2019/06/20

愛しのフランコ・ネロ様♥に萌えるエロティックな出演作!~「怪奇な恋の物語/Un Tranquillo Posto Di Campagna」「ザ・ヴァージン・アンド・ザ・ジプシー/The Virgin and the Gypsy」「スキャンダル/Lo Scandalo」「ザ・サラマンダー/The Salamander」「ファスビンダーのケレル/Querelle」「魔・少・女/ザ・ガール/The Girl」~


フランコ・ネロ様♥と言えば、1960年代~70年代に制作されたマカロニウエスタン作品が有名で、なかでも「続・荒野の用心棒/Django」のジャンゴ役で知られています。ボク個人的には「男の子映画」的なマカロニウエスタンやB級アクションモノよりも・・・ちょっとエロティックな作品が気になってしまうのです。

フランコ・ネロ様♥の存在を知ったのは、ティーンエイジャーの頃、ボロボロになるまで繰り返し繰り返し読んでいた映画のムック本に掲載されていた出演映画のスチール写真を見たのが最初だと思います。イタリア人独特のクッキリとした顔立ち、ギラギラと輝くブルーの瞳、不精髭と胸毛の男臭さに、すっかり魅せられてしまったのです。はっきり言って、純粋に”見た目”だけ。ただ、それほど好きだったのにも関わらず、わざわざ映画館に足を運んで観た作品というのは、ほんの数えるほどだったりもします。

地元の大学を辞めて、ミラノのピッコロ座(Piccolo Teatro di Milan)という有名なレパトリー劇団(日本でいうと文学座のような?)で演劇のイロハを学んだことから、フランコ・ネロ様♥自身は”演劇人”という意識があるようなのですが・・・特に演技派男優というイメージはありません。(と言って・・・大根役者ってわけでもありませんが!)

そもそも、ブレイクのきっかけとなった「続・荒野の用心棒」で抜擢された理由というのも、主役のジャンゴ役を演じるはずだった俳優が降板してしまったため、急遽、代役を探す羽目になっ製作陣が、フランコ・ネロ様♥のプロフィール写真の”顔”を気に入ったから・・・演技力とかは無関係だったらしいのです。奇しくもジャンゴ役が大当たりしてしまったフランコ・ネロ様♥は、ハリウッドで活躍する機会も与えられるものの、本人的には肌に合わないということでイタリアに戻り、マカロニウエスタンのスターとなったというわけであります。


「続・荒野の用心棒」公開された年、ミュージカル映画の大作「キャメロット」の制作現場で、フランコ・ネロ様♥は、バネッサ・レッドグレーブと出会います。フェミニストでリベラルな政治活動家としても知られるイギリス人女優と、イタリアの色男の男優という組み合わせは、少々意外にも思えるのですが・・・お堅いイギリス人女性が情熱的な恋愛相手として選ぶのは。イタリア人の色男と相場は決まっているところもあったりするので、実はこの上なく凡庸な組み合わせかもしれません。二人は子供をもうけたものの一旦別れてしまい、お互いに別な人と付き合ったりした後、晩年になって40年越しの愛を晩成させて2006年に結婚しています。

そんな二人が付き合い始めた時期につくられた共演作品が「怪奇な恋の物語/Un Tranquillo Posto Di Campagna」なのです。本作は、サイコミステリー仕立ての作品で、ボク個人的に印象に残ったのは、本作の冒頭のSMチックな幻想シーン。何故か、パンツ一丁の裸でロープで椅子に縛られているフランコ・ネロ様♥・・・胸毛を露わにした無防備な姿に、衝撃を受けた記憶があります。ただし、フランコ・ネロ様♥が脱いでいる(!)シーンはこれだけで、残りの本編は主人公が幻覚と現実に混乱していくという展開になっていくのです。

付き合い始めのカップルの共演作品として(幻想でもSMプレイというのは)なかなかエグい気がしてしまいます。晩年の二人が共演した「ジュリエットからの手紙」とは大違いです。若かれしフランコ・ネロ様♥の裸体を拝見できる貴重なの作品なのであります。(マカロニウエスタンでは脱がない・・・)


