2009年に劇場公開されたの映画ベスト10が、あちこちで発表され始めましたが・・・僕がまったくのノーマークだった園子温(そのしおん)監督の「愛のむきだし」という2009年1月に劇場公開された邦画が、いくつかのベスト10に入っているのを見かけました。
アメリカ在住の映画評論家の町山智浩氏に至っては、この映画のDVDをベスト10リスト作成の数時間前に観て「グランド・トリノ」を抜いて、ベストワンに挙げたほどです。
クリント・イーストウッド主演監督の「グランド・トリノ」は僕の2009年のベストワンでしたので、それを差しおいてまで、ベストワンに挙げてしまう「愛のむきだし」とは、どんな映画なんでしょう・・・。
「愛のむきだし」は、本編が4時間という長尺であるにも関わらず、先の読めない不条理かつ破滅的展開で、退屈を感じることもなく全編をみせてしまいます。
ユウ(西島隆弘)は、カソリック神父となった父の愛を確かめるように、罪を作り懺悔を繰り返すうちに、カリスマ盗撮師という”変態”になってしまう高校生です。
母の面影のある”マリア”を求めているのですが、盗撮しても女性に対して勃起しません。
ある日、女囚さそり(梶芽衣子)のコスプレ女装をして街を歩いている時に、男を嫌悪するヨーコ(満島ひかり)と出会い、恋に落ちます。
ユウは初めて”勃起”を経験します。
ユウはヨーコを”マリア”として愛を貫くのですが、それはヨーコのパンチラを見ると瞬時に”勃起”してしまうという”純愛”なのです。
新興宗教幹部の小池(安藤サクラ)によって、ヨーコは拉致、洗脳されてしまうのですが、その後は予想不可能な節操のない展開をしていきます。
この映画が実話をベースに作られたというのは驚愕です。
この純愛の行く末には、ユウの”勃起”が重要なのですが、これほど感動的(?)な勃起シーンというのは映画史上ないかもしれません。
まついなつき(子育てマンガで知られているが1980年頃はサブカル系の変態マンガ家?)の名言を思い出しました・・・「好きだというかわりにチンチン勃ててね」
ある意味コメディのようでありながら訴えているテーマは妙にシリアスで、”変態”と”宗教”が紙一重の危ない描写は、ひさうちみちお的な不条理の世界に似ているようにも思います。
ただ、この不可思議な映画を成立させているのは、若手俳優たち(西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ)の”熱演”というか”怪演”に尽きると言っても過言ではないでしょう。
ユウ役の西島隆弘は、草食系の美形の若手なのですが、屈折した変態的な役柄になりきって共感できました。
ヨーコ役の満島ひかりは、どこにでもいそうな美少女アイドルのようだけど、小悪魔的で破滅的、狂気に取り憑かれたような根性のある演技で、背筋が凍るような感動を与えてくれました。
小池役の安藤サクラは奥田瑛二の娘だそうですが、狂った新興宗教幹部を独特のテンションで不気味に演じており、将来的には白石加代子系の怖い女優さんになるかもしれません。
プロダクションのスケールも小さくて、インディーズ映画っぽい「愛のむきだし」をハリウッド映画の「グランド・トリノ」と比較するのも酷なことではありますが・・・「愛のむきだし」はバカバカしさの中に、愛の真理と哲学を描く崇高な映画でもあるのでした。
「愛のむきだし」
2009年/日本
監督 : 園子温
脚本 : 園子温
出演 : 西島隆弘、浦島ひかり、安藤サクラ、渡部篤郎、渡辺真起子
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