2011/07/06

エスター・ウィリアムス姐さん主演の「アクア・ミュージカル映画」・・・”シンクロナイズド・スイミング”が、いまだに超えられない最高の夢の世界!



「エスター・ウィリアムス」「水着の女王」「アクア・ミュージカル」と聞いて、何のことか分かる人っているのでしょうか?ボクの世代(アラフィフ)であっても、リアルタイムで観ることはなく・・・1970年代には、すでに語られることもなくなってしまっていた映画であります。

ボクが子供ころ(今から約40年ほど前)母と一緒に「水着の女王」を観た記憶はあるのですが・・・映画館ではなかったので、おそらくテレビの洋画劇場で観ていたのだと思われます。当時すでに「懐かしの洋画」的なノリで紹介されていました。その後「エスター・ウィリアムス」も「アクア・ミュージカル映画」も、日本ではすっかり忘れられた存在にさえなっているような気がします。1984年のロスアンジェルス・オリンピックから、競技となった”シンクロナイズド・スイミング”ですが、それは「エスター・ウィリアムス」という女優の存在があってこそ世界的に広まったことを忘れてはいけないのです。

エスター・ウィリアムズ(Esther Williams)は元々競泳選手でオリンピック候補までになったものの、第二次世界大戦の影響で選手としてオリンピックに出場することはありませんでした。その後、その健康的な肉体美とアスリート離れした美貌を買われて、MGM(ハリウッドの映画会社)にスカウトされます。元アスリートだけあって、体格的にはスゴくガッチリで肩幅は半端ない・・・役柄によっては女らしいドレスとかも着こなしてはいるけど、やっぱり似合うのは水着、もしくはマニッシュなシャツやジャケットでしょう。美人だけど「これ!」という特徴がない平均的なアメリカ人的美女で「マッチョ系肉体派女優」第一号と言えるかもしれません。エスター姐さんのハンサムっぷりは、もしかするとビアン系にも人気がありそうな気がします。

まずは、ミッキー・ルーニーの相手役で映画女優としてスクリーンデビューを果たすのですが、1944年製作の「世紀の女王/Bathing Beauty」にて初の「スイミング・ロール/泳ぎの役柄」で主演し、その後10数年に渡って、アクア・ミュージカル女優として活躍することとなるのです。ただ、考えてみれば・・・「スイミング・ロール/泳ぎの役柄」という表現自体、エスター・ウイリアムス以外に使われようもない”言い回し”でありまして、それ故にアクア・ミュージカル女優という存在も、前にも後にも彼女以外にはあり得ないのであります。

さて・「アクア・ミュージカル映画」(または、日本では水中レビュー映画とも呼ばれたらしい)とは、何ぞやという話です。19世紀末期から「ウォーター・バレー」と呼ばれる水着姿の女性がプールで音楽に合わせて泳ぎ回る興業というのは存在していたようではあります。ただ、時代的な背景を考えると、女性の水着姿を公の場で見れることが”売り”であったことが推測できます。

「ウォーター・バレー」と「アクア・ミュージカル映画」の違いは、その規模・・・噴水、花火、ウォータースライダー、発煙筒などの大掛かりな舞台装置のあるプールなどで音楽に合わせて、水中で踊り、演じ、泳ぐというナンバーを、極めて映画的なカメラワークで魅せるのであります。その素晴らしさは、実際の映像で観るのが一番理解できると思うのですが・・・残念ながら日本ではエスター姐さんの主演作品の殆どがDVD未発売。「ザッツ・エンターテーメント」で、その一部を観ることができます。


映画の中では舞台上のパフォーマンスとして行なわれているという設定にはなっていますが・・・カメラは自由自在でクロースアップや上から見下ろしたショット、パンするカメラなどを多用していて、必ずしも観客席から見えている光景ではありません。1930年代に製作された”バスビー・バークリーのミュージカル映画”のような、幾何学的な美学に基づいた視覚効果を与えることを目的としているので、アクア・ミュージカルのシーンはかなり現実離れしています。

エスター・ウイリアムスは、ミュージカル(?)シーンの「ミューズ」として、吹き替えやスタントマンは一切なしで、数十メートル上からのダイビング、水上スキーなどの、超人的なアクロバット演技をみせてくれるのです。インタビューなど読むと、撮影中の怪我なども決して少なくなかったようで、かなり危険を伴ったっていたようです。また、バセリンで固めた髪や髪飾り、シークエンスやグリターで装飾された重い衣装での水の中での演技など、元アスリートだからこそ体力的にも精神的にも可能であったことが推測出来ます。「アクア・ミュージカル映画」は、エスター・ウイリアムスの存在なくして生まれることのなかった特殊なジャンル映画なのです。

「アクア・ミュージカル映画」では”売り”が明らかにアクア・ミュージカルのシーンとなるわけですから・・・正直言って、映画のストーリー自体は、健全で”たわい”ないものばかりでした。ちょっとした勘違いやすれ違いによるドタバタコメディであったり、脇役たちによるスラップスティックな笑いであったり・・・どの作品がどういう物語で何が起こったかとか、彼女がどういう役柄の設定だったとかは、あまり興味を惹くものではありません。

それでも、エスター・ウイリアムスの一連のアクア・ミュージカル映画が圧倒的に素晴らしいのは、シンクロナイズド・スイミングの演技者の層の厚さも、技術も、向上した現在でさえ再現することができない「アクア・ミュージカル」というエンターテイメントを、60年以上も前に完成させてしまったことに尽きるのであります!

エスター・ウイリアムス主演の第1作「アクア・ミュージカル映画」が制作されたのは1944年・・・第二次世界大戦で娯楽どころではなかった日本の貧しさを考えると、とんでもない発想でアメリカという国が映画を作っていたのだと思わされます。そして、戦後の1950年代・・・やっと復興した日本で戦中は未公開だった「アクア・ミュージカル映画」を目にした日本人の衝撃というのは計り知れません。

エスター・ウイリアムズは、1956年にMGMがアクア・ミュージカル映画の制作を中止と共に解約は打ち切られて、その後数年ほど女優として活動した後、あっさりと引退しました。4度の結婚、3人の子供に恵まれています。また、ビジネスウーマンとしても頭角を現して、現在でも販売されているエスター・ウィリアムス・ラインの水着ビジネスを成功させたのは勿論のこと、全米にエスター・ウイリアムス・プールを建設して、水泳界の人材育成にも力を入れていたようです。1960年代以降は、テレビのトークショーやニュース番組にも顔を出していました。アメリカでは、ハリウッド映画に伝説のスターとして、そして時代超えたスイミング界の象徴、永遠の”アメリカン・マーメイド”として、ずっと愛され続けているのです。

なお、エスター・ウイリアムスは今年(2011年)90歳になりますがご健在。86歳(2007年)当時のインタビューを観ても、健康美は衰えておらず、なんとも素敵なおばあさま・・・伝説と現在は繋がっていると確認させてくれる、類い稀なる存在なのです。






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1 件のコメント:

  1. 3日前にお亡くなりになりました。哀悼を申し上げます。

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