2011/07/17

ホントに怖いという評判のジェームス・ワン最新作はファミリー・ホラー・・・トビー・フーパーの「ポルターガイスト」は超えられない!?~「インシディアス/INSIDIOUS」~



「ソウ」第1作の監督でシリーズの製作総指揮のジェームス・ワン監督「パラノーマル・アクティビティ」のオーレン・ペリ監督がタッグを組んで「本当に怖いもの」を追求して出来上がったという”フレコミ”の本作「インシディアス/INSIDIOUS」・・・ちょっと期待してアメリカ版ブレーレイで観賞。結論から言えば、かなり”肩くわし”を食らいました。アメリカでのレーティングが「PG-13」ではあったので、視覚的に残酷なシーンや暴力描写があるとは思ってはいませんでしたが、最初から最後まで驚かせるだけいう幼稚な手法に、ただ身体がビクっと反応するだけなのでした。

新しい家に引っ越して来た若夫婦と3人の子供達・・・何故か、タイトルの始まる前に不気味な悪霊を写してしまうというのは、冒頭から”ネタバラし”をしているような感じでありました。長男が屋根裏部屋で、はしごから落ちた翌日から原因不明の昏睡状態になってしまいます。その三ヶ月後、いるはずのない人影が見えたり、物音がしたりという奇妙な現象が起こり始めるのです。しかし、カメラは人物を追いかけるか、人物の視点という場合が多くて、一瞬チラっとしか見えない”脅かし”ばっかり・・・それも音楽や効果音を極力ないので、急に何か得体の知れない”何か”が現れてビックリ!という次第。「エクソシスト」以前のオーソドックスなB級恐怖映画に近い作りのショック映画なのです。

父親は怪奇現象の起こる自宅を避けるように残業ばかりしているという家族愛に欠けた野郎で・・・母親もただ怯えているだけ。昏睡状態の長男に対しても、誰もがお手上げ状態。ただ、怪奇現象に翻弄されるのを見せられるだけで、この家族に対して「どうにか助かって欲しい!」というような感情移入をすることは出来ません。母親があまりにも怯えているので、しぶしぶ父親が家の引っ越しを承諾するのですが・・・それでも怪奇現象は止まりません。そこで、母親の気が済むならという消極的な理由で、霊媒師にリーディングを依頼することになるのですが・・・怪奇現象の原因が分かっても父親は信じようとしません。

ここからネタバレ含みます。

霊媒師によると、長男は霊体離脱によって魂が体を離れて遠くに行ってしまっているようなのです。彼の肉体は単なる”魂の入れ物”として存在していて、この世に執着のある霊たちが、その入れ物の肉体を求めているので、多くの霊たちが集まって来ていると言うのであります。そして、長男の肉体に最も近づいているのが、スターウォーズシリーズのダースモールみたいな顔した”悪魔”であるという、恐ろしい事実を知ることとなるわけです。悪魔の見た目は非常におどろおどろしいのですが・・・イマイチ何をしようとしているのかが分からず、ただ家族らを驚かしているだけにしか見えません。実は、父親にも長男と同じように霊体離脱の才能があったことが暴露され、長男を救うために霊の世界へ入っていくことになるのです。

ラストのどんでん返しを含めて、観賞後はあまりスッキリとしません。一家を怪奇現象が襲う恐怖を描く「ファミリー・ホラー」でありながら、家族の絆も感じさせないという致命的な問題があるのです。

「インシディアス/INSIDIOUS」を観ていて思い出したのは・・・あの「悪魔のいけにえ」のトビー・フーパーがスティーヴン・スピルバーグに依頼されて監督したファミリーホラーの傑作「ポルターガイスト」でした。2作とも、ホラー映画史上に残る恐ろしいデビュー作で発表して世に出た監督で、ティーンでも観に行くことのできる「PG−13」(13歳未満の観賞には親の同意が必要だが年齢制限ではない)の作品であること、また比較的低予算で製作されているところが似ているように思います。また、怪奇現象の原因は違いますが・・・子供が別世界に連れ去られて、それを取り戻す両親の物語であるということは共通しています。

大きな違いは、困難を乗り越えようとする家族の絆を描いて「いる」か「いない」かに尽きるでしょう。「ポルターガイスト」では、父親も母親も、残った子供達も、さらわれた末娘を救うために、霊媒師や研究者と共にひとつとなって悪霊たちに戦いを挑んでいくのです。製作当時(1982年)の特殊効果が”ちゃちちい”ところもあるので、現在の映像と比較すれば幼稚なところはありますが・・・命がけで娘を助けようとする両親の姿に涙して感動さえ覚えてしまうのです。ホラー映画としての恐怖はファミリー向け(?)でマイルドであっても、特別な恐怖体験を乗り越えたという満足感を、家族と一緒に感じさせてくれる映画だったのでした。

「インシディアス/INSIDIOUS」は、繰り返しビックリさせられるだけの「パラノーマル・アクティビティ」のような映画で、それ以上でもなく、それ以下でもない・・・・この家族の体験する恐怖で、一体何を描こうとしていたのでしょうか?結局・・・頭も悪いし心もないお化け屋敷のような薄っぺらい映画体験しか出来なかったのでした。

「ポルターガイスト」
1982年/アメリカ
監督 : トビー・フーパー
製作 : スティーヴン・スピルバーグ、フランク.・マーシャル
脚本 : スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・グレイス、マーク・ヴィクター
出演 : クレイグ・T・ネルソン、ジョベス・ウィリアムス、ヘザー・オルーク、ビアトリス・ストレイト、ゼルダ・ルビンスタイン

「インシディアス」
原題/INSIDIOUS
2011年/アメリカ
監督 : ジェームス・ワン
製作 : オーレン・ペリ、スティーブン・シュナイダー、ジェイソン・プラム
脚本 : リー・ワイネル
出演 : パトリック・ウィルソン、ローズ・バーン、タイ・シンプキンス、リン・シャイヤ、リー・ワイネル、バーバラ・ハーシー、
2011年8月27日日本劇場公開



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1 件のコメント:

  1. 俺もポルターガイストっぽいなぁって思いましたw

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