2009/09/14

ユーミンと失われた時を求めて~松任谷由実”TRANSIT”コンサートツアー~


葉山マリーナでのコンサート(1978年)に行って以来だから・・・ユーミンのコンサートは約30年ぶりということになります。
プール券付き前売り券3000円というリゾートの余興的なノリだったのですが、初めてマリーナで行われたということもあって、いろんな意味でがっかりなコンサートでした。
プールサイドで水着姿でしゃがんで見るというカジュアルな小一時間程度のミニコンサートで、特に音響システムがひどく「ユーミンの生歌」と「アルバムの音」の差を感じたものでした。
これがトラウマになって「二度とユーミンコンサートには行くものか」と思ってしまったのでした。

ハイファイセット経由でユーミンを知った僕は、ベストアルバムの「YUMING BRAND」から逆行して荒井由美時代の楽曲を聞き、松任谷由実としてのオリジナルアルバムは「紅雀」から「時のないホテル」までは発売日に購入していました。
レコードがすり切れるほど繰り返し聴きながら、よく一緒に熱唱していたものです。
何故か、ユーミンの第二次ブームとなる「SURF & SNOW」あたりから聴かなくなり、留学した1981年以降は、友人から送られてくるカセットテープに含まれているユーミンの曲をたまに聴くことがあるぐらいでした。
だから、バブル時代にOLのカリスマとして大ブームになっていたユーミンの活躍というのは、僕はよく知らないのです。
その後「シャングリア」などのスペクタクルコンサートなどで話題を集めるようになったユーミンですが、なんで小林幸子のようなことやっているんだろう・・・とクールに無関心でした。
今回のコンサートに行く準備として、最新アルバムを聴いたのですが、原点回帰しているような懐かしいユーミンの世界観を感じたので、良い意味で期待は広がっていました。

”TRANSIT"コンサートツアーは最新アルバムの「もう一度夢を見るだろう」からの新曲と過去のユーミンの楽曲から”旅”を連想される楽曲をミックスして編集されているのですが、過去の楽曲のほとんどが1980年頃までという、長年ユーミンから遠ざかっていた僕のような古いファンにはピッタリの選曲でありました。
貴婦人風衣装での弾き語りとヨーロッパっぽい駅の雰囲気で「ユーミンとの旅」がスタートします。
1970年代と最新アルバムからの楽曲が違和感なく繋がっていく編集はさすがでした。
スピリチャルやエスニックに寄り道した時期もあったのかもしれないけど、ユーミンは本来のユーミンの世界に帰ってきたみたいです。
ただ、若い時に書かれた楽曲は、おばちゃんの声帯には少々厳しい印象でした。
また、元々ダンサーでもないユーミンがノリノリで踊りまくるのですが、おばちゃんが足広げて飛び跳ねているような・・・残念な姿になっているのでした。
さらに、ピンクレディーのような銀のスパンコールのミニドレスは、まるで町内会のかくし芸をするおばちゃんのようで、思わず苦笑してしまいました。

しかし、ドタドタと舞台で歌い踊り続けるユーミンを見ているうちに、思わず「おばちゃん!頑張れ!」と心の中で叫ばずにはいられなってきたのです。
ずっと聴いていなかったにも関わらず全コーラスの歌詞を記憶している楽曲は、ユーミンを聴きいていた若い時の自分を甦らせたのです。
ユーミンと共にいなかった失われた時間が、あっという間に埋められた瞬間でした。
コンサートの終わり近く、ユーミンは「この旅の終点は過ぎ去った若き日々かもしれません」と言われて、我々はユーミンの巧みな策略にまんまとはめられたことを知るのですが、まんまとはめられたことを嬉しく思うのです。
ユーミンは、ちょっとおばちゃんになってしまっていますが、一生懸命歌い続ける姿が、「昔も」「今も」我々の目の前に存在していることだけに「ありがとう」という気持ちになってくるのです。
昔の演歌歌手を思わず拝んでしまう田舎のおばあちゃんの気持ちが少し分かったような気がしました。

僕は「荒井由美時代の第1ブーム」と「松任谷由実時代の第2ブーム」の”はざま”のファンで、大掛かりなスペクタクルショーも知りません。
だからこそ、葉山のコンサートを観て以来の30年間分を「おばちゃん!頑張ったぞ!」と、心の中でユーミンに向かって応援してしまうのかもしれません。
ユーミンに「頑張ったぞ!」と何度となく呟きながら、自分に対しても「頑張ったぞ!」と、言いたかったことに気付きました。
僕はずっと自分に対して「頑張ったぞ!」と、言うことはできませんでした。
30年という年月の間に褒めるほどの何かなんてしていないのかもしれないけど・・・やっぱり「頑張ったぞ!」と、自分に言ってあげたかったのです。

松任谷由実”TRANSIT”コンサートツアー追加公演
神奈川県民ホール
2009年9月12日 

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