上流階級の娘とジプシーとの格差を超えた恋愛を描いたD・H・ロレンスの中編小説を映画化した「ザ・ヴァージン・アンド・ザ・ジプシー(原題)/The Virgin and the Gypsy」で、フランコ・ネロ様♥が演じるのは野性味のある性的魅力に溢れるジプシー・・・ぴったりの役であることは言うまでもありません。

性的に抑圧された上流階級の娘が、バケーションで片田舎を訪れるのですが、そこで屋敷近くに暮らすジプシーの男と惹かれてしまう・・・という”ロレンス”らしい物語です。おそらく、ケン・ラッセル監督による同じくロレンス原作の「恋する女たち/Women in Love」に便乗(?)して、企画されたと思われるのですが日本では未公開のまま(ビデオ化もされず)。性的な描写は控えめで、ロレンス的なテーマも無難にまとまっている”だけ”の作品なのですが、野性味溢れるフランコ・ネロ様♥の全裸ラブシーンという”ご褒美”があるのです。


30代半ば脂の乗り切ってきたフランコ・ネロ様♥が、フェロモン全開で臨んだのが「スキャンダル/Lo Scandalo」であります。当時、多く制作されていたイタリアの官能モノで、大学教授夫人で薬局を切り盛りするマダム(リザ・ガストーニ)を、性奴隷として虜にしていく使用人(下男)を演じるのがフランコ・ネロ様♥です。

下層階級の男が上流階級のマダムを性奴隷にしていくというのは、1974年(本作の2年前)リナ・ウェルトミューラー監督の「流されて・・・・/Swept Away」と似通っているのですが、第二次世界大戦下の戦況が悪化していくという刹那的なムードは、同じく1974年のリリアーナ・カヴァーニ監督による「愛の嵐/ The Night Porter」にも似ているところがあります。ただ、「流されて・・・」のような政治風刺やユーモアがあるわけでもなく、また「愛の嵐」のデカタンスを感じさせるわけでもありません。

あくまでも、本作の”売り”はリザ・ガストーニの(熟れたというよりも腐りかけた?)熟女ヌードで、フランコ・ネロ様♥の脱衣は皆無・・・・。「征服されていみたい」「服従してみたい」と思わせてしまう”非情などSっぷり”と、「なんか可愛らしい」「どこか許せてしまう」という”チャーミングな男臭さ”が同居していのは、フランコ・ネロ様♥が生まれ持った魔性なのではないでしょうか?


「ザ・サラマンダー(原題)/The Salamander」は、フランコ・ネロ様♥主演で、アンソニー・クィン、クリストファー・リー、クラウディア・カルディナーレら往年のヨーロッパスターたちが共演した作品であります。アクションスリラーとしては平凡な作品で、日本では劇場未公開。ビデオ/ブルーレイ化はおろかテレビ放映されたこともないようです。

殺人事件を捜査するフランコ・ネロ様♥演じるイタリア警察長官が、監禁されて拷問されるシーンがあるのですが・・・ジャックストラップ(日本のゲイには”ケツ割れ”と呼ばれているエッチな下着)を身につけただけの姿になってしまうのであります。それも、一部のゲイにはコアな人気を誇る(?)髭熊系のポール・L・スミス(1980年の「ポパイ」のブルート役)を相手にしたアクション!個人的には、数分間の二人が絡んでいるシーン(エッチではありませんが)以外は、どうでも良い映画だったりします。


ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「ファスビンダーのケレル/Querelle」は、公開当時(1982年)珍しかったゲイセックスを露骨に扱っていたアートフィルムこともあり、ゲイの観客を多くを集めていたことは言うまでもありません。

ケレルに密かに魅かれているクロゼット(カミングアウトしていない)ゲイの将校役を演じたフランコ・ネロ様♥は(演技とはわかっていても!)それまで多くのゲイのファン(ボクを含む)が妄想していた姿で、まるで「ポルノ映画」のよう。上半身裸で作業するケレル(ブラッド・デイヴィス)を司令室から眺めながらフランコ・ネロ様♥の手が自分の股間を弄るとか、「Young man needs boys with big dicks/若い男にはチンポのでかい少年が必要(直訳)」なんて卑猥な言葉を落書きしたり、ケレルへの思いが伝わった後にお互い強く抱擁し合うとか・・・マジで”鼻血ブーもの”だったのです。


