2009/09/09

異星人が創造したようなコスチュームのような何か~Nick Cave~




いきなりの夕立ちを避ける為に立ち寄ったニューヨークのユニオンスクウェアにある本屋さんで、今年(2009年)の5月から7月にサンフランシスコのYerba Buena Center of the Artsにおいて開催された展覧会のために出版された「Nick Cave/Meet Me at The Center of The Earth(ニック・ケイブ/地球の中心で会いましょう)」というアート本を偶然に手にしたことが、アフリカ系アメリカ人のアーティストのニック・ケイブを知るきかっけでした。


ニック・ケイブの作品で最もインパクトのあるのが、着てパフォーマンスをして動くと音がするということで「サウンドスーツ/Soundsuits」と名付けられたコスチュームです。

アフリカの儀式に出てくるような頭部を高くディフォルメしたフォルムに、刺繍、ビーズ、編み込みニット、ロングファー、オブジェクトなどで過剰なほどの装飾を施しています。

展示会場でマネキンに着せられて並んだこれらのコスチュームの立ち姿は、異星人が創造したこの世のにはないお祭りの衣装のようなオリジナリティを強く感じさせます。


主に自然からインスピレーションを受けた図柄やアフリカ的なカラフルな色使いの装飾のひとつひとつが、手芸的なクラフトとして高いレベルにあるのは勿論ですが、コスチュームの表面すべてを覆うほどの密度とさまざまなモチーフの組み合わせは、圧倒的な手仕事量にも関わらず、その重々しさを感じさせません。

アフリカ系アメリカ人というバックグラウンドからその人種的なルーツを模索しているとか、人類という枠を超えた神的な宗教のメッセージを具現化しているのではとか、そのクラフト/ファッション的な要素から衣服に対する我々の持っているイメージなどの問題提起とか、勝手にいろいろと解釈することもできますが・・・そんな小難しいことを抜きにして、展示作品やパフォーマンスを目にした者は素直に楽しむことができます。

どの作品についても、引用されているモチーフの意味を理解しなければならないようなコンセプトの押しつけはなく、さまざまな材料との出会いや次々と新しい手芸テクニックを楽しみながら制作している姿勢や、ニック・ケイブ自身が人間的に持ち合わせたユーモラスな感性を感じさせるからかもしれません。


ニック・ケイブの作品をみて、1980年代のロンドンのクラブシーンで活躍したリー・バワリー(Leigh Bowery)というアレキサンダー・マックィーンなどのイギリスのアバンギャルドなファッションデザイナーに多大なる影響を与えた奇才のパフォーマーのことを思い出しました。

リー・バワリーのコスチュームは、クラブファッションや時代のムードと連動し、パンキッシュでダークなコンセプチュアルな独特の世界でした。当時はアートというよりも、見てはいけない見世物小屋のフリークスを覗くような、あくまでもキワモノのパフォーマンスという捉え方をされていたところもあったと記憶しています。

近年の80年代ブーム(?)によって再評価され、彼に関する本やDVDも発売されました。そんなリー・バワリー亡き後、造形的なコスチュームアーティスト/パフォーマーというアートのジャンルに登場したのが、僕にとっての「ニック・ケイブ」というアーティストのように思います。



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