2013/09/19

”ハイファッション”を信じる”業界オネェさん”が支える世界・・・1%の富裕層のための百貨店はアメリカンドリームのアイコン~「ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート/Scatter My Ashes to Bergdorf's」~



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「昔は良かった」的な発言って、いかにも年配者の言い草で、あまり言いたくないんだけど・・・1980年代から90年代にリアルタイムで”ファッション”に関わったボクの世代の人たちの多くが、多かれ少なかれ感じていることだと思います。ただ・・・それは、ボクの前の世代(1960年代~70年代を経験した人たち)も感じていたことなのです。

近年、ハイエンドのファッションデザイナーや雑誌編集者に関するドキュメンタリー映画というのが続々と制作されています。その一方、ますます”ファストファッション”の売り上げはうなぎ上り・・・エンタメ情報として求められる(そして、あっという間に消化されてしまう)のは”ハイファッション”でありながら、その観客が実際に購入されているのは”ファストファッション”ということなのかもしれません。

「ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート」は、ニューヨークの唯一無二の存在である超高級デパート「バールドルフ・グッドマン」の魔法の扉を開く(?)ドキュメンタリー映画です。原題の「Scatter My Ashes to Bergdorf's」=「私の遺灰はバールドルフに蒔いて!」というのは「ニューヨーカー誌」に掲載されたカートゥーンから引用されたフレーズ・・・「葬られたいほどの素晴らしい場所」であるということなのです。


数々のセレブやデザイナー達によって「バールドルフ・グッドマン」の素晴らしさが語られ、裏を支えるパーソナルショッパーやディスプレイスタッフへのインタビューや取材によって構成されている本作は、ドキュメンタリー映画としては、正直”まとまり”に欠けている印象・・・残念ながら「バールドルフ・グッドマン」について全く知らない観客には、その”魔法”さえ伝わりにくいかもしれません。

ボクは、1985年にパーソンズデザイン大学のファッションデザイン科に入学したこともあって「バールドルフ・グッドマン」には、学生時代からよく足を運んでいました。当時は現在のウーメンズ館だけしかなく、確か・・・メンズは地下(現在はコスメ売り場)にあったような(?)記憶があります。

女性のハイファッションに興味のあったボクは、部屋を通路で繋げたような構造のクチュールサロンのあった2階の売り場を、週に何度も通っていたのです。セール時期にには、1着が数十万円もするイブニングドレスやカクテルスーツが、通路に無造作にローリングラックに掛けられるのですが、その風景は消費社会の皮肉さを見せつけているかのようで、圧巻ありました。ファションデザインを学ぶ学生にとって、実際にトップデザイナーの服を間近で見ることのできる絶好のチャンス・・・内側の始末まで服を裏返してボクは見ていたものですが、販売スタッフの”おばさま”方は、そんなデザイン学生にも大変寛容で、暖かい眼差しで、時には応援の声までもかけてくれたりもしました。「バールドルフ・グッドマン」は、ただ高級品を売る敷居の高い”だけ”の店ではなく、富裕層のためのハイファッション業界を支えていたのかもしれません。当時ニューヨークにあったヨージヤマモトの店では、服を触るだけで「コピーするのか?」と厭味を言われたりしたのとは”対照的”でした。

「チャリバリ/Charivari」「マーサ/Martha」「リンダ・ドレズナー/Linda Dressner」などのハイエンドのセレクトショップの撤退、「サクス・フィフスアベニュー/Saks Fifth Avenue」「ブルーミングデール/Bloomingdale's」が、”ハイファッション”の販売店としての存在感を失っていく中・・・たった1%の富裕層をターゲットとした「バーグドルフ・グッドマン」は、ラインのエクスクルーシブ(独占)によってデザイナーや顧客を囲い込むことによって、さらなる伝統と歴史を築き上げて、アメリカンドリームの”アイコン”にまでなったのです。


本作は、クリスマス商戦のウィンドウディスプレイの完成に向けて進んでいくことになります。ニューヨークのクリスマス商戦のディスプレイというのは、実はどこのデパートでもかなり力を入れており「バールドルフ・グッドマン」だけに限ったことではありません。インテリア/陶芸デザイナーのジョナサン・アドラーの彼氏としても知られるサイモン・ドーナン氏が手掛ける「バーニーズ」のショーウィンドウは、毎年斬新なディスプレイが話題になりますし・・・伝統的なクリスマスシーンを緻密かつ豪華に表現する「サクス・フィフス・アベニュー」のショーウィンドウは、多くの人が行列するほど、ニューヨークのクリスマスの風物詩となっています。本作のエンディングで披露される「バールドルフ・グッドマン」のショーウィンドウも、大変美しいものなのですが、クリエーションのプロセスをじっくり見せるというほどではなく・・・単にディスプレイ主任のデヴィット・ホーイ氏を追うだけに終わってしまっているのが残念でした。

「ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート」を観て気付かされたのは、スタッフが思いの外”高齢化”していること・・・そもそも顧客の年齢層が高いこともありますが、販売スタッフ、ディスプレイスタッフ、警備員まで専門職なので、優秀なスタッフは長く働き続けるということがあるのかもしれません。主要スタッフはボクよりひと回りほど上の世代(60代?)のようで、1980年代から”現役”としてファッション業界に関わっていた人たち・・・彼らの信じる”ハイファッション”の世界が、ボク自身が馴染み深い”ハイファッション”と一致するのは当然と言えば当然のことなのです。インタビューに答えているデザイナーやスタッフの男性(経営陣を除いて)は、俗にいう”業界オネェさん”の方々・・・裕福な女性のためのファッション/美容に関わるのは、ゲイ男性という図式はニューヨークでは永遠のようであります。


「ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート」
原題/Scatter My Ashes to Bergdorf's
監督 : マシュー・ミーレー
出演 : カール・ラガーフェルド、クリスチャン・ルブタン、マーク・ジェコブス、トム・フォード、トリ・バーチ、ジョルジオ・アルマーニ、マノロ・ブラニク、パトリシア・フィールド、ラウドミア・プッチ、シルビア・フェンディ、ドメニコ・ドルチェ、ステファノ・ガッバーナ、メアリー=ケイト&アシュレー・オルセン、ニコール・ニッチー、ヴェラ・ウォン、ダイアン・フォン・フォステンバーグ、ジョーン・リヴァース、キャンディス・バーゲン、マイケル・コース、

2013年10月26日より日本劇場公開


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