多少頭髪も薄くなりかけて、すっかり”おじさん”になってきたフランコ・ネロ様♥が、娘ほどの年齢の少女に翻弄される「魔・少・女/ザ・ガール/The Girl」は、世界的にはマイナーな一作・・・1990年代に一度ビデオ化はされたものの、その後DVD化されることはなく、今では忘れ去られた作品かもしれません。

少女のクレア・パウニーが、それほど若くは見えなくて、ちょっと不潔な感じがするところが、まるでアダルトビデオ・・・。股間のモロ出しシーン(男女ともに)がある本作ではありますが、さすがにフランコ・ネロ様♥が股間を露わにすることはありません。しかし、必然性のあるなしに関わらず、妙にフランコ・ネロ様♥裸(上半身)になるシーンが多いのは、様々な方向性から(?)「エロティック」スリラーを意識してのことなのでしょうか?


「フランコ・ネロ」という俳優名を聞いて、40代以下の方には「ダイ・ハード2」や「ジョン・ウィック:チャプター2」に出てたおじさん?くらいの存在でしかないかもしれません。ただ、若い頃に夢中になったアイドルやスターを、いつまでも憧れの対象として崇拝しまうように・・・おじいちゃんになってもフランコ・ネロ様♥は、ボクの心をときめかすのであります。


「怪奇な恋の物語」
原題/Un Tranquillo Posto Di Campagna
イタリア/1968年
監督 : エリオ・ペトリ
出演 : フランコ・ネロ、バネッサ・レッドグレーブ、ジョルジュ・ジェレ
1971年11月20日、日本劇場公開


「ザ・ヴァージン・アンド・ザ・ジプシー(原題)」
原題/The Virgin and the Gypsy
イギリス/1970年
監督 : 
出演 : フランコ・ネロ、ジョアナ・シムクス、ホーマー・ブラックマン、マーク・バーンズ
日本未公開


「スキャンダル」
原題/Lo Scandalo
イタリア/1976年
監督 : サルヴァトーレ・サンペリ
出演 : フランコ・ネロ、リザ・ガストーニ、レイモン・ペルグラン、クラウディア・マルサーニ、アンドレア・フェレオル
1977年6月11日、日本劇場公開


「ザ・サラマンダー(原題)」
原題/The Salamander
アメリカ、イタリア、イギリス/1981年
監督 : ピーター・ツィイナー
出演 : フランコ・ネロ、アンソニー・クィン、クリストファー・リー、クラウディア・カルディナーレ
日本未公開


「ファスビンダーのケレル」
原題/Querelle
西ドイツ、フランス/1982年
監督 : ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演 : ブラッド・デイヴィス、ジャンヌ・モロー、フランコ・ネロ、ギュンター・カウフマン
1985年5月20日、日本劇場公開


「魔・少・女/ザ・ガール」
原題/The Girl
イギリス、スウェーデン/1986年
監督 : アルネ・マットソン
出演 : フランコ・ネロ、クレア・パウニー、バーニス・ステジャース、フランク・ブレナン、クリストファー・リー

日本劇場未公開、日本国内VHS発売あり




ブログランキング・にほんブログ村へ

2019/05/25

元祖”MGMの女王”は映画プロデューサーの奥さまなの!・・・ジョーン・クロフォードとの対比でみえるノーマ・シアラー(Norma Shearer)の”恵まれた女優人生”と”したたかな人生設計”~「マリー・アントワネットの生涯/Marie Antoinette」~


映画好きのアメリカ人の友人が「ノーマ・シアラー(Norma Shearer)が最近の一番のお気に入り!」と繰り返し賞賛するので・・・ジョーン・クロフォード”がらみ”で観たことのある「女たち/The Women」しか馴染みのなかったノーマ・シアラーの主演作を、現在視聴が可能な(DVD化などされていて)20数作を観てみてみることにしたのです。

ジーン・ハロウやグレタ・ガルボと同時期に、MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の”スター女優”であったノーマ・シアラーは、根っからの”ジョーン・クロフォードファンのボクからすると、ジョーン・クロフォードの所属していた映画会社のボスの妻という目障りな存在(笑)というイメージしか持っていなかったのですが・・・1920年代のサイレント時代から1940年代初頭までのハリウッド黄金期に活躍して、見事なまでの引き際の”ハリウッド女優”らしい女優さんであったことが改めて知ったのです。

