3月11日の東北関東大震災は映画にも影響を及ぼしています。震災発生時、すでに公開中(2011年2月19日公開)であったクリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」は映画冒頭の大津波のシーンが、震災の状況を連想させるという配慮によって上映中止となりました。ボクはアメリカ版ブルーレイで観たのですが・・・三陸沖の大津波もこんな感じではなかったのかと思えるほどリアルな描写で、実際に津波の被災者でなくても気分は重くなりました。
「唐山大地震ー想い続けた32年ー」も劇中に唐山大地震と四川大地震をリアルに再現したシーンがあることから、公開を延期した作品のひとつです。奇しくも・・・東北関東大震災で唯一死亡者が出る被害を出した九段会館にて、20011年3月11日の夜に試写会が予定されていたということなので。何やた因縁じみた不運さえ感じてしまいます。
そう言えば・・・2009年の韓国映画で「TUNAMIーツナミー」という映画もありました。WOWOWでの放映(20011年4月23日予定)は自粛となりましたが、現在もDVD販売/レンタルされています。メガ津波が押し寄せるまで日常生活を丁寧に描く人間ドラマが売りであったようですが、やはり見せ場はメガ津波(高さ100メートル!高層ビルをも一気に飲み込むほど!)が釜山を襲うシーン。また、メガ津波の発生のメカニズムが描かれているわけではないので、ヒューマンドラマの感動を謳いながらも、所詮は「パニック映画」でありました。
さて「唐山大地震ー想い続けた32年ー」ですが、こちらは地震災害の描写”だけ”を売り物にした「パニック映画」ではありません。確かに、冒頭の唐山大地震のシーンでは、建物の崩壊で圧死していく被害者、街全体が瓦礫と山となっていく様子を「これでもか!」と映し出しています。しかし、この悲劇的な状況が、母親と娘の因縁の物語の発端となるわけで被害の悲惨さは物語の大事な要素でありますし、感情を表さない日本人とは違い、中国人はかなりエモーショナル・・・悲劇にドドーっと引き込まれてしまいます。
瓦礫の下で生きている子供たち(息子と娘)・・・何とか二人とも救いたい母親に、究極の選択が突きつけられます。大きな瓦礫が二人の子供の上に乗っかっているので、助けることのできるのは息子か娘のどちらか一人・・・すぐにでも救助しなければ二人とも死んでしまうかもしれないという切羽詰まった状況で、母親はどちらかを見捨てなければなりません。「二人とも助けて~!」と繰り返し泣き叫ぶ母親・・・しかし、それは出来ません。躊躇しながらも「息子・・・」と答える母親。そして、その母親の言葉を瓦礫の下で聞いて涙する娘。結局、息子は何とか助かったものの片腕を失うことになります。夫の実家に自分だけ五体満足に生き残った事を責められ、娘を見殺しにしたこことを悔やみながらも、母親は救った息子を立派に育てて行こうと決心するのです。
母親に選ばれなかった娘は。瓦礫の下から引き出されて死体置き場に並べられているのですが・・・奇跡的に息を吹き返します。そして共産党の軍人夫婦に拾われ自分の名前を捨て新しい家族の養女として育っていくのです。そして、母親に見捨てられたことを忘れることが出来ぬまま生きていくのです。この映画が開始して現れる「23秒。32年」というテロップの意味は・・・たった「23秒」の唐山大地震で別れた母と娘が、再会まで過ごした年月が「32年」であったということが重くのしかかります。本作のように”ドストライク”で泣かせてくれる映画って時には必要・・・涙枯れるまで泣かせてくれました。
これほど王道の大河メロドラマを、ここまで予算と手間をかけて大掛かりに製作してしまうなんて・・・さすが経済成長の著しい中国ならではという気もしました。日本で同じような映画を作っても、感動だけを売り物にした薄っぺらくなるでしょう。また、大地震からの復興を現代史になぞって描きながらも・・・”プロパガンダ映画”にしなかったのも、新しい中国を感じさせました。
「唐山大地震ー想い続けた32年ー」
原題/唐山大地震 Aftershock
2010年/中国
監督 : フォン・シャオガン
出演 : シュイ・ファン、チャン・チンチュー、チャン・ツィフォン
2015年3月14日日本劇場公開
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