2010/11/08

「オンナの異端者」と「オカマの異端者」・・・旬な”マツコ”を相手に本物の異形”うさぎ”本領発揮!~うさぎとマツコの往復書簡/中村うさぎ&マツコ・デラックス著~


今やテレビや芸能ニュースで姿を見かけない日がないほど、お茶の間でも馴染みの顔になっている”マツコ・デラックス”でありますが・・・”マツコ・デラックス””中村うさぎ”の関連を知らない人というのも、まだまだ世間には、いらっしゃるみたいです。
簡単に説明すると・・・”マツコ・デラックス”を世の中に送り込んだ張本人が、”中村うさぎ”なのであります。
2000年頃、ゲイ雑誌(BADI/バディ)編集者だった”マツコ・デラックス”と知り合い、その後、無職でひきこもっていた”マツコ・デラックス”をコラムニストとして売り込んだのが、”中村うさぎ”・・すでに「ショッピングの女王」として世間で知られていました。
2001年に出版された語り下ろし対談集「人生張っています~無頼な女たちと語る~」では、当時まったくの無名の素人であった”マツコ・デラックス”を、岩井志麻子、西原理恵子などの対談者たちと同列に並べて登場させています。
また、東京MXテレビの番組「5時に夢中!」では、2009年3月まで”中村うさぎ”と同じ曜日に”マツコ・デラックス”もコメンテーターをしていた(現在、マツコは月曜日、うさぎは水曜日)というのも・・・”中村うさぎ”の強力なプッシュがあったからこそ、かもしれません。
”中村うさぎ”は、”マツコ・デラックス”のまさに「育ての親」・・・無職で無名の女装デブを「コラムニスト」に仕立て上げ(?)テレビの世界にまで進出する道筋をつけた「大恩人」であるのです。

「うさぎとマツコの往復書簡は「サンデー毎日」に連載の、二人で交互に書いていたエッセイをまとめたもの・・おじさん向けの週刊誌を買ってまで、連載当時に読む気はしなかったので、一冊にまとめてもらうのは、ありがたいことかもしれません。
先月出版されたマツコ・デラックス著の「世迷いごと」(めのおかし参照)は、たわいない芸能ネタを上から目線で語り下ろした一般大衆向けでありましたが・・・本書は、”マツコ・デラックス”が、普段の太々しいキャラで押し切ることのできない「大恩人」”中村うさぎ”であります。
普段は「大物風」を吹かせ、自分の過去の経歴など不利なことには、滅多に口を割らない”マツコ・デラックス”でさえ、”中村うさぎ”の前では、そんな横柄な風の吹かせようもなく・・・「まな板のコイ」状態になるしかありません。
人生経験も自己分析力も長けている”中村うさぎ”相手だと、”マツコ・デラックス”は、太鼓持ちのように「合いの手」を入れる役回り・・・”中村うさぎ”のような本物の異形者の前では、ちょっと弁の立つ「女装」の「ゲイ」でしかないことが暴露されてしまうのであります。

本書では、”マツコ・デラックス”が他では積極的に語ろうとしない「ゲイ雑誌の編集者の経歴」「女装趣味しているわけ」「自分の生き方と親との関係」にも、”中村うさぎ”は躊躇せずに踏み込んでくれます。
しかし、自己分析しなければ答えられない内面的な内容については、”マツコ・デラックス”は漠然とした返答しかできません。
自己認識という点では、38歳という年齢相応というところで、まだまだ口で言うほど分かっているわけではなさそうです。
どういうわけか”中村うさぎ”は、”マツコ・デラックス”「魂の双子」であると信じて、自分の後継者として無名時代から育ててきた経緯があるわけですが・・・随分と”マツコ・デラックス”を、買いかぶっているように感じます。
”中村うさぎ”の異端っぷりは「自分探し」「自己確認」のために「自分の中のオンナ」と真っ向勝負を挑んでいくという異常なほどの「答え」への執念であり・・・「異形」として世の中に関わることで自分の存在意味を表現しているのです。
しかし”マツコ・デラックス”の異端っぷりというのは・・・基本的に「巨漢で女装」というルックス。
なかなか頭の回転がいい・・・という評価する人もいるようですが、それって単なる「世渡りの計算術」であり「その場の言葉の切り返しという瞬間芸」でしかりません。
最近は、メディアでの少しでも過激な発言は世間から攻撃を受けやすいので・・・異形な「女装」という、世間的にも芸能界的に特権的な「女装」タレントが重宝しているというだけのようです。