1902年にカナダで生まれたノーマ・シアラーは、比較的恵まれた家庭環境で育つものの父親がビジネスで失敗して破産・・・離婚後、母親は映画ビジネスに関わっていた兄を頼ってニューヨークへ移り住みます。1920年頃から映画出演を始めるのですが、数年ほどはモデル等の仕事をしながら、主にB級映画にエキストラ出演するという下積み生活が続きます。


ノーマ・シアラーには”ガチャ目”気味という致命的な問題があったのですが・・・のちに夫となる映画プロデューサーのアーヴィング・タルバーグ(Irving Thalberg)がノーマ・シアラーに目を止めて、ルイス・B・メイヤーに推薦・・・ノーマ・シアラーはハリウッドに招かれて週250ドルで契約することになるのです。

アーヴィング・タルバーグは、1920年代から30年代に天才的な手腕を発揮した映画プロデューサー・・・エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督の「愚かなる妻」「グリード」、キング・ヴィダー監督の「ビック・パレード」「ハレルヤ」「チャンプ」、トッド・ブラウニング監督の「フリークス」など、錚々たる作品に関わっています。MGMが1930年代に巨大な映画会社となりえたのは、ルイス・B・メイヤー経営手腕だけでなくアーヴィング・タルバーグの映画製作のセンスと言っても過言ではないと言われるほど、業界的には力を持った人物です。

ハリウッドに到着の翌日、初めてアーヴィング・タルバーグと会ったノーマ・シアラーは、彼に一目惚れしたそうなのですが・・・そりゃあ、ハリウッドの到着したばかりの新人女優からしてみたら、これほど自分の女優としてのキャリアに”プラス”になる人物はいないわけでありますから、どんな手段を使ってでも誘惑したい相手であったことは言うまでもありません。

スクリーンテストで良い結果を残せず、映画監督からも容姿も演技もダメ出しをされていたにも関わらず、ノーマ・シアラーが映画会社からクビになることがなかったのは、アーヴィング・タルバーグの後ろ盾があったからだったとしても不思議ではありません。1924年4月、ルイス・B・メイヤーによって合併/設立された「メトロ・ゴールドウィン・メイヤー映画」所属の”スター女優”(主役の女優)として、ノーマ・シアラーは、週給1000ドルで契約することになるのです。

1904年(諸説あり)にテキサスで生まれたジョーン・クロフォードは、生まれた時には既に実の父親はおらず、義理の父親と共にオクラホマ州やミゾーリ州を転々としながら、働きながら学校に通うという貧困生活を強いられることになります。それでもダンサーになる夢を持ち続けて、ブロードウェイを目指してニューヨークに移り住み、バックダンサーとして働きながらスクリーンテストを受け続けます。1924年の12月、MGM所属のエキストラダンサーとして週給75ドルで契約することになるのです。

MGM社長のルイス・B・メイヤーによって招かれてハリウッド女優生活をスタートしたノーマ・シアラー。かたや、エキストラのダンサーの一人としてハリウッド映画界に足を踏み入れたジョーン・クロフォード・・・1924年の時点に於いて、二人の女優の格差は天と地ほどだったのです。


主演女優として活躍を始めたノーマ・シアラーの出演作品には、ジョーン・クロフォードがエキストラ出演することもありました。1925年の「Lady of the Night/夜の女」でノーマ・シアラーのボディダブルを務めたのは、無名時代のジョーン・クロフォードであったことは有名な話。ノーマ・シアラーが演じたのは双子の姉妹という設定で、二人がスクリーンに同時に映されるシーンで後ろ姿で出演しているのが、ジョーン・クロフォードでだったのです。この時の侮辱的な(?)経験がジョーン・クロフォードのライバル心に火を灯したのかもしれません。

サイレント映画全盛時代にノーマ・シアラーは”お嬢さま”役として、イメージの良いキレイな役どころを演じ続けるのですが・・・それには、アーヴィング・タルバーグの意向もあったと言われています。1927年、ノーマ・シアラーはアーヴィング・タルバーグと結婚。アーヴィング・タルバーグはノーマ・シアラーに専業主婦になることを望んだそうですが、ノーマ・シアラーは女優を続けることを望み、より良い役を得ることに固執し続けたそうです。人気女優の確立できたのも、映画会社の幹部の妻であるからこそと言えるでしょう。


