2016/04/22

オーストラリアのコメディアン、ジョシュ・トーマス(Josh Thomas)のテレビシリーズ・・・非イケメン20代ゲイ男子の”こっち”も”あっち”もない日常とシニカルな笑い~「Please Like Me./プリーズ・ライク・ミー」~


ここ数年、海外テレビシリーズが席巻しておりますが、ひとつのエピソードが1時間ほどの”ドラマ”シリーズと、30分ほどの”コメディ”シリーズに大きく分けられます。

コメディ”シリーズは「Sitcom(シッコム)」=「Situation Comedy(シチュエーション・コメディ」と呼ばれることもあり、古くは「奥様は魔女」や「アイ・ラブ・ルーシー」などがあります。セット撮影で、観客を入れて笑い声が入っていることが多く・・・ある状況下(シチュエーション)で、キャラクターたちがノリツッコミやジョークを繰り広げるわけです。ただ、近年はセット撮影ではなく、内容的にもシリアスな問題を取り上げたり、ドラマ仕立てでもあったりします。

シッコムには、さらに大きく分けて二つのタイプがあります。「奥様は魔女」のように、クリエーター(脚本家や制作者ら)が作り上げたキャラクターを役者が演じるタイプと、コメディアン(コメディ俳優)が作り上げたキャラクターを元にするタイプです。エリザベス・モントゴメリーという女優がサマンサを演じた「奥様は魔女」は前者で、ルシール・ボールがルーシーを演じた「アイ・ラブ・ルーシー」は後者となります。後者は本人と演じている役柄がだぶることも多く、演じられているキャラクターはほぼ本人ということもあるのです。


「Please Like Me./プリーズ・ライク・ミー」は、オーストラリアのお笑い芸人ジョッシュ・トーマス(Josh Thomas)演じるのゲイの大学生”ジョッシュ”と、彼をとりまく家族や友人たちを描いた30分の”コメディ”シリーズであります。しかし、シッコムという範疇を超えて、シリアスな問題提示もあったり、ドラマ仕立てでもあるのです。

オーストラリアのお笑いやテレビにいついて、ボクは詳しく知らないのですが・・・ジョシュ・トーマスは、2005年に17歳という異例の若さでメルボルン・インターナショナル・コメディ・フェスティバルで優勝(どれほどの世界的にみて権威があるのかは分かりませんが)、その後オーストラリアを中心に活躍していたようです。

「ライク・ミー」は、そもそも2007年から始めたジョッシュ.トーマスによるスタンドアップ・コメディ(日本のお笑いでは漫談?)のタイトルで、2010年には「Surprise(サプライズ)」というタイトルで、自身のゲイをカミングアウトをしています。2013年にはテレビコメデシリーズとして「プリーズ・ライク・ミー」がスタートするのです。


主人公のジョシュは20歳の大学生(演じるジョシュ・トーマスは童顔のわりに皺っぽいので年齢不詳な感じ)・・・精神的に不安定な母親(デボラ・ローレンス)、母方の叔母ペグ(ジョディ・ファー)、離婚しているジョシュの父親(デイヴィット・ロバーツ)、父親のタイ人のガールフレンド(レネ・リム)、ジョシュのストレートのルームメイトのトム(トーマス・ワード)、ジョシュの元カノのクレア(カイトリン・ステーシー)らを中心に繰り広げていく、ちょっと奇妙な日常を描いていくのであります。

ルームメイトのトムを演じるトーマス・ワードは、実際にジョシュ・トーマスの親友でもあり、本作のシナリオ制作にも参加していることから分かるように、本作はほぼ自伝的な内容といっても良いのかもしれません。

冒頭で、ジョシュはクレアから別れを告げられるのですが、その理由が「だって、あなたゲイでしょ?」というのですから、最初から急展開であります。どうやらジョシュ自身は、自分がゲイだという自覚がハッキリとはないようなのですが、トムの同僚のジェフリー(ワデ・ブリッジス)と、あっさりと肉体関係をもってボーイフレンドなってしまうのです。

トムにはニアーム(ニキータ・リー=ピッチャード)という恋人がいるにも関わらず、クレアとトムが肉体関係をもってしまうし、その後も二アームとトムはセフレとしての関係を続けます。ジョシュはジェフリーと付き合い始めるのですが、逆に彼の情熱の強さに冷めてしまって、ルームメイトとして受け入れたパトリック(チャールス・コッティアー)にムラムラしてしまったり、ゲイだと自覚しても何ともハッキリしません。”ストレート”も”ゲイ”も、”元カノ”も”セフレ”も、あらゆる関係がボーダーレスで優柔不断なところは「いまどき」の20代的な感覚なのでしょうか?

外見的には”草食系”のようにみえる非イケメンのジョシュでありますが、実は結構モテモテだし、なかなかの”肉食系”・・・ジェフリーをはじめイケメンのゲイからはグイグイ誘惑されるし、好きな男には自分からアタックしちゃいます。母親の入院先の精神病院にいるアーノルド(キーガン・ジョイス)を、ジョシュがほっとけないのは、何かが自分に欠如していることを自覚している者だ同士だからかもしれません。本作に登場するキャラクターは人間的に未熟で、それぞれが問題を抱えているのですが・・・少々自虐的でシニカルな笑いに変換されることで、誰もが自分を受け入れていくのです。

シーズン2、シーズン3とエピソードを重ねていくうちに、キャラクターたちの状況や関係は、ますます複雑になっていきます。”ささくれ”のような微かな心の傷も、劇的なできごとも、あっさりと描かれていくのですが・・・どのキャラクターも経験を通して、和解したり成長していく様子を、よくある感動とは無縁なドライに描いていくところは、ジョシュ・トーマスのコメディアンとしての洞察のセンスなのでしょう。また、無神論者として公言するジョシュ・トーマスらしく、一部のキリスト教的なホモフォビアに対する皮肉は、なかなか痛烈であります。

ゲイを主人にしたシリーズにアリガチの、ゲイのステレオタイプの笑いや表現や、政治的なゲイ・リブのメッセージ性は希薄・・・いわゆる”こっち”=「ゲイの世界」という”あっち”=「ストレートの世界」という分けられた世界観ではなく、状況や立場、見方を変えれば誰もが「マイノリティー」という”ゆる~い”感性こそが、世の中の全ての人を幸せにするんだなぁ~と思えたりするのです。


「プリーズ・ライク・ミー」
原題/Please Like Me.
2013年~/オーストラリア
出演 : ジョシュ・トーマス、デボラ・ローレンス、デイヴィット・ロバーツ、トーマス・ワード、ワデ・ブリッジス、カイトリン・スターシー、ニキータ・リー=ピッチャード、レネ・リム、ジョディ・ファー、キーガン・ジョイス
2013年よりオーストラリアABC2にて放映
2016年12月2日より”Netflix”にて配信

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