新しい技術やメディアは”エロ”によって普及するような気がします。写真が発明されたばかりの黎明期から、ヌード写真は存在しました。ビデオデッキの普及も、ポルノ映画を自宅のテレビでこっそりと観れるという理由があったからとも言われています。デジカメだって、写真屋で現像することなしにヌードを撮影出来るという機能が、密かな普及に拍車をかけたのかもしれません。インターネットでエロ画像や動画をタダで観られるらしい・・・と聞いて、始めたという人がいたりします。3D映画が流行の今・・・3Dポルノ映画は作られるべきして作られたと言っていいでしょう。ただ、まさか香港で世界に先駆けて、劇場用の3Dポルノ映画が制作されるとは思いもしませんでした。
「3D SEX & 禅」は中国の古典官能小説の「肉蒲団」を映画化したもの・・・香港では、あの「アバター」の初日興行収入を超える収益を上げたというのだから「そんなに3Dのポルノ観たかったの?」と、香港人にツッコミたくなります。実は、検閲の厳しくて公開不可能だった中国本土から、本作の観賞バスツアーまで組まれたということなので・・・映画史上初(!)の3Dポルノ映画が、中国の古典の映画化ということに、中国人には大いに意味があったのかもしれません。ただ、主要な登場人物のうちの3人が日本人キャストというのは、日本人として誇りに思うべきなのか、恥ずべきことなのか・・・ビミョーなところです。
映画史上初の3Dポルノ映画を謳っていますが・・・実際の性交をみせる”ハードコア”ではありません。ひと昔前の日活ロマンポルノや東映ピンキー映画ような”ソフトコア”・・・不自然にカラダの接合は隠されていて、○ンポや○ンコが画面に映るわけではありません。3Dシーンは殆どがアクションシーンに使用されていているだけで、ベタ中のベタ。何かが画面に向かって飛び出してくるという昔ながらの”ギミック”でしかありません。それでも商業的に海外で成功したのは「映画史上初の3Dポルノ映画」という”一番乗り”を名乗ったからでしょう。
学者の未(葉山豪)は玉香(レニー・ラン)と両思いで結婚・・・四六時中、夫婦でやりまくっているのですが、未が極端な早漏で妻を満足させることが出来ません。人々の崇拝する女神の像を冒瀆したりと、悪行を尽くしている「絶世楼」の楼主の寧王(ティン・カイマン)の偵察のために訪れたところ・・・冬海(周防ゆきこ)や、指圧や鍼で男のスタミナを増幅させる性技を持つ瑞珠(原紗央莉)らのエッチ接待を受けて、未はすっかり使命を忘れてしまいます。美術品のアドバイザーとして滞在し続けて、妻の玉香とも別れるハメになってしまうまで、やりまくりの酒池肉林の日々を過ごすことになってしうのであります。寧王は腕ほどのある巨根の持ち主で絶倫の性豪・・・未も彼のように何人もの女性を満足させるような性技を身につけたいと思うようになるのです。
ある日、「絶世楼」を訪ねてきたのは、極楽老人(ボニー・ルイ)・・・若いエキスを吸引することで若さと美しさを保っている姿は美しい女性なのですが、実は、ロープのように長い○ンポの性技をもつニューハーフの性豪。その性技に魅せられた未は、弟子にしてくれと懇願するのです。ロープのように長い○ンポで馬車の車輪を持ち上げることの、どこが”性技”なのか?と疑問に思いますが・・・この物語の基本の定説は、男の幻想といえる「巨根崇拝」によって成り立っています。とにかく「デカいからスゴくいい!」ということが、すべての人々の羨望なのです。「絶世楼」に限らず・・・女性の登場人物はすべては、いつも男とやりたがっていて、ちょっと胸を触られるぐらいでも喘ぎ狂ってしまうほどの淫乱ばっかり。嫉妬とか独占欲とも無縁で、とにかく男への性のサービスをすることが嬉しくて仕方ないという・・・男にとって都合のいい女性ばかりしか本作には存在しないという徹底したお伽話です。
極楽老人が未に、性技を教えるにあたって、まずやらせたことが・・・○ンポの移植手術。なんだかんだいっても、結局「サイズ」なのです。医者と助手のうっかりの失敗により、馬の○ンポではなく、驢馬の○ンポの移植なったものの・・・未は腕ほどの巨根の持ち主となり、意気揚々と「絶世楼」に帰ってまいります。勿論、女性たちは未の新しい巨根に即メロメロ・・・一度に10人もの女性を満足させて、いい気分になってしまうのです。極楽老人が、未に性技を教える条件としたのは、皇帝の免罪符である丹書鉄券(タンショテッケン)を盗むこと・・・しかし、あっさり未は寧王に捕らえられてしまいます。
ここからネタバレ含みます。
実は、寧王は未への恨みがあり、密かに復讐を企んでいたのでした。ここから、グロテスクな拷問シーンと、皇帝軍と寧王の兵士との戦闘シーンとなっていくのですが・・・エグい描写の連続となります。玉香も寧王の囚われの身にされていて、奇妙な突起物のある木馬に座らされたり、散々、拷問を受けた上に、寧王にボロボロになるまで犯されまくります。最後には、二度と開かない”貞操帯”を装着されてしまうのです。未は、せっかく移植された驢馬の巨根を切り取られて瀕死の状態・・・ただ、そんな辛い状況だからこそ、未と玉香のふたりはお互いの真実の愛を確認し合うのです。手足やカラダが切られて飛ぶような激しい戦闘の末・・・寧王はあっさりと自業自得の事故で死んでしまい、めでたしめでたしとなります。
最後は、90歳代になっても仲睦まじくしている未と玉香が、若いカップルに「どうして、いつまでも愛し合えるのですか?」と尋ねられ・・・「真実の愛は、肉体的な愛ではなく、精神的な愛である」と説くのです。○ンポを切り取られた未と、貞操帯を装着させられた玉香は、その後、肉体的に結ばれることは二度となかったのですが・・・ふたりはセックスを超えた真実の愛を見つけたということのようです。テーマとしてはく、使い古されたベタな教訓を、エンディングで仰々しく掲げています。散々、男の幻想を押し付けたエログロを見せつけた後なので、教訓には全く説得力は感じられませんが・・・。
本作は香港映画ですが・・・インド映画になければいけないという9つの要素を思い起こさせました。「ラブロマンス」「コメディ」「お涙頂戴」「アクション」「スリル」「サスペンス」「敵役の存在」「復讐」「ハッピーエンド」という9つに加えて・・・「3D SEX&禅」は、「エロ」要素をたっぷりと足したような、とてつもなくベタで欲張りな一作。その上、無駄に3D映画・・・もう「お腹いっぱい、ごちそうさま!」としか言えません。
「3D SEX & 禅」
原題/3D肉蒲団之極楽宝鑑
2011年/香港
監督 :クリストファー・サン
出演 : 葉山豪、原紗央莉、周防ゆきこ、レニー・ラン、ボニー・ルイ、ティン・カイマン
2012年7月14日より日本劇場公開
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