、隙をみて逃げて再び掴まってしまうと、足を床に大きな釘で打ち付けられてしまいます。遂には、頭に電気ドリルで穴をあけて、熱湯を注ぐというロボトミーのような手術(?)を施されそうになったります。
残酷な描写には思わず目をつぶってしまうという人でも安心・・・本作は、残酷なグラフィック描写の決定的な瞬間を、カメラは巧みに避けてくれるのですから。ナイフが肌をざっくりと切り裂く様子や、足に打ち付けられる釘が入ってところや、電気ドリルでおでこに穴をあける瞬間を見たい・・・という輩には、腰くだけではあるでしょうが、デート・ムービーとしてはまったくもって正しい選択であります。
また、ブラントが拉致されているのと同時進行で”箸休め”のように挿入されるのが、オタクの友達とゴシック美少女ミアのプロムデートの様子。実はミアはエロい女の子で、ドギマギしているオタク君を翻弄しっぱなしなのです。パーティーに向かう車の中では「しゃぶってあげようか?」なんてケロッとして言うし、本来ならロマンティックなプロムダンスではオタク君の股間をまさぐりまくる・・・結局、プロム会場を後にしてカーセックスに励むことになるのです。この2人の伏線が、どこかで本筋と繋がるのかと思っていたら・・・何も関係ないっていうところが良いのです。
「キャリー」と「悪魔のいけにえ」を足して2で割ったような話で、格別新しいわけではないけど・・・とにかく展開がスピーディーなので、最後まで一気に見せてくれます。
ここからネタバレを含みます。
ローラと父親がイケメンを拉致して拷問するのは、ブラントが初めてではなかったのです。家の地下には、ロボトミー手術を施されて生きる獣のようになって、人肉を食らう男たちが飼われていたのです!ローラの父親を地下に突き落として殺すことに成功するものの、ブラント自身もローラによって地下に落とされてしまいます。父親をこ殺されて気がたかぶってきたローラは、ブラントの母親とガールフレンドのホーリーを殺すために、家から出て行きます。
ブラントは地下にいる化け物(実はローラの犠牲者なわけだけど)たちを殺して、車によって遂に脱出に成功するのです。ブラントを探しまわてちるハニーを路上で見つけたローラはナイフで襲いかかります。何とか逃げ惑うホーリーの後ろからブラントの運転する車が、物凄いスピードでやってきます、。あやうくところでホーリーを轢きそうになった車は、ローラに激突。しかし、血だらけになりながらも、ナイフもって這いつくばってローラは2人を追ってきます。ブラントは”ゆっくり”と車を進めて・・・ローラを轢き殺すのです!
それにしても、ローラは何故、The Loved Ones=愛する者たちを拘束して、拷問するのでしょうか?
それは・・・少女のエゴイスティックな自己愛の末に、誰かを愛そうとするから。すべてが自分の思い通りにならなければ、自分が壊れてしまいそうだから。今の自分のままで、誰かに本当に愛してもらえるなんて、全然信じられないから。
だから、ローラは愛する者たちの感情も人間性も奪って、彼らを地下で飼っていたのかもしれない。スティーブン・キングの”キャリー”は、少なくとも同情できるキャラクターであったけど、”ローラ”は、自己中心的で、わがまま・・・好きになれる要素なんて全然ないはずなんだけど、ボクは何故かローラに少女の本質を感じてしまう。
ある意味、すべての少女は”ローラ”な要素をもっているものなのですから・・・。
「ラブド・ワンズ」
原題/The Loved Ones
2009年/オーストラリア
監督 : ショーン・バーン
脚本 : ショーン・バーン
出演 : ハヴィエル・サミュエル、ロビン・マクリーヴィ、ジョン・プランプトン、ビクトリア・タイン、スージー・ダクハーティー、ジェシカ・マクナミー、リチャード・ウィルソン
2012年6月9日より「シアターN渋谷」にてレイトショー公開
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