2012/02/24

ライアン・ゴズリング主演の最高にスタイリッシュな”男の子映画”・・・デヴィット・リンチとスタンリー・キューブリックの遺伝子を引き継ぐニコラス・ウィンディング・レフン監督による”暴力のアート・フィルム”~「ドライヴ/Drive」~


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今、最も旬な男優のひとり・・・ライアン・ゴズリング。特に近年の出演作はどれも話題作でもあり、演技も高い評価も受けています。「きみに読む物語」ではロマンティックなリーディンマン、「ラースとその彼女」ではダッチワイフを恋人にしてしまう繊細な青年、「ブルーバレンタイン」では結婚が破綻してくダメ男・・・と、作品を選ぶセンスだけでなく、役柄をリアルに演じ分けています。日本未公開ですが、出世作のひとつの「The Believer/ビリーバー」では、ユダヤ人でありながらネオナチに陶酔してく屈折した若者を異様な気迫で演じていました。また「Half Nelson/ハーフ・ネルソン」では麻薬に溺れる貧民街の教師を演じてアカデミー主演男優賞ノミネートされています。

そんなライアン・ゴズリングの新作のひとつが「ドライヴ」です。主人公が犯罪者を現場から車で逃走させる「プロの逃がし屋」で役名が名前ではなく”ドライバー”という設定だと聞いた時には、1978年のウォルター・ヒル監督、ライアン・オニール主演の「ザ・ドライバー」のリメイク???と思ってしまいましたが・・・本作は、ジェイムズ・サリスというクライム・ミステリー作家による2006年に出版された同名の小説が原作。設定を映画版の「ザ・ドライバー」の影響を受けていることは明らかですが(主人公の名前も経歴も不明で”ドライバー”としか呼ばれない)ストーリーは違う作品でした。

監督のニコラス・ウィンディング・レフンは、コペンハーゲン生まれのデンマーク人・・・子供時代にニューヨークへ暮らし、映画の勉強もアメリカで始めたものの、デンマークに戻り24歳の時に監督した1996年の「プッシャー/Pusher」(その後三部作になる)というバイオレンスな麻薬ディラーを描いた犯罪映画で、デンマーク国内だけでなく世界的に注目を集めます。そして、このデビュー作以来、凄まじい暴力描写の犯罪映画ばかりを撮り続けることになるのです。2作目の「ブリーダー/Bleeder」(1999年)では、映像、キャラクター、音楽がエモーショナルに連動するという、レフン監督独特のスタイルをみることができます。

3作目の「フィア・エックス/Fear X」(2003年)はジョン・タトゥーロ主演のミステリー。妻を殺された警備員が、現実と悪夢を行き来するようなアート・フィルム的な作品で、デヴィット・リンチの一連の作品を彷彿させました。出世作「プッシャー」の続編、続々編を完成後、イギリスで最も凶暴な囚人といわれる”チャールス・ブロンソン”(本名マイケル・ゴードン・ピーターソン)の半生を描いた「ブロンソン/Bronson」(2008年)を政策。スタンリー・キューブリック監督の「時計仕掛けのオレンジ」を思い起こさせる”暴力”と”権力”を対比させた作品でした。

本作「ドライヴ」では、レフン監督独特の照明によるアンビエンスのある”クールな映像”と、ベタな歌詞が場面と連動する”エレクトリック・ポップ”やエモーショナルに盛り上がる”ムード・ミュージック”との融合が、暴力のカタルシスになっていく・・・デヴィット・リンチやスタンリー・キューブリックの”遺伝子”を連想させるのです。

ライアン・ゴズリング演じる”ドライバー”は、家族も友人もいない寡黙で不器用な男(映画内でもあまり台詞がない)・・・昼間は車の修理工場で働いたり、ハリウッドの車のスタントマン稼業をしながら、凄腕のドライビングテクニックを駆使して夜は腕利きの”プロの逃がし屋”稼業もしています。ある日、引っ越したばかりの同じアパートメントビルに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)とエレベーターで出会い、心惹かれてしまいます。ドライブデートを重ね、お互いの気持ちが徐々に寄り合っていくのですが・・・実は、アイリーンには、もうすぐ服役を終えて戻ってくる夫スタンダード(オスカー・アイザック)がいるのです。更正を誓うスタンダードと家族を守ることをアイリーンは決め、”ドライバー”もそんな彼らを影で見守ることとなります。ところが、服役中の用心棒費用を借金していたスタンダードは、闇の組織に強盗をすることを強要されて追い詰められています。そこで、”ドライバー”は愛する女性のムショ帰りの”夫”を救うため、無料で”逃がし屋”をかって出るのです。ううう・・・切ない。

”ドライバー”は、スタンダードと組織からの女ブランチ(クリスティナ・ヘンドリックス)を伴い、町外れの質屋の強盗を決行します。大金が入ったバッグとブランチは問題なく車に戻ってきたのですが、スタンダードは店の前で銃で撃たれて殺されてしまいます。”ドライバー”はブランチと大金をのせたまま逃亡することとなるのです。ところが、テレビのニュースでは大金が盗まれたことは報道されません。コレは罠だったのです。モーテルに潜伏していると、いきなりライフルを持った男達に襲われてしまいます。ブランチは頭をぶち抜かれ即死・・・ここからは、血まみれの自衛と復讐の暴力へと突き進んでいきます!頭部/顔面を破壊する暴力描写が多いのは、レフン監督の真骨頂・・・「ドライヴ」にひとつ前の作品「ヴァルハラ・ライジング/Valhalla RIsing」(2009年)ではスイカ割のように頭部をハンマーでぶっ叩いたていましたし、「ブロンソン/Bronson」でも特に顔面への暴力がしつこく繰り返されていました。

本作で最もロマンチック、かつ、バイオレンスなシーンが、エレベーターのシーンかもしれません。”ドライバー”は大金を持ってアイリーンと一緒に逃げても良いと告白するのですが、彼女は受け入れられません。そんな”まだかまり”を残したまま、”ドラーバー”を殺しにきた殺し屋と、アイリーンと”ドライバー”がエレベーターで鉢合わせしてしまうのです。”ドライバー”はいきなり振り返り、音楽に合わせてスローモーションでアイリーンとキスした直後・・・殺し屋に襲いかかり、靴で頭部がグチャグチャになるまで踏みつけて惨殺しまうのです。”ドライバー”は、これを気に殺人者と化して、アイリーンをトラブルから逃すため、黒幕と戦うことを決意するのです。そして、彼女の前からは姿を消してしまいます。この二人が愛を確かめ合うのは、このエレベーターのキス”だけ”なのです。

不器用な男はあくまでも不器用で、愛のために戦うことしかできません。リアルな暴力描写に対して、叶わぬ男の愛はとことんピュアに描かれる・・・「ドライヴ」は、精一杯、切ない”男の子映画”なのであります。



「ドライヴ」
原題/Drive
2011年/アメリカ
監督 : ニコラス・ウィンディング・レフン
原作 : ジェイムズ・サリス
出演 : ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、アルバート・ブルックス、オスカー・アイザック、ロン・パールマン、ブライアン・クランストン、クリスティナ・ヘンドリックス

2012年3月31日より日本公開



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