1980年代に活躍したハリウッド若手女優の多くは、今では”脇役”かB級作品(またはテレビ映画)でしか、その姿を見ることもなくなってしまったことも少なくありません。
青春映画に出演した”ブラット・パック/Brat Pack”と呼ばれた若手ハリウッド俳優の中でも、最も成功したデミ・ムーア(1962年生まれ)・・・最近では、アシュトン.カッチャーとの離婚トラブルの報道での、痛々しく劣化した姿しか記憶にありません。”不思議ちゃん”系のウィノナ・ライダー(1971年生まれ)は、万引き騒動以来奇行ばかり報道されていましたが、久々の話題作「ブラック・スワン」では、嫉妬深い年増の元プリマドンナ役という、落ちぶれたキャリアとシンクロしてしまう脇役でありました。ただ、痛いネタでもゴシップ誌を騒がすのは”ハリウッドスター”という証拠・・・完全に表舞台から姿を消してしまったり、脇役どころか”ちょい役”のオバチャンでしか見かけなくなったり、ハリウッドスターであったことさえも忘れられるよりは”マシ”なのかもしれません。
1980年代に登場した女優の中でも、ダリル・ハンナ(1960年生まれ)は、ボクにとって印象強いひとりです。1984年に公開された「スプラッシュ」で演じた人魚役は、モデル体型でブロンドという圧倒的な美人女優でありながら、天然系の可愛らしい彼女の当り役・・・また「シラノ・ド・ベルジュラック」をベースにした1987年公開の「愛しのロクサーヌ」での、厭味のない美しさが際立っていました。J・F・ケネディ・ジュニアと結婚を1990年代初めに噂されていたけれど、母親のジャクリーン・オナシス・ケネディに猛反対されて(ケネディ元大統領が浮き名を流したマリリン・モンローを思い起こさせるブロンドが嫌だったとか)ゴールインすることはありませんでした。その後、彼女のキャリアも下降線・・・テレビ映画やB級作品ばかりになってしまいました。ただ、2003年公開のクエンティン・タランティーノ監督作品「キル・ビル Vol.1」でのエル・ドライバー役で第一線に復活(?)・・・ただ、微妙な老け具合には、少なからずショックを受けたものでした。シーシェパードの支援などの環境活動家としても知られていて、元ハリウッドスターにありがちな変な方向に向かってしまっている気もしてしまいます。
ここからネタバレを含ます。
先日アメリカのアマゾンでDVDを物色していた際に、久々にダリル・ハンナ主演作品を発見(?)したのですが、作品の質の低さは笑い話にならないほどの酷さでありました。元々、テレビ映画として製作された作品で、オリジナルのタイトルは「Social Nightmare/ソーシャル・ナイトメア」・・・何故か、DVD/Blu-layリリース時のタイトルは「Mother/マザー」と変更されています。「自分の子供を守るためにぶち切れる母親役?」などとサイコホラーを期待したら、そこまで吹っ切れておらず・・・マニアが好きそうな”ギミック”も、驚愕の”どんでん返し”もないという中途半端な作品でした。テレビ放映の宣伝ポスターは、いかにも”ティーン向け”テレビ映画という印象ですが、DVDリリースの宣伝ポスターでは恐ろしい形相のダリル・ハンナのドアップになっています。販売側の判断で、まだまだネームバリュー”だけ”はあるダリル・ハンナをメイン(主演?)として宣伝したかったのかもしれませんが・・・「マザー」というタイトルとポスターから安易に推測できるとおりのストレートなオチなのだから、ネタバレ確実の変更なのであります。
スーザン(ダリル・ハンナ)は郊外の高級住宅地に暮らすシングルマザー(特に仕事をしていないようなのに、お金持ちそう!)。娘のキャサリン(クリスティン・プラウト)は、奨学金で大学への進学を考えている成績優秀な女子高校生・・・友人も多く楽しい学校生活を送っていたのですが、最近インターネットでキャサリンの友人らの悪口や秘密が暴露されるということが起こり始めます。「誰かにハッキングされた」と訴えるキャサリンですが、周辺の友人たちは彼女を責めるのです。キャサリンと同じ大学の奨学金を希望している親友の女友達(クロエ・ブリッジス)、黒人のボーイフレンド(ブランドン・スミス)、ゲイを隠してきた仲の良かった男友達・・・すべての友人の信用を失いつつも、キャサリンを信じて支え続けるのは母親のスーザンだけであります。しかし考えてみれば、自宅のパソコンにアクセス出来るのは一緒に暮らす母親のスーザンしかいないわけで、第三者を疑う方が不自然だと思うのですが・・・当事者のキャサリンは、プロのハッカーを雇って犯人を見つけようとしたり、疑惑を周辺に向けることで、ますます孤立していってしまうのであります。
キャサリンの行きたい大学に進学するためには家を出るしかありません。しかし、母親のスーザンはキャサリンが地元で進学することを望んでいます。娘が家から離れてしまうことを阻止するために、母親のスーザンがインターネットの書き込みや投稿をしていたことが判明するのですが・・・母親の娘に対する異常な独占欲というものをキチンと描いていないので、モチベーションのネタばらしとしては説得力がありません。母親スーザンが犯人だと分かったキャサリンの元を訪ねてきた親友の女の友達に襲いかかる母親スーザン・・・こっからが修羅場と思ったら、気が抜けるほどあっさり警察がやってきて逮捕されてしまいます。もっとぶっ飛んだサイコな展開であったならば、もっとダリル・ハンナが往年のベティ・デイヴィスのような捨て身の怪演をしていたなら・・・「母親と娘の確執もの」として、ボクのような偏った嗜好のファンには受けたかもしれません。インパクトがあったのはDVDリリースの宣伝ポスターだけで、マニアックに面白がるようなギミックも一切なく「おキャンプ映画」にさえなりきれていない・・・本当に「どうでもいい映画」でありました。
ボトックス注射のやり過ぎなのか、ヒアルロン酸注入し過ぎなのか、アンチエージング整形手術を繰り返した女性にありがちな妙に腫れぼったい顔と唇(!)のダリル・ハンナの”お顔”のインパクトだけは「大」・・・それも30年前に「スプラッシュ」でデビューした頃と変わらないヘアスタイルとイメージのままというところが、”劣化”度合いをさらに強調させてしまっているのです。女性も年齢と共に髪の毛が細く薄くなってしまうのに、何故かロングヘアの女性はヘアスタイルを変えません・・・ボリューム感の乏しいロングヘアほど、老化を感じさせてしまうのに!ある意味、体型が崩れて、ただの中年おばさんになってしまった方が、若いときの美貌とあっさり決別できたりするのかもしれません。そこそこの体型維持してしまうと、若作りが痛々しい年齢になっているのにも関わらず、いつまでも全盛期のイメージにしがみついてしまうようで(ハリウッド女優に限ったことではありませんが)・・・ハリウッド男優は「頭が禿げてもセクシー」「デブになっても主役」「若い女優さんと恋愛映画」であることを考えると、性差による差別は年齢を重ねるに連れて増していくということなのかもしれません。
「マザー」
原題/Mother
放映時タイトル/Social Nightmare
2013年/アメリカ
監督 : マーク・クォッド
出演 : ダリル・ハンナ、クリスティン・プラウト、クロエ・ブリッジス、ブランドン・スミス
日本劇場未公開
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