2011/08/09

自意識過剰なドロドロしたオンナの妄想地獄・・・グラビアアイドルになれなかった地方の”熊田曜子”を勝手にキャスティングしてしまいました~「ぬるい毒」本谷有希子著~


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ここのところ、老眼鏡なしでは単行本でさえ読むのが億劫になってしまったので、電車の移動中に本を読むことはしなくなってしまっています。このあいだの芥川賞(受賞作なし)の候補作品が、近所の本屋さんで平積みされていたので目についたのが、この「ぬるい毒」というタイトル。短めの小説なのでサクッと読めるかなと思って手に取ってみたら、内容的にも重くて、読みにくいリズムの文章。主人公の妄想なのか、実際に起きている現実なのか、どっちか分からない破綻っぷり・・・主人公と共に妄想地獄に落ちていくように感じさせられたのでした。


地元の大学に通っていた19歳の「私」に、向伊と名乗る男から男から電話がかかってきます。高校の高級生という彼は「私」からお金を借りたので返したいと言うのです。まったく覚えがないものの、とりあえず会ってみると、やっぱり知らない男/彼女が書いたという借用書があるのですが、それは彼女の筆跡ではありません。ただ、高校時代イケてなかった「私」に上手いお世辞のようなこと言って、向伊は「私」の心を乱したまま東京へ戻っていくのです。


1年後、再び向伊から同級生と飲んでいるからと呼び出されて「私」は居酒屋に”のこのこ”と行ってしまいます・・・同級生の男たちの”見世物”になることを知りつつ。東京の大学に通う向伊は、グラビアに出てくる女の子とも合コンしたことがあると自負していて・・・「私」の方が「全然キレイだよ〜」なんて持ち上げたりします。向伊や彼の男友達らの言動は嘘とは分かっているのに、何故か向伊に惹かれてしまう「私」・・・それは、いつか彼らの薄っぺらさを屈辱的に暴いてやるという妄想となっていくのです。


結局は「私」から向伊を誘ってホテルでエッチをするような関係になり、彼の里帰りの期間に「私」の実家の部屋に滞在させて恋人気取りになってみたり・・・バカにされていると感じながらも、上手く反撃できない惨めさばかりが募ります。自分でも分かって騙されていると言い聞かせて、いつか向伊より優位に立つのだと「私」は自分の頭の中で妄想し続けるのです。そんな自意識によって、ますます「私」は向伊との関係の深みに入っていき、良いように利用だけされるのであります。


遂には、金蔓にされると分かりつつ・・・向伊と上京することになる「私」。でも、彼の東京の友人達には「彼女」としては紹介されることはないのです。23歳ですべてが決まると思い込んでいた「私」は、24歳で地元に舞い戻ってしまいます。そして、まだ向伊に打ち砕かれた自意識からは、逃れられないでいるのです。「私」の心は、恋をしたことのある者ならば経験したことのある「恐れ」や「期待」にも似たような妄想・・・誰にも多少は同感できる部分もあるけれど、追求し過ぎた自意識の果てには、歪んだ主観しか持てなくなってしまうのかもしれません。


だから、本作は読み進めるうちに「私」のことを「もっと堕ちていけ!」とサディスティックな感情さえ湧いてくるのです。「私」が向伊や彼の男友達らを「ぬるい」と言い切ることで、彼らの”ほころび”を暴露できると思っているなんて、とんだ幼稚な発想・・・その頭の悪さ故「おまえこそ、地獄に堕ちていけばいいのだ!」とボクは心の中で言い放っていました。最後の最後で「私」が、東京の生活で何か掴みかけたなんて思っていること自体、ちゃんちゃら可笑しい・・・24歳となって地元に戻ったんだから「今後、おまえは単なる田舎のオバサンにしかなれないんだ!」と、頭ごなしに言ってやりたいのです。でも「私」みたいな女って、多かれ少なかれ存在している・・・だから、本作は誰が読んでも後味が悪いのであります。


主人公の名前が「熊田由里」なので、どうしてもボクの頭の中には「熊田曜子」と「私」が、かぶってしまいました。高校時代、垢抜けないダサい女だったけど、ちょっとばっかしキレイになって自意識過剰になっているバカ女。自分では頭がいいつもりで、打算的に状況を操っているつもりで、実は男たちに弄ばれている女。リアルの「熊田曜子」は「私」とは、まったく違うとは思うけど(笑)・・・もしも「ぬるい毒」を舞台化(著者の本谷有希子は劇団を主宰している)したとしたら、ボクは熊田曜子主演で観てみたいなんて思っているのです。




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