一方、サイレント映画末期にジョーン・クロフォードはフラッパーダンサー役でブレイクして、その後「Rugs to Riches」と呼ばれる成金物語のシンデレラガール的な役を演じて人気を博す”スター女優”となります。監督、脚本家、撮影監督などと肉体関係を持って自分を売り込み、エキストラのダンサーから主演女優へと成り上がったジョーン・クロフォード自身を体現するような役柄で知られたわけで・・・「蝶よ花よ」と”お嬢さま”扱いで売り出されて、映画会社の幹部の”奥さま”に収まったノーマ・シアラーに良い役が与えられると、腹わたの煮え返る思いであったと言われています。1929年、ジョーン・クロフォードはダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォードの息子ダグラス・フェアバンクスJr.と結婚・・・ハリウッドのロイヤリティーファミリーと一員となり、まさに底辺から成り上がったのです。

その後、1930年代に入るとサイレント映画からトーキー映画へなっていくのですが、ノーマ・シアラーもジョーン・クロフォードも無事移行に成功・・・2人ともMGM映画の看板女優として活躍し続けます。

1930年、ノーマ・シアラーは「結婚双紙/The Divorcee」で、アカデミー賞主演女優賞を受賞。浮気や離婚を赤裸々に扱ったヘイズコード以前の作品で、ヒロインは性的にリベラルな都会的な女性だったので、夫のアーヴィング・タルバーグはノーマ・シアラーが主演することには反対だったそうです。ただ、それまでの”お上品”で”好感度の高い役柄から脱皮したという意味では、一皮剝けたと言える作品であったかもしれません。その後のノーマ・シアラーは、映画会社の幹部夫人という恵まれた立場を十二分に利用しながら、女優生活を送り「MGMの女王」として君臨するのです。

1930年代のハリウッド黄金期においてのジョーン・クロフォードの活躍を説明する必要がないとは思いますが・・・クラーク・ゲーブル(めのおかし参照)をはじめ、当時の名だたるスター男優との数々のヒット作品に恵まれて、女優の中では最高金額の出演料を受け取るまでになります。ハリウッドという業界で成り上がりきったら、ダグラス・フェアバンクスJrとは離婚して、東海岸の良家出身のフランチョット・トーンと再婚・・・10年前には手の届かない存在だったノーマ・シアラーとジョーン・クロフォードは、ある意味並ぶ存在にはなったのです。、

ノーマ・シアラーは、賢く良作を選んで、マイペースで女優業を続けます。レスリー・ハワードと共演した1936年の「ロミオとジュリエット」はジョージ・キューカー監督による大作で、プロデューサーは勿論、夫であるアーヴィング・タルバーグであります。ただ、32歳のジュリエットと39歳のロミオは年齢的に厳しかったことは否めません。


「ロミオとジュリエット」に続く超大作として、ノーマ・シアラー主演で「マリー・アントワネットの生涯/Marie Antoinette」の制作準備中、元々病弱であったアーヴィング・タルバーグは37歳という若さで亡くなってしまいます。後ろ盾を失ってしまったノーマ・シアラーでありましたが、その後もMGM映画からは”元”幹部夫人として、丁重に扱われ続けたと言われています。アーヴィング・タルバーグの死後も制作が続けられたのが、1930年代に制作された映画の中で「風と共に去りぬ」の390万ドルに次ぐ制作費292万ドルをかけた「マリー・アントワネットの生涯」なのです。

何と言っても、衣装にお金をかけすぎて・・・当時高価だったカラーではなく白黒で撮影することになってしまったというのですから、本末転倒であります。ただ、衣装の豪華さは白黒であっても空前絶後。なんとか制作費を工面してカラー映画として完成することができていたなら、もっと映画史に残る作品になったのではないかと思ってしまいます。白黒映画のカラー化には反対の立場のボクですが、本作に関しては製作時のカラーを正確に再現できるのであれば、是非カラー化して欲しいです。


