2年前ほどに場所をコロンバスサークル(59丁目付近)に移して、リニューアルオープンした「museum of arts and design」は、ニューヨークの美術館のなかでも、ボクのお気に入りとなっています。
メトロポリタン美術館は勿論・・・現代美術館にしても、グッゲンハイム美術館にしても、ウィットニー美術館にしても、やはりそれなりの気合いと時間は必要なのですが、この美術館は各フロアの面積がそれほど広くなく、一時間程度で観れるのです。
今回訪れた際には、3フロアで別々のテーマでしたが、ボクが最も興味がを持ったのは「Dead or Alive」というタイトルの展示でした。
「Dead or Alive」と聞いて・・・ボクの世代で、まず思い出されるのは「You Spin Me Round」のヒット曲で1980年代風靡したユーロディスコのビジュアル系バンドの「Dead or Alive」でしょう。
また、Team NINJAプロデュースの、巨乳が揺れることで人気のある、格闘ゲームの「Dead or Alive」も思い出してしまうかもしれません。
ま、西部のお尋ね者とかに対して「Dead or Alive/死体でも生け捕りでも」賞金が与える・・・というような場合に使われた英語の”言い回し”であるわけですが。
さて、展示会の「Dead or Alive」は、バンドともゲームとも勿論(!)無関係で・・・自然界からの死骸や死体など(かつては生きていたモノ)を素材にして製作されたアート作品を集めているところに”かけて”名付けられたタイトルなのです。
ホラー映画「悪魔のいけにえ」の人肉食い一家の屋敷のような猟奇的な世界を想像してしまいそうですが、一部の骨を使った作品を除いて、有機的で幾何学的な美しさ・・・そして「死」よりも「生」そのものを感じさせるポジティブなエネルギーを感じさせていました。
「博物館」の原点となったのは、世界中から珍しい(エキゾチックな)生き物の剥製(死骸)などを集めた「Wunderkabinetten/cabinets of curiosities(不思議なモノを集めたキャビネット)」に由来するわけですから・・・ある意味、死骸や死体を集めて展示するというのは”展覧会”として「理にかなっている」とも言えなくはないわけであります。
鳥の羽、動物の骨や毛や角、昆虫の標本、植物や種や苔、死骸やその一部の剥製など、素材もさまざま、またアーティストが表現しようとしている世界観や方向性もさまざま・・・その中でボクが一番心に惹かれたのが、Jorge Mayet(ホゼ・メイヤット)というキューバ出身のアーティストによる”木とその木の根”を素材にした作品でした。
「CAYENDO SUAVE(柔らかくなる)」という作品は枯れ木の根っこに鳥の羽がくっつけられていて、まるで天と地が逆さまになったような感じなのです。
生命(いのち)としての木の寿命は終わり、枝だけになって枯れているように見えても、根っこはまるで天に昇るがごとく羽が生えている・・・まるで「死」と「生」の境がなく共存しているような「風景」(壁に浮いている彫刻だけど、まるでひとつの風景のように感じさせます)に、ボクは何故か心が救われるような気持ちになりました。
(翌日、友人の墓参りを予定していたので、さらに感傷的になっていたのかもしれません)
考えてみれば・・・我々が身につけている自然素材というのは、生き物からの「施し」と言えるモノです。
服の素材にしても、羊であったり、綿の花であったり、蚕の繭であったり、牛の皮であったり・・・と。
「Dead or Alive」は、そんな根源的な原点を、改めて考えさせてくれた展覧会でした。
Dead or Alive
museum of arts and design
2 Columbus Circle (59th Street)
2010年10月24日まで
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