2010/12/10

ハードボイルドな男のリピドー・・・”爆笑”北方ワールド全開でズッコケまくり!~「抱影」北方謙三著~


最近、小説とか全然読んでないなぁ・・・と反省して、で、北方謙三というのも、”アレ”でありますが、ちょっと前に読むつもりで購入していた「抱影(ほうえい)」を手に取ってみました。

ハードボイルド系というのは、小説だけでなく、映画とかでも、どちらかと言えば「苦手」・・・独特の”こだわり感”を理解出来ないということもありますが「格好付けてんじゃねぇ~よ」と鼻で笑ってしまうところもあったりするのです。

男の立場でも、女の立場でも、まったく世界観的に共感できないというのは、ボクが男性側にも、女性側にも、自己投影できないかもしれませんが・・・。

「何故、北方謙三?」ということですが・・・以前読んだ人生相談の「試みの地平線~伝説復活編~」という本が、あまりにも面白かったので、ぜひ、一度くらいは北方ワールドというのも味わってみたいなんて思ったのでした。

(過去のめのおかし参照)


北方謙三氏による久しぶりの書き下ろしハードボイルド小説となる本作「抱影」ですが・・・すべてのステレオタイプを裏切らない、爆笑の「北方ワールド」全開でありました!

真剣(?)にハードボイルドの世界に浸れる方からすれば「爆笑」なんて言ったら怒られてしまいそうですが・・・決してバカにしているわけではありません。

ある種の「空想小説」として、ハードボイルド的価値観を感じるところがあって、自分の生きてきた現実の世界とは似ているけど、倫理感や人生の美学の異なる「パラレル世界」のような印象さえ受けるのです。


52歳の主人公の「硲(はざま)」は芸術家・・・凄い(!?)デッサン力を持つ抽象画家(???)で、ニューヨークやヨーロッパでも高い評価を受けているという設定で、彼の絵に魅了される人は後を絶たないようであります。

こういう無茶な設定に、小説というのは便利なものでありまして・・・抽象画、故に、具体的に何が描かれているかを説明する必要もなく、魅了されたという説明で納得するしかないのですから・・・。

また、画家志望の加奈という女の絵をみて硲のいう台詞というのが、なかなかスゴイ!


「おまえは処女か?」

「絵が、服を脱ぐのを恥ずかしがっている」

「捨ててこい。おまえの歳のバージンなんて」


硲は、加奈が処女であることを絵から見抜き・・・その後、勿論、加奈やってしまうわけですが、いきなり自分のモノをくわえさせたりして「おいおい、何やってんだよっ、おっさん!ってな感じです。

腐れ縁のようなバーのママのたき子は自分勝手な都合でやりまくりなくせに、若い頃に硲の絵のモデルをした既婚者の響子とはプラトニックな関係を貫く・・・という、身勝手な純愛も楽しむのであります。

絵画で行き詰まった硲が、わずかな修行で刺青の彫師になってしまうという「天才」ぶりを発揮するのは当たり前・・・すぐさまにマスターピースを響子の体に彫るという突拍子のない展開となります。

そして、作品として完成した響子の刺青の身体をみて、硲が思わず夥しい量の精液を発射してしまうくだりは、まるでSFの世界・・・何が起こったのか、さっぱり分かりません。


水商売の世界に母親に売られた少女を救ったために、硲を慕うヤクザの男は片腕を失ってしまうという、とんでもなく劇的なことが起こるのですが・・・それは「ケジメをつけた」で片付けられちゃうのも、なんとも凄い!

・・・素人の世界じゃ考えられません!!!

大騒ぎの挙げ句に、金で解決する・・・というわりに金額は100万円とか、結構しょぼいのがズッコケます。

結局・・・そのトラブルが元で、硲は(まさに!)消える羽目になるのですが、なんとも唐突であっさりとした幕引きでもありました。

その潔さは、確かに「男らしい?」のかもしれませんが・・・。


「北方ワールド」全開の台詞が散りばめられていて、それらの言葉に心を鷲掴みされれば恍惚のハードボイルドなリピドーの世界が待っています。

どうしても著者を連想させてしまう主人公の硲・・・何故か、ボクの脳裏には、この小説を書きながら股間をギンギンしている北方謙三氏の姿が浮かんでしまいます。

ナルシシズムによって成り立つ小説世界という観点では「ハードボイルド」「ハーレクインロマン」は妄想の対局にあるのかもしれません。

あいにく、ボク、どちらかというと「ハーレクインロマン」のメロドラマのリピドーの方に強く反応してしまうので・・・「抱影」のような男性至上主義的なハードボイルドには、1970年代の東映アクションのような「キッチュな笑い」を見出してしまう皮肉屋になってしまうのです。


ただ「ハードボイル」の世界観や美学に対して、ホモセーシャル的に自我を投影して、精神的に勃起してしまう男どもを想像すると・・・それはそれで「純正の男」という希少な存在だと思うのであります。



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