タイトル通リ・・・シュテファン・ツヴァイクの伝記をベースに、オーストリアの少女時代からフランス王妃として処刑されるまで、マリー・アントワネットの生涯を”悲劇のヒロイン”として描く本作。ベルサイユ宮殿の敷地で、撮影が許可された最初の映画でもあります。ノーマ・シアラーの体だけ小柄にする撮影方法で、14歳の少女らしさを演出しているのは見事です。「ベルサイユのばら」でも有名なフェルセン伯爵との切ない恋も描かれるのですが・・・フェルセン伯爵役が顔の濃~い若き日のタイロン・パワーだったりするのは、ご愛嬌(?)かもしれません。

処刑される前夜のルイ十六世と子供たちとのささやかな団欒、処刑直前にやつれきった姿でのフェルセン伯爵との再会、そして処刑台に向かっていく弱々しい姿・・・エンディングに向けて、これでもかと悲劇が盛り上がります。本作後、様々なマリー・アントワネットが映画の中で描かれましたが、本作が最もマリー・アントワネット側に寄り添っているかもしれません。

ノーマ・シアラーが「マリー・アントワネットの生涯」で、女優として頂点を極めたころ・・・ジョーン・クロフォードは「ボックス・オフィス・ポイズン/Box-Office Poison」=「興行成績の振るわないスター」というレッテルを貼られてしまいます。いつまでもシンデレラガール役を演じられる”娘”というわけでもありません。そこで、ジョーン・クロフォードは「イメージチェンジ」という大胆な戦略をとるです。


それが、ノーマ・シアラーとジョーン・クロフォードの唯一の共演作品「女たち/The Women」であります。この作品については以前、めのおかしブログで書いているので、詳しくはそちらを読んでください。(めのおかし参照)

ノーマ・シアラーが演じるのは、浮気されてしまう上流階級夫人という・・・いわゆるノーマ・シアラー”らしい”集大成的な役柄です。逆にジョーン・クロフォードが演じるのは、1940年代に演技派へと移行する布石ともなる浮気相手の”悪女役”・・・一応、主演はノーマ・シアラーなのですが、脇役のジョーン・クロフォードが映画を食ってしまったと言えるかもしれません。

「女たち」後、ジョーン・クロフォードは試行錯誤はするものの1945年の「ミルドレッド・ピアーズ」で念願のアカデミー主演女優賞を受賞して、その後数十年スター女優であり続けます。一方、ノーマ・シアラーは、1942年の「Her Cardbox Lover」(ジョージ・キューカー監督、ロバート・テイラー共演)を最後に女優引退します。アーヴィング・タルバーグという後ろ盾を失った後、良い役柄が永遠に与え続けられるわけもなく、40歳を過ぎてスター女優で居続けることにも限界を感じていたのかもしれません。何が何でもスターの地位に居座ろうという欲もなく、見事な引き際だったように思えます。ジョーン・クロフォードが、最後の最後までスター扱いされることを求めたのとは真逆です。


スキーインストラクターで11歳年下のマーティン・アロージュ(Martin Arrougé)氏と再婚してからは、チャリティなーなどの公なイベントには姿を見せるものの、ハリウッドの社交界からは一線を引いていたと言われています。その後の映画やテレビへの出演依頼に応えることもなく(ラジオ出演はあり)、1960年以降は公の場に姿を現すこともなく、1983年に81歳で亡くなるまで余生をマーティン・アロージュ氏と過ごしたそうです。

女性の生き方として、ノーマ・シアラーの人生は”ある意味”理想的だったように思えます。父親の破産という不幸なことが少女時代にあったものの、女優のキャリアをスタートして直ぐに映画プロデューサーに見初められて結婚してスター女優となり、恵まれた状況で華やかな女優生活を謳歌します。後ろ盾だった夫とは死別してしまいますが、女優としてやり切って引退、映画界とは無縁の年下男性と再婚して静かに余生を過ごす・・・文句のつけようがありません。そこに”したたかな人生設計”があったか否かは分かりませんが、数多いハリウッド女優の中でも、特に恵まれた人生を送ったことは間違いないと思います。

女優としての生き様として興味深いのは、当然ジョーン・クロフォードなのですが、ひとりの女性としての幸せな人生として考えると・・・ノーマ・シアラーに軍配が上げざろうえないのです。