女性に生まれかわりたい・・・ということでなく「ゲイ」+「女装」というのは、いろんな意味で「いち抜けた!」という存在です。
”マツコ・デラックス”の体格ならば、ゲイ男性として「デブ専」(デブの上のニク専か?)の一部にはモテるかもしれませんが・・・本人的に、それでは「良し」と出来なかったのでしょう。
性格も頭も顔も姿も、それほど良くないゲイが陥るひとつのパターンが・・・毒舌の「ゲイ」の「女装」というスタイル。
だって、ストレートの男に女性と見間違えられるというレベルの完璧な「女装」でもないし・・・ゲイの男から面白がられても、性的には見向きされることがなくのですから・・・。
ゲイ社会に根強くある「モテる」か「モテない」で、決めつけられるヒエラルキーの競争から、「女装」になることで離脱することができるのであります。
また、実際は「男性という性」を持ちながら、同時に「女性という性」の視点も持つ言い張るこのタイプの「ゲイ』+「女装」というのは、すべての階層を超越したような上から目線で語ることを許される特別な存在になることを、何故か世間は許すのです。
ゲイ社会では最低のエゴ(ヒラルキーの底辺)しか持てなくても、「女装」ということで「膨大なエゴ」を持つことが許されるという「反則技」による”ひとり玉の輿”状態と言えるでしょう。
その特権と引き換えに与えられるのは、虚栄とハッタリの人生・・・それは、独特な意味で「出家」に近いのかもしれません。
ボクには”マツコ・デラックス”は、そういう意味での「女装」にしか思えないのです。

「ショッピングの女王」「ブランド依存症」「美容整形マニア」「年下ホスト狂い」「デリヘル嬢として働き」「ゲイ男性と結婚」「ゴミ屋敷の片付けられない女」「50歳過ぎてロリータファッションの妖怪ババァ」と・・・極端なまでの「自分探し」を続けてきた”中村うさぎ”が、達しようとしている悟りの領域(?)というのは、あまりにも残酷です。
抜け殻のようになりながらも、すべてについて自問自答し分析してしまう”中村うさぎ”からは、彼女らしい名言がたくさん発せられます。

生き『地獄』を抜けたら『砂漠』だった・・・振り返った『地獄』の真ん中に『天国』はあったのだ。

『埋蔵金』を信じて掘り続けたきた人生だけど・・・『埋蔵金なんてない』ってことを証明できたことだけで満足。

自分のためだけに生きるのって限界がある・・・でも『子供』『出家』『ボランティア』には逃げられない。

私は生きてきた『価値』でなくて『意味』が欲しい・・・資本主義社会での自己実現には『意味』はなかったから。

売り物が『魂』だからこそ価値がある・・・耳障りのいい『魂』のない言葉に何も価値はない。

本当の自分を見つけるのが目的でなく・・・「他人にプレゼンテーションする自分」を探していただけだった。

『自分探し』『自己確認』を必要としない『心の安定』を獲得したと同時に、世間における私の存在は失われた

出版社/編者者としては”中村うさぎ”が、今、旬で話題の”マツコ・デラックス”のちょうど良い引き立て役と思ったのかもしれないけれど・・・本書を読めば、”中村うさぎ”こそが、本当は「凄い」ことが分かると思います。
もしかすると、この連載と出版は”マツコ・デラックス”の、最近めっきり仕事の減ってきたという”中村うさぎ”への「恩返し」なのかもしれません・・・そう意識していなかったとしても、結果的に、”中村うさぎ”再評価になれば嬉しいです。
”中村うさぎ”は、自分に対する興味に尽きることなく、トコトン経験と分析を繰り返す「強靭さ」「インテリジェンス」があるのだから・・・ルックスのインパクト勝負の”マツコ・デラックス”には、どうやっても及ぶことの出来ないレベル。
精神分析、宗教、哲学の領域に入り込んでしまったような”中村うさぎ”の暴走は、”マツコ・デラックス”を受け入れているような大衆向けではなくなってしまったのかもしれません。
”中村うさぎ”を、世間は「低俗」「痛々しい」などと「軽蔑」しているのかもしれません・・・実際にボクのまわりで”中村うさぎ”好きを公言する人(特に女性)っていませんし・・・。
しかし、そんな”中村うさぎ”こそが、本当は最も清く神々しい存在ではないのか・・・と、ボクには思えるのです。



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2 件のコメント:

  1. なかなか切れ味のある文章面白いです!

    個人的な意見ですが
    マツコさんを筆頭とするオカマタレントを支持する女性は自分の抱える悩みや問題から真っ向から直視したくない方が多いように思います

    女性からみたマツコさんはきっとパンダの様なものなんでしょう

    マツコさんは好きですが本書でうさぎさんの鋭い突っ込みにお茶を濁していた箇所は残念でした

    うさぎさんに比べればまだまだですが
    まだ他のオカマタレントよりもマツコさんは客観的に自己分析できる方だと思うので期待はしたいですね

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  2. 私は中村うさぎさんの「ショッピングの女王」の初回から読みはじめて以来のファンです。
    週間文春の連載も終わってしまってからは、単行本なんかもよく読みました。
    なんだか後半は、自分を罰しているかのような生き方に思えたりしました。現在は体調不良が心配です。

    中村うさぎさんを評価している記事で、嬉しくてコメントしました。マツコさんも大好きです。

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