話題作ならアメリカ公開と同時、または1、2ヶ月で日本でも公開される時代に半年以上も待たされた・・・というのには、それなりには理由があるのかもしれません。
前作「ボラット~栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習~」では、カザフスタン人のテレビレポータ-になりきって、カザフスタン人だけでなく、悪魔扱いするユダヤ人(コーエン本人はユダヤ系のイギリス人のコメディアン)だったり、アメリカの文化を茶化しまくっていました。
突撃っぷりは「進め!電波少年」を思い起こさせるところがありますが、実在しない人物になりきって騙すというのは、段違いの悪質さではありますし、突撃する人たちへの態度も頭っからバカにした態度です。
これだけ様々な人々の神経を逆撫でしまくって、よく無事に撮影して生きて帰ってきたもんだ・・と感心するしかありませんでした。
今回のブルーノというキャラクターは、ゲイのオーストリア人の元ファッションレポーターという設定で、ミラノファッションウィークでファッションショーに乱入して職を失ってしまい、ハリウッドでセレブになろうと自作のテレビ番組のレポーターをする設定になっています。
(前作と設定は似ているような気もします・・・)
今回の標的は・・・「ファッションデザイナーとファッション界」「アフリカの子供との養子縁組をするセレブ」「アラブとイスラエルの確執」「アメリカの銃文化」「アメリカ兵士の訓練」「政治家のセックス・スキャンダル」「乱交パーティーの愛好者」「ゲイを矯正するキリスト教会」「ホモ嫌いのレスリングファン」などで、勿論キャラ設定である「ゲイ」も「オーストリア人」も笑いものの対象になっています。
架空のキャラとは知らずにレポートされた人たちが、ブルーノの小馬鹿にした態度や応答に、怒り狂うことさえも”笑い”にされてしまうわけで・・・標的にされた人たちは誠実に対応すればするほど墓穴を掘るような結果になるのです。
騙された人たちが、堂々と素顔で映画に出てくること自体が信じられない気がしますが、おそらく撮影前に「何に撮影された映像を使用されても構わない」と合意する書類にサインとかさせられているのでしょう。
ブルーノが揚げ足をとるトピックに対して、政治、常識、カルチャーに一石を投じている・・・と深読みする事も可能ですが、単なる悪趣味・・・アメリカのトークショーの下世話な内容以下のジョークも多くあります。
「ふざけるな!」と笑いものにされたことを怒るよりは、真っ先に笑った方が勝ち・・・という意地の悪い種類のジョークなのですが、すべての人を敵にまわして笑いものにしてしまうというチャレンジ精神には、崇高な政治的メッセージなんて「糞喰らえ!」という意志さえ感じます。
普通の日本人にとっては、差別やステレオタイプが希薄な世界をネタに茶化しているので、どこまで面白さが通じるかは疑問ではあります。
次回作ではぜひ、サシャ・バロン・コーエンに、ジャパニーズアニメ好きのキャラとかになって、日本をいじって欲しいなんて思います。
「ブルーノ」
原題/Bruno
2009年/アメリカ、イギリス
監督 : ラリー・チャールズ
脚本 : サシャ・バロン・コーエン、アンソニー・ハインズ、ダン・メイザー
出演 : サシャ・バロン・コーエン
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