2011/02/05

もうひとつのゴールデングローグ作品賞受賞作・・・男前アネット・ベニングと尻軽ジュリアン・ムーアのビアンカップルの”アメリカンファミリー”のかたち~「キッズ・オールライト」~



先日、発表された第68回ゴールデングローグ賞作品賞受賞作・・・といえば作品賞、監督賞、脚本賞、オリジナル作曲賞の4部門を獲得した「ソーシャル・ネットワーク」が話題でありますが、ゴールデングローブ賞映画部門(テレビドラマ部門というのもある)の作品賞、主演女優賞、主演男優賞というのは、ドラマ部門とコメディ・ミュージカル部門と分かれているのです。
コメディ・ミュージカル部門で作品賞と主演女優賞を受賞したのが、日本での劇場公開もゴールデンウィークに決定した「キッズ・オールライト/原題 The Kids Are All RIght」であります。
すでにアメリカではDVD/Blu-rayが発売されているので、アメリカ版を観ました。

アネット・ベニングジュリアン・ムーア扮するレズビアンカップルが、同じドナーの精子によって、それぞれ子供をもうけた家庭のはなしなのですが・・・まず日本では”ありえない”状況でしょう。
精子バンクに登録すること自体が、医学生ならともかく・・・一般的にはまずないことだから。
しかし1980年代後半には、アメリカの有名大学(プレッピースクールと呼ばれるような)に通う男子学生が精子バンクに登録しているというのは”、それほどありえないこと”ではなかったという記憶があります。
当時は、精子提供者の匿名保持が原則だったので、お小遣い稼ぎに提供する男子大学生っていうのがいたようです。
提供者の容姿、人種、知能指数などによって価格のランクづけされているというのが違和感を感じますが・・・どうせ生むなら「見た目の良い」「頭のいい」「自分と同じ人種」の子種が欲しいという女性がいるのも理解出来ます。
ただ、精子を条件だけで選別というのは、人種差別に繋がる問題を含んでしまうことは否めませんが・・・この映画は、そういう倫理的な問題を描こうとしているわけではありません。

「キッズ・オールライト」では、レズビアンカップルと18歳の娘と15歳の息子の4人家族を、普通のアメリカンファミリーのかたちとして描いています。
ゲイやレズビアンのカップルに育てられている子供なんて「さすがにアメリカでも特殊なのでは?」と思われるかもしれませんが・・・カリフォルニアやニューヨークでは、結構普通に存在しているのです。
ボクの知り合いでも・・・ゲイの父親と父親のパートナーに育てられた友人というのもいたし(代理母ではなく、以前彼の父親は女性と結婚していて養育権を持っていた)、海外から子供をアダプトしたレズビアンカップルというのもいました。
ゲイカップルの場合には、自らが精子提供者となって、妊娠して生んでくれる女性を見つけるということになるわけですが・・・・ふたりの精子を混ぜて、血縁関係のある父親がどちらかハッキリさせずに育てるということもあると聞いたことがあります。
ただ、そう簡単に子供を生む”だけ”の女性を見つけるというのは難しいようだし、実際に出産してから子供を手放してくれなかったりと・・・トラブルになることもあるようです。
レズビアンカップルの場合には精子バンクで精子を調達出来れば、自分で妊娠して生めば良いので、ゲイカップルよりも自分と血のつながった子供を持つことは敷居が低いのかもしれません。

子供が18歳になると精子提供者である父親と会う権利があるという法律があるのですが・・・これは、これでトラブルになるという話を聞いたことがあります。
元々、匿名保持を条件に精子を提供している場合が殆どなので、会ったこともない女性が自分の精子で生んだ子供がいきなり目の前に現れて「あなたの子供です」と訴えられても愛情もひったったくれもないということはあるようで・・・、何らかの繋がりや自己のルーツを求める子供にとって、厳しい現実を直視しなければならないこともあるということなのです。
「キッズ・オールライト」のように、精子提供者の父親と子供達が良い関係を結べるというのは、現実的には稀なことなのなのかもしれません。
その上、その父親と母親のひとりであるジュリアン・ムーアが肉体関係を持ってしまうのですから・・・展開としては、かなりぶっ飛んでいます。
同じ同性愛者でもゲイとレズビアンというのは違うのかもしれませんが・・・何十年もゲイとして同性結婚をしていた男性が、50歳を過ぎて女性と関係を持つというのは非常に考えにくいです。
ただ、この映画はレズビアンカップルの生態描くことを目的とした”同性愛映画”ではなく、また精子提供者の精子を使って同性愛カップルが子供を持つことの問題提起でもなく、アメリカの新しい「家族」のかたちを描いている映画なので、生物学的な父親という存在が現れることによって起こるレズビアン家庭の危機を描くドラマには必然なのでした。

下手すると重くなりそうなテーマをコメディとして成立させているのは、父親役的な存在であるニック演じるアネット・ベニングのクールでシニカルな演技かもしれません。
シリアスさとコメディが紙一重という感じで・・・脚本のサブテキストを見事に表現しています。
ニックはレズビアンだけど保守的・・・ある意味、古臭いタイプの父親のような女性なのですが、その分家族を守ろうとする母性愛も大きくて、良くも悪くも男前な家長といえる存在です。
ニックは、ジュリアン・ムーアの演じるジュールスには「専業主婦」のように家庭を守って欲しいのですが・・・ジュールスはカリフォルニアによくいそうな元サーファーガールで落ち着かない感じであります。
あれこれ違う仕事にチェレンジしても結局成功していな様子・・・これまた、同性カップルにありがちな片方がもう片方に経済的にパートナーに依存してしまいがちという問題を絶妙に描かれています。
精子提供者の父親ポールを演じるマーク・ラファロは、若いガールフレンドと遊んでバイクを乗り回すセクシーで自由奔放な中年男・・・子供たちやジュールスが惹かれてしまうというのも、なんとなく納得できてしまうのであります。
ポールの出現によって、ニックを家長とする一家の危機となるわけですが・・・最後はタイトル通り「子供たちは大丈夫」というエンディングとなります。
実は、リア・チェロデンコ監督自身も、レズビアンで精子バンクを利用して子供をもうけたそうで、彼女自身のリアルな体験が生かされているのでしょう。

「子供を育ててファミリーを築くことと、親のセクシャリティーというのは関係ないよね!」

・・・という当たり前のことを改めて気付かせてくれるのです。

「キッズ・オールライト」
原題/The Kids Are All Right
2010年/アメリカ
監督 : リサ・チェロデンコ
脚本 : リサ・チェロデンコ、スチュアート・ブルムバーグ
出演 : アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、ミア・ワシコウスカ、ジョシュ・ハッチャーソン


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