「マリー・アントワネットの生涯」
原題/Marie Antoinette
1938年/アメリカ
監督 : W・S・ヴァン・ダイク
出演 : ノーマ・シアラー、タイロン・パワー、ロバート・モーレイ、ジョン・バリモア、アニタ・ルイーズ、ジョゼフ・シルドクラウト。グラディス・ジョージ、ヘンリー・スティーブソン、アルマ・クルーガー
1966年6月21日より日本劇場公開




ブログランキング・にほんブログ村へ

2019/04/18

「何がジェーンに起ったか?/What Ever Happened to Baby Jane?」のドロドロな舞台裏を描くテレビシーリーズ・・・「愛と憎しみの伝説/Mommie Dearest」で地に堕ちたジョーン・クロフォードの汚名の払拭に涙が止まらない!~「フュード/確執 ベティ vs ジョーン/Feud : Bette and Joan」~


「glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」などのプロデューサーとして知られるライアン・マーフィーが手掛けたテレビシリーズ「フュード/確執 ベティ vs ジョーン/Feud : Bette and Joan」は、ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードが初共演した「何がジェーンに起ったか?」の映画製作の舞台裏を描くということで、ジョーン・クロフォードの大ファン(勿論ベティ・デイヴィスも大好き)のボクとしては、何が何でも見逃すことができないと非常に楽しみにしていたのであります。けいたいおかし参照)

しかし・・・日本では”スターチャンネル”(ボクは契約してない)での独占放映(2017年9月29日~)。それならば、アメリカ本国でDVD/Blu-ray化されるか、Netflixなどの配信を待とうと思っていたところ・・・本作に登場するオリビア・デハヴィランドご本人(101歳でご存命)が「無断で作品に使用された!」とクレームを入れて裁判沙汰に・・・その後に訴えは却下されたものの、DVD/Blu-ray化はお蔵入りのまま。ただ最近、ジョーン・クロフォードのファンサイトでエミー賞投票者向け(Fot Your Consideration=FYCという非売品)DVDセットが、アメリカのオークションサイト”eBay”で出品されていることを知って、先日(結構な高額で!)無事に落札!遂に「フュード/確執 ベティ vs ジョーン」を観ることができたのです。


伝説的に語り継がれるベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの確執は、二人が生まれたときから始まっていたと言っても良いのかもしれません。生まれてすぐ実の父親に捨てられた上に義父に手篭めにされたジョーン・クロフォードは、フラッパーダンサーからハリウッド女優に成り上がった”叩き上げ”女優。共演した男優は勿論、映画監督、照明や撮影のスタッフとも肉体関係を結んで、キャリアを築き上げていったと言われています。1930年代には美貌の”スター女優”として上り詰めるのです。

一方、父親とは不仲だったベティ・デイヴィスは、若くしてブロードウェイで頭角を現してハリウッドの招かれた”演技派”女優であります。歌になるほど(キム・カーンズの「ベディ・デヴィスの瞳)特徴的な瞳をもつベティ・デイヴィスは、一般的に”美人”というわけではありませんが、演技力は折り紙つき。外見を気にせず役柄になりきって、20代で二つのオスカーを受賞してハリウッドで最もリスペクトされる女優となります。


同時期に”ハリウッド女優”として活躍したベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの女優としてのスタンスは「水と油」で、常にお互いをライバル視する運命にあったのです。

本作は、往年のハリウッド女優オリビア・デハヴィランド(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とジョーン・ブロンデル(キャシー・ベイツ)が、ジョーン・クロフォードの死後の1978年にジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスについてインタビューで語る場面(1978年にイギリスBBC制作の番組『The Hollywood Greats』を元ネタにした架空のテレビドキュメンタリー)と、「何がジェーンに起ったか?」の舞台裏からその後を描く物語が、行き来しながら進行していきます。二人の女優としてのキャリアやゴシップ的な数々の逸話をインタビューという形で語らせることで、ジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスについて詳しく知らない視聴者にも時代背景が理解できるという構成となっているのです。

ペプシコーラ社長の夫と死別したジョーン・クロフォードが女優としての再起を狙って自ら企画を探すというところから本作の物語は始まり、ジョーン・クロフォードの死後に登場人物たちが彼女に思いを寄せる場面で終わることから・・・本作の「主役」はジェシカ・ラング演じる”ジョーン・クロフォード”であると思います。


