2014/07/05

もう二度とオーストラリアに行きたくなくなるトラウマ映画8年ぶりの続編・・・メチャクチャ強い田舎親父の殺人鬼”ミック・テイラー”再降臨!~「ミック・テイラー 史上最強の追跡者/Wolf Creek 2」~



ホラー映画というのは、比較的続編、もしくはシリーズ化されやすいジャンルです。前作「ウルフ・クリーク/猟奇殺人谷」は日本では製作から4年経って(2009年)DVDスルーという扱いをされていた作品で、続編となる「ミック・テイラー 史上最強の追跡者/Wolf Creek 2」は、前作から実に8年ぶりになります。ボクは前作をアメリカ版DVD発売直後(2006年ぐらい?)に購入して、何も情報を知らないまま観て・・・『オーストラリア版「悪魔のいけにえ」だ~!』と、かなりツボにハマったのですが、その後、日本で劇場公開されるという話を耳にすることもなく、すっかり忘れかけていたのです。

ウルフ・クリークは、オーストラリア大陸の北西部に実在する巨大なクレーターで、国立公園にもなっています。映画の元になった事件のひとつ・・・イギリス人旅行者ピーター・ファルコニオ氏の失踪殺人事件は、2000キロメートルも離れたエリアで2001年に起こった事件です。2005年犯人の有罪判決後、ジョアンヌ・リーズという生き残った女性によって手記が出版されています。もうひとつ、映画の元になったのは、1990年代にヒッチハイカーを次々と殺害したイヴァン・ミラットの事件で・・・シドニーのあるニューサウスウェールズ州で起こったのです。ということで・・・オーストラリアで3万人が失踪し、そのうち9割ほどが見つからないというデータから、本作の”ミック・テイラー”という架空の殺人鬼を、監督のグレッグ・マクリーンが創作したのであります。

「ウルフ・クリーク/猟奇殺人谷」は、グレッグ・マクリーン監督の長編デビュー作で、その後2007年には「マンイーター」という巨大アリゲーターが観光客を襲う動物パニック映画をつくっています。監督第3作目が、本作「ウルフ・クリーク2」となるわけですが、観光客がオーストラリア旅行中に恐ろしい事件に遭遇する映画ばかりつくっているという・・・自虐っぷりです。どの作品もオーストラリアの雄大な大自然を満喫できるナショナル・ジオグラフィックっぽい映像が導入部分ではたっぷりと織り込んでいるのですが、その後の、展開が”地獄”(笑)・・・その広大さが恐ろしくもある”トラウマ”を植えつけるのです。

ウルフクリークあたりで車が故障してしまったバックパッカーの3人(ベン、リズ、クリスティ)は、”偶然”通りかかった親切そうな地元のおじさんの救われるのですが、実は、そのおじさんは旅行者を拉致して、殺害を繰り返していた殺人鬼というのが、前作「ウルフ・クリーク/猟奇殺人谷」・・・数多くある「悪魔のいけにえ」の焼き直しであります。しかし、複数の視点を時間軸で並行に描いていくのではなく、ひとりの視点によって継続的に描くことによって、緊張感が途切れない恐怖を感じさせたのです。

本作は続編として8年ぶりとなるわけですが、第1作目と監督が同じというだけでなく、殺人鬼”ミック・テイラー”を演じた俳優も同じジョン・ジャラットであり・・・物語としての展開も基本的に前作と大きく変わりない、堂々たる正統な続編であります。前作では冒頭約40分ほど、バックパッカー3人の男女がオーストラリアの雄大な大自然を背景に旅をするという青春ロードムービーのような映像が続くのですが・・・続編となる本作ではテンポも残酷描写もパワーアップ!冒頭から、ミックのとんでもない凄腕のスナイパーっぷりを披露します。スピード違反を捏造してミックを検挙した悪徳警察官二人組・・・猛スピードで走るパトカーの運転手の警察官の頭を、たった一発のライフルで打ち抜いて、頭部破壊という大サービス(?)です。

ここからネタバレを含みます。


ドイツ人カップルのカテリーナ(シャノン・アシュリン)とルトガー(ピリッペ・クラウス)はオーストラリア大陸横断をしているヒッチハイカー・・・彼らもウルフクリークを訪れます。夜、キャンプ場でないエリアでテント張っていると保安官に捕まって罰金になると、わざわざ車を止めて忠告してきたのは、勿論ミック・・・実は昼間から周辺でヒッチハイクしている彼らのことに目をつけていたのです。キャンップ場まで車で送ってあげるというミックの誘いに、何かしら危険を察知したルトガーは、ミックの申し出を断ります。すると態度を急変させたミックは、ルトガーの脊髄を切断して”木偶の人形”にしてしまうのです。一部始終を目撃していたカテリーナを演じる女優さんの怖がりっぷりが臨場感があって、不快な残酷感を盛り上げてくれます。

しかし、それだけでミックの暴力は終わりません。カテリーナに馬乗りになり、下着を剥がしていくのです。ミックに最後の力で逆襲を試みるルトガーですが、怪力親父のミックに敵うわけはありません。あっさりうつ伏せに倒されてしまい、首をナイフで切られて絶命・・・さらに、そのナイフで、ゴリゴリと頭を切り取られてしまうのです!そして、まるで家畜をバラすかのように、ルトガーの身体はチェンソーやナイフで、手足をバラバラにされて、肺や心臓などの内蔵までをえぐり出されて、男性器までチョキンと切り取られてしまいます。ミックの目を盗んで、カテリーナは命がけで逃亡・・・偶然、車で通りかかったイギリス人旅行者のポール(ライアン・コー)によって、とりあえず助けられます。ここで、視点はカテリーナからポールへと移るのです。


