2012/08/11

「ナチスが月から攻めてくる!」ってなわけないだろう!?・・・フィンランド発!アメリカを筆頭に世界を皮肉に茶化す超おバカなSF政治コメディ~「アイアン・スカイ/Iron Sky」~


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ドイツの”ナチス”は、人類の起こした最悪の犯罪のひとつではあるのだけど・・・第二次世界大戦後は、散々残酷映画のネタにされたものです。それは戦争に勝った国々(西ヨーロッパやアメリカ)からすれば当然のことで・・・”ナチス”は世界の誰もが認める悪者だということ。”ナチス”以外にも、冷戦状態にあったロシアだって、テロリスト扱いのイスラム圏の国々だって似たような扱いを受けているのですが、やっぱり悪者といえば”ナチス”。歴史的には”悪”の烙印を押されるのは当然ですが・・・いつまでも”ナチス”の悪者として描かれ続けなければならないドイツ人って、ちょっと気の毒な気もしてしまいます。

中国、韓国からみたら、日本だって”ナチス”ぐらいに”悪者”ではあるわけで、日本人(日本軍)を悪者にした映画も相当数製作されています。日本人=悪者とするステレオタイプは、隣国からなくなることはないのかもしれません。ただ、日本人の国民性やカルチャーも欧米で好意的に受け取られているおかげもあってか、世界的に日本=悪者という図式が当たり前とまでなっていないのは救いではないかと思います。

日本人からすると、時間や規則をしっかりと守りそうな国民性や、工業国として親近感を感じるドイツ人ですが・・・ヨーロッパの国々からは決して好かれているわけではないようなんです。ドイツ人が集まるリゾート地はドイツ以外のヨーロッパの人が来なくなってドイツ人だけになってしまう・・・と言われるほど。ビールを飲んで騒いで野蛮、文化の繊細さに欠けると国民性が、どうやら毛嫌いいるらしいのです。確かに経済ではユーロ圏を牽引しているドイツでありますが・・・なんとなく嫌煙されているからこそ、いまだに”ナチス”という過去を持ち出されてしまうというのかもしれません。

フィンランド人のティモ・プオレンソーラ監督による「アイアン・スカイ/Iron Sky」は、世界各国の映画ファンやSFファンから出資を募って、総制作費の750万ユーロのうち、約65万ユーロを個人からのカンパを集めてしまったという・・・”全世界待望”(?)されているに違いない一作なのです。アメリカでは決して評判は良くなかったようですが、ヨーロッパ各国では大ヒット・・・すでに、続編と前日譚の製作も決定しているそうです。

2018年、月に資源調査にでかけたアメリカの「リバティ号」・・・実は月面裏側に逃げ延びていたナチスは反撃の機会を狙っていたのです!ナチス軍営の総統を演じるのは、毎度”この手の役には”お馴染みのウド・キアー。これだけでも、かなり”おバカ映画”の確信犯さを垣間見せているのですが・・・ナチス軍営が「悪役」というわけでは全然なく、地球側(アメリカ)も酷い(!)・・・どちらも馬鹿にしているところが、ドイツとアメリカ以外の国にとっては、笑いのツボかもしれません。

”サラ・ペイリンのそっくりさん”の保守系アメリカ女性大統領が、とにかく酷い・・・黒人宇宙飛行士を月に送ったのも、彼女が”大統領再選”を狙っての人気取りのためだというのですから!月でナチスに捕らえられてしまった黒人宇宙飛行士は、白人になってしまう薬を投与されてしまいます。ナチスはユダヤ人迫害で知られていますが、黒人に対しての差別も強いものでした。ただ、黒人が白人にされてしまう設定って、アメリカ人(黒人、白人、どちらも)からすると、あまり心地よいものではありません。アルバイノの呼ばれる色素異常で黒人の血を引き継ぎながら色素のなく、ブロンドでブルーの瞳という黒人も存在するのですが(マイケル・ジャクソンも色素異常を主張していた)・・・非常にデリケートな問題です。真面目なドキュメンタリー報道番組でも取り扱われることも殆どなく・・・白人が黒塗りで黒人になる、または、黒人が白塗りで白人になるというのは、ジョークにしてもギリギリなような気がします。

アメリカ側の参謀たちは、妙にセクシーな若者ばっかり・・・司令官となる女性はみてからに品がなく、黒いラバースーツに身を包んで羽根を背負って宇宙戦艦で指示を出しているのは、まるで悪役にしか見えません。「第一期で戦争を始めた大統領は第二期にも再選されるわ~」と”ナチス”のニューヨーク襲撃を大歓迎・・・「オーストラリアとか爆弾投下する必要がなくなったわ」とは、なんとも不謹慎。国際会議で勝手に”ナチス軍”と戦争を始めたことを突っ込まれると「約束破るのは、アメリカのいつものやり方よ」と開き直る始末。北朝鮮が「我々の仕業だ~!」と悪ぶってみても「おまいらに、そんな技術はないよ」と、誰にも相手にされません。日本なんて、それ以前に存在感なしですが・・・唯一、アメリカの言うことを聞かずに戦争に参加しないのが、フィンランドというところは、監督の母国へのリスペクトなのでしょうか?

ここからネタバレを含みます。

ただ、おバカなパロディ映画にしては、宇宙の戦闘シーンはしっかりと作られております。明らかにエンタープライズ号を意識したコックピットに、スターウォーズっぽい音楽・・・ただ、ナチスは宇宙船まで開発しているくせに、コンピューター技術は遅れていてスマートフォンとか信じられないというありさま。結局、アメリカ軍がナチス軍を制圧するのですが・・・月面には人類の夢のエネルギー/核融合に必要なヘリウム3の鉱山がナチス軍によって発見されていた事がが分かると、その利権をアメリカが勝手に主張し始めます。結局・・・世界各国が利権を争って戦い、地球の国々は自爆してしまうのですから、なんという皮肉。その時に流れるのがアメリカ国歌というところは、かなり意地悪い・・・アメリカで人気なかったのも納得です。ナチスの女性司令官と黒人宇宙飛行士(白人から黒人に戻って)が、月に残されたナチスの基地で結ばれるというハッピーエンドなのか分からないエンディングも、ハリウッド映画とはひと味違います。B級映画のパロディと全世界を敵にまわすような政治風刺の好き放題っぷりが、”あっぱれ”な作品なのでした。




「アイアン・スカイ」
原題/Iron Sky
2012年/フィンランド、ドイツ、オーストリア
監督 : ティモ・プオレンソーラ
出演 : ジュリア・デーツ、クリストファー・カービー、ゲッツ・オットー、ペータ・サージェント、ステファニー・ポール、ウド・キアー

2012年9月28日より日本公開


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