2010/12/31

趣味嗜好で選びました・・・2010年日本で劇場公開された映画の「ベスト3」と「ワースト3」

偉そうに「今年のベスト映画」なんて掲げられるほど、映画を観ているわけではありません。
ただ、今年前半に公開された映画はすでにDVD化されていたりするので、DVDを購入したり、レンタルして自分が観たいと思った映画はそこそこ観ていたりします。
あくまでも、ボクが観たいという意志をもって見ている映画”だけ”から選ぶことになるので、作品の傾向に偏りはあるかと思いますが、あくまでも無責任に、個人的な思いと嗜好の「ベスト10」と「ワースト3」というのをピックアップしてみました。

まず「ベスト3」ですが・・・嗜好的にも、内容的にも、自分にとって特別な映画であったかということが決め手になりました。
ベスト3にまで絞り込んだ映画は、今後も機会があれば繰り返し何度でも観てるだろうし、そのたびに細かな映画的なディテールを楽しんだり、観るたびに新鮮な発見があるほどのお気に入りと言って良いでしょう。

ベスト1「 シングルマン」

アメリカ盤のブルーレイで何度も観ているにも関わらず、わざわざ友人を連れ立って映画館へ観に行くほど、思い入れのあった映画です。
「めのおかしブログ」「けいたいおかし」を両方のブログに取り上げるほど、ボクの思い入れはハンパないのであります。
トム・フォードの初監督作品でありながら、研ぎすまされたスタイリッシュな映像、練り上げられた本と演出、そしてコリン・ファースの見事な演技・・・すべてに於いてボクにとって完璧でした。
また、去年(2009年)に50歳で亡くなった親友と主人公が重なるところがあって・・観るたびに胸を締め付けられるのです。
初めて観たのは北米ブルーレイ版を自宅で観たときだったのですが・・・ラストシーンで号泣を抑えることが出来ませんでした。
今年日本公開に限らず、おそらく永遠にボクにとっては「ベスト映画」としてリストに残るような映画です。
今年公開ということでは、ゲイを扱った映画として、他に「ブルーノ」「フィリップ、きみを愛してる!」の、ふたつの作品も記憶に残っていますが・・・どちらもゲイの扱い方が少々「猿回しの猿」的な扱いで、笑いの取り方も決して肯定的なゲイのイメージではなかったので、100%受け入れることが難しかったような気がします。

ベスト2息もできない」


ポスターの男優(ヤク・イクチュン)の顔が好みだったから、思わず観に行ってしまった映画だったのですが・・・そういうヨコシマな理由を払拭してしまうほど、この映画のパワーには圧倒されました。
「めのおかし」でも劇場で観た時に取り上げたので、そちらの記事もごらんください。
この作品がベスト2になったのは、多かれ少なかれ事前の情報がなかったことが無関係ではありません・・・過剰な宣伝による情報というのは、時には期待ばかり膨らまされがちになります。
主人公を演じたヤク・イクチュンが脚本、監督をした非常に彼の思い入れの強い作品である事も、映画館で待ち時間にロビーの案内を読んで知ったくらいだったので、実際に観たときのインパクトを特別に強く感じたのかもしれません。
これほど「暴力」が痛く感じる映画もありませんでした。
具体的に表現される「暴力」だけでなく、暴力を振るわずにいられない主人公の内面の痛さも尋常でないほど感じさせられるのですから・・・。
この映画以外に「暴力」が印象的だった今年の映画には、北野武監督の「アウトレイジ」井筒和幸監督の「ヒーローショー」がありましたが・・・「息もできない」ほどは、暴力をふるわずにはいられないという必然性を共感することはできませんでした。

ベスト3(500)日のサマー」


「運命の人」と出会ったと感じた男の子と、そんなこと全く思っていない女の子の”出会い”と”別れ”を、時間軸をシャッフルして見せるという、娯楽映画としては斬新な手法の恋愛モノでした。
恋する心境風景をアニメーションを交えて具現化するという演出自体というのは、それほど新しくはないのだけれど、全体的な映画のトーンとマッチしてと思います。
男の視点でみれば・・・主人公の恋するサマー(これは女の子の名前で、ラストのオチの伏線でもある)という女は、男心を弄んだビッチ(BITCHというのは、英語で女性を指す最低な女という意味)としか言いようがないわけでありますが、サマーのような態度をとる女の子なんて実際には腐るほどいるわけで・・・誰もが主人公のような体験をしているという共感を感じさせてしまうのです。
(それはゲイであっても、似たように弄ばれたような経験はあるもの!)
確かに映画に出てくるサマーは、すごい美人ではありません。
ただ、アメリカ人の女で「男好きするタイプ」っていうのは、スーパーモデルみたいなキレイな女ではなくて「オールアメリカンタイプ」の庶民的で笑顔が二カーっとした女だったりして・・・ある意味、めっちゃリアルなキャスティングとも言えるのであります。
どんなに年齢を重ねても、若い時に恋愛で傷ついた”痛み”というのは忘れられないものです・・・そんな切ない感情を生々しく思い出させてくれる「(500)日のサマー」は、何度でも観たくなる映画なのです。