状況を飲み込めないながらも、必死の形相で恐怖を訴えるカテリーナの尋常でない様子に、ポールはミックの暴走トラックから何とかして逃げようと、激しいカーチェイスを繰り返します。ここで判明するのが、ミックのとんでもない運転技術と追跡能力・・・遂には、ポールの車を追い詰めて、ライフルでカテリーナを一発で仕留めてしまうのですから。ポールだけは何とか車を再スタートさせて、その場から離れることには成功するのですが・・・土地勘のないポールは、翌朝ヒッチハイクをしようとするのです。そんなことしないで、さっさと自分の車で逃げれば良いのに・・・という気もするのですが、案の定、ヒッチハイクをしていると、今度は大型トラックに乗ったミックに見つかってしまいます。

ここで、ミックは大型トラックのアクロバティックな運転能力を発揮します。CGではありますが・・・カンガルーを大型トラックで次々と轢き殺していくシーンは、さすがにドン引き・・・動物愛護で知られるオーストラリアの顔に泥を塗るような「悪趣味」です。崖から転落しながらも、なんとか逃げ切ったかのように思えた時、ポールの車に大型トラックが坂道を暴走して激突して大爆発!ここでも、再びポールは何とかミックから逃げることに成功します。飲み水も尽きて朦朧としたポールの目の前に現れたのが、荒野の一軒家・・・ポールは思わず入り口のドアに倒れこみます。もしかして・・・ミックの家?と思わせぶりな演出でありますが、実は温厚な夫婦の家で、服を洗濯してくれたり、温かいスープの食事を用意してくれたりしています。

しかし・・・ポールが逃げ切れるわけはありません。ミックは、ポールが匿われていることを察知して、夫婦をライフルで殺害。家から必死で逃げるポールを追いかけるミックは、夫婦の家で飼っていた馬を上手に乗りこなして、しつこく追いかけます。結局、ポールはミックに捕まって拉致されてしまうのです。クイズに答えられなければ、小型の電動ノコギリで指切断(!)というゲームをミックに強要されるポール・・・勿論、ルールなんてあってないようなもの。どう答えたって、ポールは万力で腕を押さえつけられて、指切断をされるのです。しかし、ポールもチャンスを見計らって、かなづちでミックの顔を陥没するほど殴りつけて反撃・・・しかし、ここでトドメを刺さないのが「お約束」。ミックはムクッと起き上がるのですから!


前作ではハッキリと見れなかったミックの地下室や地下道が明らかになります。拉致した旅行者たちをじっくりと時間をかけて拷問して殺害していた現場というのは、まさに「悪魔のいけにえ」を彷彿させる地獄絵図であります。今まで何十人(何百人?)が閉じ込められて、逃げることができなかたミックの地下室から、そう簡単に脱出できるわけはありません。しかし、ポールを追ってきた番犬たちもミックが仕掛けていた竹柵で撃退・・・地下道の床に仕込まれた落とし穴も見破ったにも関わらず、最後は怪力ミックによって、首根っこを掴まれて・・・「もう、ここまで」本作では生き残る被害者はいないのかと思った途端、いきなり全身傷だらかになったポールが横たわる姿が写されます。それも、街中にあるガソリンスタンドの前で。そして、ポールは駆けつけてきた警察官によって捉えられてしまうのです。

ミックが旅行者、それも海外からの旅行者ばかりを狙って、拉致、虐待、殺害してくたのは、オーストラリアを美しく保つためという歪んだ愛国心のようなものからだったようなのですが・・・ミックは「勝者」であり、ミックによって殺害された者たちは「敗者」であるかと言うように、発見されたポールの手には「敗者/LOSER」という紙切れ一枚が握られているのです。一体、これって、どういう意味なんでしょうか?何故、ミックがポールを痛めつけながらも、街中に放置して逃がしてくれた理由はハッキリしないまま・・・そして、エンディングのキャプションで、ポールがウルフクリーク周辺で怒った旅行者連続殺人の犯人として捜査を受けたものの、精神的に崩壊してイギリスへ強制送還されて、今でも精神病院で過ごしていると説明されるのです。

ここでふと思い出したのが、前作「ウルフ・クリーク/猟奇殺人谷」のエンディング・・・最後まで生き残ったベンは、警察に犯人として拘束されたところで終わっていたのです。そう考えてみると、本作は続編でありながら、前作のリメイクでもあるというホラー映画にありがちな第2作目のパターンの王道なのであります。「もう、オーストラリアなんかに行きたくない!」と思わせる自虐的なトラウマを追求して・・・第3作目では1作目と2作目を覆すよな”サプライズ”により、殺人鬼”ミック・テイラー”の「ウルフ・クリーク」のシリーズを化を、ぜひぜひ目指して欲しいものです。


「ミック・テイラー 史上最強の追跡者」
原題/Wolf Creek 2
2013年/オーストラリア
監督 : グレッグ・マクリーン
出演 : ジョン・ジャラット、ライアン・コー、シャノン・アシュリン、ピリッペ・クラウス
日本劇場未公開、DVD発売

「ウルフクリーク 猟奇殺人谷
原題/Wolf Creek
2005年/オーストラリア
監督 : グレッグ・マクリーン
出演 : ジョン・ジャラット、カサンドラ・マグラス、ケスティー・モラッシ、ネイサン・フィリップス
日本劇場未公開、DVD発売



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1 件のコメント:

  1. 今この映画見終わった所ですが、最後までしっくり来ない映画だと思いました、、、それとオーストラリアに恐怖心を抱きそうです。・°°・(>_<)・°°・。 以上感想でしたm(_ _)m

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