2010/07/14

この映画を観てはいけません・・・・障害者が連続殺人鬼を演じる見世物的ホラー映画~「おそいひと」~



悪趣味な映画大好き不道徳な映画も好き!残酷な映画は大好物!
キワモノ映画、トラウマ映画について、今までブログにも散々書いてきたことからも分かるように、普通の人が目をそらしたくなるような不快な映画に対しても、ボクは免疫があると思っていました。
しかし「おそいひと」は、キツい映画でした・・・ハッキリ言って二度と観たくありません。
障害者が主演している映画というのは、何かで読んで存在だけは知っていたのですが、積極的に観ようという気持ちになれないところがありました。
それは、障害者がリアルな存在になることよって、自分の興味本位な浅はかさとか、意識していなかった差別的な感情とか、向き合いたくない自分の内面と向き合うことになるからかもしれません。

「おそいひと」は2000年ごろに撮影されたものの、映画として完成して上映されたのは2004年の映画祭でした。
衝撃的な内容から国内ですぐに一般上映をされることもなく、海外の映画祭の凱旋後の2007年になって劇場公開されたのです
そして・・・それから数年、2010年になってDVD化となったのでした。
まるで不運の封印映画のように扱われてきた映画でわけですが、その理由は・・・重度の脳性麻痺患者が連続殺人鬼を演じているという内容だからでしょう。
また、実際に脳性麻痺の障害者で主演された「住田雅清」さんが(彼自身を演じているわけではありませんが)本名をそのまま役名にして演じているというのも、どこか不謹慎さを感じさせるのかもしれません。
しかし、一般的な劇映画のように健常者が障害者へ演じていれば問題ないかというと・・・それは、もっともっと差別的な表現になってしまうかもしれません。

(ここからは先は映画のネタバレを含みます)
映画の主人公である「住田」は重度の脳性麻痺の障害者ですが、バンドをやっている青年「タケ」(坊主でヒゲの硬派なイケメン!)や、他の介護者達のサポートを受けながら暮らしています。
ところが大学の卒論のために介護を体験したいという女子大生「敦子」の出現によって「住田」は、健常者へ嫉妬心を覚え始めるのです。
「普通に生まれたかった?」
と無神経に尋ねる「敦子」に対して「住田」「コロスゾ」とトーキングエイド(キーボードを打つことで機会音で音声を発する)で冗談まじりに答えます。
同じ障害者仲間の「福永」の忠告にも耳を傾けずに「住田」は徐々に混沌とした感情に取り憑かれて健常者への復讐を始めるのです。
まずは、最も献身的に、そして友人のように介護サポートしてくれる「タケ」に薬を飲ませ風呂に沈めて殺します・・・その後「住田」は健常者たちをナイフで刺して殺していきます。
「車椅子で移動する障害者が殺人という行為が出来るのか?」とか・・・「殺害後に血の跡から足がつかないのか?」など、設定としては不可解なところはあります。
インダストリアルノイズ系の音楽、フラッシュのコマ送りのような編集、そして脳性麻痺でゆがんだ障害者の肉体の不気味さをさらに強調するようなカットは、いたずらに不快感を高めていきます。
デビット・リンチ監督の「イレーザーヘッド」のような・・・観てはいけないヤバい映像感覚です。
連続殺人の狂気に身を委ねてからの「住田」は、単なる不気味なフリークスにしか見えません・・・「住田」が何故、健常者を殺し続けるのかという心理描写は、ほとんどないのですから。
殺人をして帰宅する「住田」を迎えたのは、彼の誕生日をサプライズで祝おうとする介護者たちでした。
驚愕の表情で血だらけの「住田」を見つめる介護者たち・・・警官たちに手錠をかけられて「住田」は連行されて映画は終わります。

もしも、介護者の心の裏にある偽善を暴いて、「住田」が妄想のなかで介護者たちを殺していくという映画であったなら、ボクの印象はまったく違ったでしょう。

どんなに介護者へ殺意を感じたとしても、実際には彼らのサポートに頼ってしか生きていけないという障害者の呪縛のフラストレーションを描くのであれば、もっと恐ろしい映画になったかもしれません。

この「おそいひと」という映画は、障害者が健常者を襲って殺す・・・というショッキングな設定を映像化したという見世物にしかなっていないので、単に不快感を生み出しているだけに過ぎなのです。
主演した「住田雅清」さんのインタビューによると、柴田監督の将来の大成ためにノーギャラで(時に肉体的にも精神的にも厳しい)撮影に参加されたということでした。
撮影中、監督からはシーンごとに台詞や演出指示を受けていたので、全体のストーリーというのは撮影時には、まったく知らなかったそうで・・・映画完成後に障害者が殺人鬼となって健常者を殺していく「だけ」の映画と分かって、彼自身も大変ショックを受けたそうです。
「住田雅清」さんのチャレンジ精神と善意を利用して悪趣味な見世物にした・・・という疑惑がボクには拭いきれません。
人道的に間違った手法で作られた映画に思えるのです。

だから・・・この映画を観てはいけません。


「おそいひと」
2004年/日本
監督/編集 : 柴田剛
出演 : 住田雅清、とりいまり、堀田直蔵、白井順子、福永年久、有田アリコ
音楽 : world's end girlfriend




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