ジェシカ・ラングは「アメリカン・ホラー・ストーリー」の常連キャストでもあり、”ジョーン・クロフォード”を演じるのに相応しい女優であることに間違いありません。ただ、生涯スレンダーな体型を維持して美貌を保ち続けたジョーン・クロフォードと比較してしまうと、ジェシカ・ラングの”恰幅の良さ”や”ナチュラルな老け具合”は目についてしまいます。


逆に、ベティ・デイヴィスを演じるスーザン・サランドンは本人よりスラっとした美人なので、二人の確執の要因のひとつであった「ジョーン・クロフォード=美貌のスター女優だけど演技の才能には欠ける」「ベティ・デイヴィス=個性的なルックスで美人ではないけど演技力は抜群」という二人の個性が薄れた印象は否めません。・・・とは言っても、ベティ・デイヴィスを違和感なく演じきったスーザン・サランドンもさすがです。

本作で再現されたシーンと実際の映像を比較している動画があるのですが、本物のベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの持つ「顔のパワー」には圧倒されます。


冒頭のインタビューシーンでオリビア・デ・ハヴィランドが語る「確執は決して”憎しみ”ではなく”痛み”なのです。/FUEDS are never about HATE. FUEDS are about PAIN」というのが本作の本質かもしれません。

同じ映画会社に所属しながら一度も共演することのなかったベティ・デイヴィスを担ぎ出したのは、誰あろうジョーン・クロフォード・・・露骨にライバル心を燃やしながらも歩み寄り、”若くない女優”を蔑ろにするハリウッド体質にタッグを組んで戦っていく様は、”フェミニズム”的なテーマでもあります。また、単に「確執のある女同士の戦い」という一層的な物語には終わらせてることはなく、映画会社の幹部などの一部の男性による支配から生み出されていた”不条理さ”は「#MeToo」運動に繋がっているようにも感じます。

ベティ・デイヴィスだけがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたことで確執をさらに深めていく”くだり”や、「血だらけの惨劇」(めのおかし参照)などのサイコ・ビディ(Psycho-Biddy)と呼ばれる一連の熟女ホラー映画の再現は「おキャンプ」好きも満足させる作りとなっているのです。

本作では、ベティ・デイヴィスは従来のイメージどおり”強気”に(子供たちとの関係においての孤独感あるもの)描かれているのですが、対照的にジョーン・クロフォードには寄り添っているように感じます。二人が再び共演するはずだった「ふるえて眠れ」でのジョーン・クロフォード降板の顛末は、ジョーン・クロフォード側に同情的な視点で描かれますし、”プライドの高さ”に反しての”人間的な弱さ”もリスペクトを持って描かれているように思うのです。亡くなる直前、ジョーン・クロフォードの幻想の中で、ベティ・デイヴィスとの間に友情を結ぶのは”フィクション”ではありますが、それが”ジョーン・クロフォードの本望”であったような気がしてなりません。

ジョーン・クロフォードの死後、養女のクリスティーナ・クロフォード(本作には登場しない)が1978年に出版した暴露本「親愛なるマミー・ジョーン・クロフォードの虚像と実像/Mommie Dearest」と、それを原作にした1981年の映画「愛と憎しみの伝説/Mommie Dearest」(めのおかし参照)によって、ジョーン・クロフォードのスター女優としての輝かしい功績は「養子虐待女優」というレッテルを貼られて、とんでもないほど地に堕ちてしまったわけですが・・・本作で描かれるジョーン・クロフォードの姿によって、約40年ぶりに”その汚名”を少しでも払拭できたのではないでしょうか?

ジョーン・クロフォードの”いちファン”として涙が止まりません。


「フュード/確執 ベティ vs ジョーン」
原題/Feud : Bette and Joan
2017年/アメリカ
製作総指揮: ライアン・マーフィー他
演出   : ライアン・マーフィー
出演   : ジェシカ・ラング、スーザン・サランドン、ジュディ・デイヴィス、アルフレッド・モリナ、スタンリー・トゥッチ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、キャシー・ベイツ
2017年9月29日よりスターチャンネルにて日本独占放映

ブログランキング・にほんブログ村へ