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さて「ベスト」を選ぶよりも難しいのは「ワースト」でありました。
ボクは映画を観ることを職業としているわけでもないし、すべての映画は何らかの料金(映画館の入場料か、レンタル料金)を自分で支払って観ているわけですから、最初から興味のない映画を観るってことは「まず、ない」わけです。
何らかの理由で「観てみたい!」と思ったということは・・・「ワースト」のリストにも入らない観る気もしなかった映画の方が、ボクにとっては本当のワースト映画なのかもしれません。
奇しくも、すべてが邦画という結果になったのは、あまり期待出来ない作品と分かりつつも、宣伝とかで興味を引かれてしまったということはあるのかもしれません。

ワースト1矢島美容室 THE MOVIE~夢のつかまネバダ~」


フジテレビのバラエティ番組「とんねるずのみなさまのおかげでした」から生まれた、とんねるずとDJ OZUMAの冗談なようなユニット「矢島美容室」・・・石橋貴明が12歳の少女キャラというのは鼻っから無理な設定で、所詮はテレビでの”おふざけ”という範疇で受け入れられるギャグでした。
その上・・・石橋隆貴って昔「とんねるずのみなさまのおかげです」で”保毛尾田保毛男”なんてキャラをやっていたけど、どこかホモフォビア的な臭いがしてゲ受けはまったくしません。
木梨憲武とDJ OZUMAにしても、よく見ればコントレベルの女装なわけで・・・そんな女装3人をコントの設定のままで映画化というのは、はっきり言ってキツいでしょう。
IKKOが女装キャラで出てきた時・・・テレビ的にはこのレベルが限界じゃないかと思っていたけど、今やマツコ・デラックスやミッツ・マングローブが堂々と女装キャラで世の中に受け入れられるようになったのも「矢島美容室」が、またまたハードル下げたってこともあるのかもしれないなんて思うほどです。
この映画が最低なのは、別に女装が酷いからだけでなくて、日本映画とテレビとのタイアップという悪しき習慣のなかから生まれた「最低な映画」だということ・・・企画に対する姿勢はもとより、薄っぺらい脚本、ふざけた演技、テレビのギャグレベルの演出、どこをどう取っても良いところが見つかりません。

ワースト2SPACE BATTLESHIP ヤマト」



制作者側の世界に挑んでしまう野望を考慮したら・・・ワースト1ではありますが「矢島美容室」のクソ映画っぷりに負けて、ワースト2ということになりました。
この映画についても、先日たっぷりと「めのおかし」で書いたので、そちらを参照して頂くとして・・・大ヒットとしているという宣伝文句は「真実か?」って話です。
毎日のようにキムタクが番宣のためにテレビ出演をしていましたが、ハッキリ言って以前ほどキムタクの出演というのは、視聴者にとって「ありがたい」ものではなくなってきていることに気付いて欲しいと思ってしまいます。
番組的には「あの、キムタクがスタジオに!」と相変わらず盛り上げているわけですが・・・。
これは映画自体の問題よりも、今「宇宙戦艦ヤマト」を実写で映画化するにあたって、制作側はキムタクというスター(?)が必要だと判断したということを、受け入れるか、受け入れないか、ということなのかもしれません。
来年(2010年)には「あしたのジョー」「GANTZ」の実写版公開があったりするので、これからもアニメやマンガからの実写で映画化というトレンドは、まだまだ続きそうです。

ワースト3「食堂かたつむり」


小川糸原作の、なんとも妙に後味の悪い話(ペットにしていた豚を殺して食ってしまうのだから!)を、どんな風に映画にしたのだろうか・・・という興味を持ってレンタルして観てしまった映画です。
原作からの致命的な問題ではあるんだけど・・・いかにも「今ウケ」するような、田舎暮らし、料理の癒し、まわりの不思議な人々というような陳腐な要素を散りばめて、とにかく描いている人物や世界観というのが、ヒジョーに「浅い」。
もしかすると「バベットの晩餐会」みたいな映画に化けるのかも・・・なんてあり得ない期待を一瞬でも膨らましてしまった自分が嫌になるぐらいでした。
それに、登場する料理も食材的に微妙だったり、別に珍しくも、こだわりのある料理でもなんでもなくて「そんなに、美味しいのか!」とツッコミたくなるし、登場人物たちも無理矢理「おかしな人々」で、それほど良い人たちのようにも思えない・・・演じている役者たちが気の毒に思うぐらいなのであります。
こんな「不思議ちゃん」や「不思議な人」だらけの田舎の村なんて、気持ち悪いです。
今どきの「女子」向けというのが制作者の意図だとしたら・・・今どきの「女子」も随分と舐められたもんだというしかありません。

今年の映画を振り返ってみて、今話題になっている映画を観るということって、会話やブログのネタにはなるけれど・・・絶対に観たい、観なくてはならない、観た方が良い映画というのは、過去にもたくさんあるということを改めて思いました。
2010年11月に開始した「おかしのみみ」というブログでは、昔の映画をひとつピックアップして、その映画にまつわるボクの”思い”などを気ままに書き綴っています。
ボクなりに思い入れのある映画については、殆どをDVDやビデオなどで持っているのですが・・・ボクが生きている間に、それらの全てを観ることは、もう不可能です。
若い頃は、何でも観てやろうという精神で、あらゆるジャンルの映画を観てきました。
ただ、これから観る一本一本の映画というのは、自分の残された時間を費やすだけの意味があるだろうか・・・と、つい考えてしまうのであります。



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