2017/01/19

エディナとパッツィーの”ひとでなし”っぷりが相変わらずの映画版「アブ・ファブ」・・・ラフトラック(Laugh track=録音笑い)はブラックな笑いには不可欠かも?~「アブソリュートリー・ファビュラス・ザ・ムービー(原題)/Absolutely Fabulous the Movie」~


1992年からイギリスBBCで放映された「アブソリュートリー・ファビュラス/Absolutely Fabulous 」(通称:アブ・ファブ/Ab Fab)は、2000年代初めにも日本でもレンタルショップから火がついたシットコム/Sitcom(コメディドラマ)であります。主人公のエディナ(ジェニファー・サンダース)がプレス・エージェント、エディナの親友パッツィー(ジョアンナ・ラムリー)がファッション誌のディレクターという設定ということもあり、特にファッション業界人の中では大変人気があったのです。



そもそも「アブ・ファブ」は、コメディアン兼コメディライターのコンビであるジェニファー・サンダースとドーン・フレンチの「フレンチ・アンド・サンダース/French and Sanders」というコメディ番組が元ネタ・・・キャラの濃い”あるある”ネタや、映画のパロディで知られる本番組のシーズン3(1990年放映)エピソード6の「モダン・マザー・アンド・ドーター/Modern Mother and Daughter」というスケッチで演じられたキャラクターから派生しています。


ファッション・ヴィクティム(すでに死語?)で自己チューな母親エディナと、保守的で極々フツーなティーンエイジャーの娘サフロンの対比が、当時は「モダン=今どき」の”あるある”ネタであったのかもしれません。「アブ・ファブ」の主人公エディナ・モンスーンは、常にダイエットに励んでいるキャラクターという設定なので・・・シリーズ化となる際、ジェニファー・サンダースより太っているドーン・フレンチが娘役であるよりも、より普通っぽいジュリア・サワラの方が適役と判断されたようであります。

さらに、エディナに輪を掛けてぶっ飛んでるアル中でドラッグ中毒(?)の親友パッツィーが加わったことで、大ヒットに繋がったのではないでしょうか?放映開始時のジェニファー・サンダースは若干34歳(年齢設定は40代!)で、娘役のジュリア・サワラは24歳・・・エディナと同世代という設定のパッツィーを演じていたジョアンナ・ラムリーの実年齢は、なんと46歳です。


ジョアンナ・ラムリーは、元モデル(ジーン・ミュアのハウスモデルを務めたこともある)で、「女王陛下の007」(1969年)でボンドガールを務めたセクシー系女優・・・「アー・ユー・ビーイング・サーブド?/Are You Being Aerved?」で、コメディ演技にも開眼(?)、1970年代~80年代は主にイギリスのテレビで活躍します。「アブ・ファブ」で世界的に大ブレーク後は、映画にも活躍の場を広げて”コメディ”演技に磨きが勝かかったようです。また、ネパールの「グルカ兵正義キャンペーン」や先住民族をサポートする「サバイバル・インターナショナル」など、さまざまな人権運動の活動家としても知られています。

1992年から1995年から(1993年には制作されず)の3シーズンの後、2001年に第4シーズン、2004年に第5シーズン、1996年から2012年の間にもスペシャル版が制作されるなど、息の長~いイギリスのコメディシリーズです。そして2016年、満を持して(?)映画化となったわけなのであります!

ファーストシーズンから約25年経った今でも、主人公を演じている二人の印象が殆ど変わらないということが一番の驚きです。相変わらずスレンダーな体型のジョアンナ・ラムリーは、現在、御年70歳!!!・・・ジェニファー・サンダース(50代後半の)との年齢差を感じさせません。


さて、本作「アブソリュートリー・ファビュラス・ザ・ムービー(原題)」は、良くも悪くもテレビシリーズの延長上です。ファッション界で働く(?)女性二人の主人公のコメディではありますが、いわゆる”キューティー映画”とは違います。イギリスの伝統(?)でもあるブラックな笑いのコメディで、日本のコメディにありがちの「実はいい人」とか「エンディングに感動」というウェットな”落としどころ”はありません。一歩間違えば人権を侵害しかねないようなギリギリのユーモア/ギャグ炸裂して放置・・・と、結構、辛口/毒舌でもあるのです。

映画版では全体的にゴージャスな作りとなっているのですが・・・テレビのスペシャル版でもお馴染みの海外ロケ(本作では南仏地方)、ファッションジャーナリストのスーザン・マンキーズ、ミック・ジャガー元妻で元モデルのビアンカ・ジャガー、イギリスの女装コメディアンのデーム・エドナ・エヴェレイジ、ファッションデザイナーのステラ.マッカートニーとジャン=ポール・ゴルティエ、アメリカ女優ジョーン・コリンズなどファッション業界やエンターテイメント界からのカメオ出演、そして、さまざまな映画へのオマージュなども”みどころ”ということになります。


スーパーモデルのケイト・モス(ケイト・モス自身が出演!)が、新しいプレスを探しているという情報を得たエディナが、ファッション界のパーティーに乱入して、誤ってケイトを川に突き落としてしまい、フランスへ逃亡するというドタバタ劇というのが、本作のプロットなのでありますが・・・エディナとパッツィーの”ひとでなし”(?)っぷりは相変わらずです。オリジナルシリーズ放映当時は、イギリスらしい境界線ギリギリのブラックな笑いが、まさに”ツボ”だったわけですが・・・いろんな意味で、世情が変化した”今”改めて観てみると、ちょっと笑えないような気がしてしまうのはボクだけでしょうか?

エディナやパッツィーの行動や発言は、ぶっ壊すべき”ダサい”保守”が大きな存在感のあった時代だからこそ、笑いとして受け入れられたような気がするのです。単純な”保守”と”革新”という区分けは難しい”今”の時代に於いて、”ポリティカリー・コレクトネス”に欠けた笑いは、面白がってしまうことに対して、どこかしら居心地の悪さを感じさせてしまうのかもしれません。パッツィーが男装して世界で一番金持ちの未亡人を遺産目当てで誘惑して、結婚するという「お熱いのがお好き」の逆張りのドタバタを繰り広げるのが本作の山場なのですが・・・あまりにも短絡的な詐欺行為(?)に、正直いって爆笑とはならないのです。


テレビシリーズと映画版の大きな違いが、ラフトラック(Laugh track=録音笑い)の存在・・・シットコム黎明期から使われてきたラフトラックは、視聴者の笑いを促す”呼び水”として有効な方法であります。「アブ・ファブ」のテレビシリーズでもラフトラックが使われており、眉をひそめるようなブラックな笑いも、ついつい釣られて苦笑い・・・なんてことも多々あったのです。ところが映画版にはラフトラックはありません。そのため、ブラックな笑いが、少々”空回り”気味になってしまった気がします。

と言いつつも・・・オリジナルのテレビシリーズからの往年のファンにとっては、ずっと変わらないエディナ・モンスーンとパッツィー・ストーンに会えることは”喜び”以外何物ではないのであります。


「アブソリュートリー・ファビュラス・ザ・ムービー(原題)」
原題/Absolutely Fabulous the Movie
2016年/イギリス
監督 : マンディー・フィッチャー
脚本 : ジェニファー・サンダース
出演 : ジェニファー・サンダース、ジョアンナ・ラムリー、ジュリア・サワラ、ジェーン・ホロックス、ジューン・ウィットフィールド、ケイト・モス
日本未公開

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