2010/03/06

エンターテーメントとしてのファッションデザイン~「プロジェクト・ランウェイ/Project Runway」~


ファッションデザイナーの”存在意義”というのを考えさせられる最近のファッション業界でありますが・・・そんな思いに反するようにファッションデザインをエンターテイメント化してしまったアメリカの”リアリティー・ショー”があります。
MTVの「ザ・リアル・ワールド/The Real World」を元祖とする”リアリティー・ショー”は「アメリカンアイドル/American Idol」ようにオーディション形式で脱落していく手法と組み合わせて「恋人/結婚相手」「ファッションモデル」「料理人」「起業家」「ファッション雑誌の編集者」などのバトル形式の番組がたくさん製作されています。
2004年より「ブラボー/BRAVO」チャンネルで放映されているファッションデザイナーを発掘する「プロジェクト・ランウェイ/Project Runway」は、開始後ファッションスクールへの入学倍率が上がったり、番組関連商品(子供向けデザインキットやWiiのテレビゲームまで)なども展開されたりと、社会的にも大きな影響を与えている番組です。
シーズン6からは、アメリカでの放映チャンネルが「ライフタイム/ Lifetime」になり、ロケーションの場所もニューヨーク(Parson's School of Design)からロサンジェルス(Fashion Institute of Design & Merchandising)に移りました。
日本では、WOWWOWにてシーズン5を放映中ですが、アメリカではすでにシーズン7が放映中です。

番組内で、デザイナーたちに適切な助言をしてサポートする重要な役割を果たしているのが、元パーソンズ・デザイン大学校長のティム・ガン氏です。
僕自身、シーズン5まで使われている校舎に同大学の学生として通った経験があり、ティム・ガン氏は僕が入学した際には面接官をされていました。
僕が面接をした4月末には入学願書受付はとっくに終わっていたはずなのですが、あっさりと入学出来てしまったのは、思い返せばティム・ガン氏のおかげだったのでした。
また、シーズン2にはパーソンズ大学時代に親しかった同級生だったエメット・マッカーシー(Emmet McCathy)が、デザイナーの一人として番組に登場し、チャレンジ7まで勝ち残る活躍をしました。
そんなこともあって、僕にとって「プロジェクト・ランウェイ」は、遠く離れたアメリカで制作されている番組でありながら、個人的な接点も感じてしまう番組なのです。

デザイナーたちが臨む「チャレンジ」は、スーパーマーケットの商品、生花、新聞紙などを素材にドレスをつくるとか、あるセレブティや特定のブランドのラインのためにデザインするとか、都市、建物、美術などからインスピレーションを受けた服をつくるとか、ステージ衣装、ランジェリー/水着、イブニングまで広いジャンルを自ら手で制作する技術や知識を求められ、得意とする分野の服だけをデザインすれば良いというわけではありません。
チャレンジ内容を聞かされて、30分でスケッチして、だいたいのデザインを決めて、生地屋さんに行って、予算内に30分で必要な生地や材料を買え揃えなければならないというプレッシャーを強いられます。
さらに、丸一日、もしくは丸二日で、ドレープ、パターン作成、生地の裁断、モデルのフィッティング、服の裁縫と始末、モデルのスタイリングまで終わらせなければならなりません。
この番組で勝ち残っていくためには、このような「チャレンジ」を次から次へとこなし続けていかなければならないという非常に厳しい戦いとなるのです。

デザイナーたちは番組後半で、各エピソードのチャレンジをランウェイで披露して審査員に審査されるのですが、その審査結果には賛成できない場合というのも時々あります。
脱落すべきでないと思えるデザイナーが落ちてしまったり、上手に生き残ってしまう運のいいデザイナーがいたりします。
視聴者すべてが納得する審査というのは不可能です。
また、オーディション番組というあくまでもエンターテイメントとしては、審査員たちの辛辣なコメントやフレーズも楽しみの要素ではあります。
アメリカのファッション業界の評価基準としての「マーケットのニーズの把握」「オリジナリティの尊重」そして「顧客のTPO」とのバランスは絶妙なところがあり、その厳しさは「プロジェクト・ランウェイ」の審査からも垣間みることが出来ます。
近年ニューヨークデザイナーたちがヨーロッパの老舗ブランドのデザイナーとして起用されていることと、アメリカ的なファッションデザインの評価の仕方というのが無関係ではないように思えます。
大味なマスマーケットのファッションが主流のアメリカの市場ですが、ブランド志向でない個性的な顧客の存在というのもあり、日本とは別な観点での個性的なファッションは求め続けられているのです。

「プロジェクト・ランウェイ」では、最後の3人まで勝ち残ることが出来れば、ニューヨークファッションウィークの期間中にブライアントパークのテントで12ピースの自分のコレクションを発表をして、最終的にひとりの勝者(Winner)を決定します。
MTV的な躍動的なカメラワーク、ノリの良い音楽と街並のインサートショット、別撮りの個々のインタビューで明らかにされる心の内、脱落者が選ばれる瞬間のドラマティックな演出・・・シーズンの最終回まで視聴者は釘付けです。
この番組から誕生したアメリカファッション界のニュースターとなったデザイナーはいませんが、アメリカではドレスメーカーとして、個人の顧客のイブニングドレスや、映画や舞台のためのコスチューム製作など請け負うことで、アパレル業界以外でもファッションで食っていける土壌があります。
この番組に出演したデザイナーたちは現在さまざまな分野で活躍しているようです。
同級生のエメットは番組出演後、ニューヨークのリトルイタリーにブティックを開店し、通販番組などでも彼が手掛けた商品を販売しています。
あと10年、人生のタイミングがずれていたならデザイナーのひとりして出演してみたかった・・・などと考えながら「プロジェクト・ランウェイ」を毎シーズンを楽しみにしている僕なのです。


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