2009/08/29

底なしの自己過大評価の果て・・・~「新・資本論」堀江貴文著



ホリエモンのことは、数年前に世間でもてはやされている時代も、決して好きではありませんでした。人間の卑しい欲望を上手具合に刺激して私腹を肥やす不当な行為を正当化するような”品の悪さ”を感じていたのです。それにも関わらず、本屋で平積みになっていた彼の本を手に取って買ってしまったのは、今さら何を彼は語っているのだろうか・・・という疑問があったからかもしれません。

突っ込みどころ満載のこの堀江本「新・資本論」は、本屋のコーナーとしては「ビジネス新書」ということなんだろうけれど、内容的にはホリエモンというキャラクターの書いた「芸人本」といった印象でした。
読み進めていくうちに、ホリエモン独特の論理に大笑いさせられてしまったのです。
彼曰く、困ったときには食事を食べさせてくれたり、部屋に居候させてくれたり、行きたい場所があれば車で送ってくれる人がいるというのは、自分という人間に対しての「信用」があるからであり、その「信用」が経済的な価値を生み、その人脈がさらなる成功へ繋がっていくものだ・・・ってことを力説するんだけど、これこそホリエモンの神髄だと思います。
一般的には、こういう人を「他人を利用する奴」「ただ乗りする奴」ってことで、うざくて敬遠される人物なのに、それを「自分は人から信用があるから」と解釈して、堂々と公言できてしまう傲慢な性格が、まさにホリエモンらしさなのかもしれません。

副題に「僕はお金の正体が分かった」とありますが、これって彼自身が信じ込んでいる「お金の正体」であるだけで、それは彼の行為を正当化するのに都合のいい解釈でした。
彼はライブドア株の常識を逸した分割によって、球団を買収したり、メディア株を買い占めたり、宇宙ビジネスの資金となった膨大な資金を作り出しました。
それは、投資のバブルで楽して儲けたいという人間の卑しい欲望を上手に刺激した詐欺紛いの手法によってです。
しかし、彼はそうやって分割で単価を安くした株によって、人々の投資に関する興味を刺激して、経済を身近な問題としてより多くの人に教えることができたと自負してしまうのです。
地道に住宅ローンを組んで家を購入することが、彼の言う「信用」をまったく築かない無駄なことだと蔑みながら、自らの能力をレバレッジして売り込むことでお金を生むことができるというのは、まさに詐欺師のハッタリといった言い草としか思えませんでした。
ここまで、自身の可能性と能力を過大評価して宣伝すれば、騙されてお金を出してしまう人(信用ではなくて、楽して儲けようという卑しい人)というのは存在するのかもしれません・・・。

ホリエモンは何があっても、きっと彼の人間性を変えることはないでしょう。
どんなに痩せても彼はリバンウドするように・・・そして以前よりさらに太るように、自己評価はますます大きくなっていくのだと思います。
ただ、ホリエモンのような人物が経済というお金に関わる世界(最近は何かと政治の世界にも口は出しているようだけど)で言いたい放題というのは、ある意味救いだと思います。
彼が「精神」や「心」のことを同じ調子で語ることが出来たなら・・・今にも「ハルマゲドン」が起こると説いたなら・・・もしかすると麻原彰晃のようなカルト集団の教祖となっても不思議ではないからです。
ホリエモンの訴えたいことには全然興味はないけど、こういう人物が5年後、10年後にどうなっていくのかは見届けたい・・・と、だけは思うのです。



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