現在、六本木で開催されている二つの展覧会は、デザインの「未来」「時代」「流行」という質疑応答のように感じさせられました。
順路としては、東京ミッドタウンの21_21で行われている「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展を先に観てから、歩いて数分にある国立新美術館で開催されているルーシー・リー展を訪れることを、絶対にお奨めします。
「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展は、トレンド予測の第一人者リー・エデルコート氏のディレクションによる、21世紀のデザインを示唆するプロダクトデザインを集めた展覧会です。
植物にみるデザイン性を追求したマガジン「bloom」カラーとデザインの関わりを再考した雑誌「View On Clolour」やプロのためのトレンド予測レポートの「Trend Book」にて、インスピレーションを発信し続けているエデルコート氏については、それほど詳しく知りませんでしたが・・・いわゆるクリエーターの「虎の巻」を提供している存在なのであります。
ある日本を代表するファッションデザイナーの感性のルーツのようなディレクションからは、リー・エデルコート氏の水面下での影響力は、実は非常に大きいものだと感じさせられました。
近代以降のデザインって、常に「ポストなんとか」ということで、結局のところクリエーター達は「批判」と「提唱」を繰り返しながら「これは新しい」「これは古い」などと、やってきたわけです。
さて「ポスト・フォッシル展」は、その言葉のごとく「ポスト化石」なわけですが・・・それは、有機的な形状と現在のテクノロジーを融合させた「次」のコンセプチュアルデザインとでも言うのでしょうか?
動物の骨格を連想させる椅子。ヒーターにかけられた毛皮。溶岩や岩石のよ表面のような家具。原始生物のように浮かぶ照明。
装飾性でもなく、グラフィカルでもなく、太古の地球に存在した形状や質感を蘇らせたような、我々の存在の「問い」を投げかけるようなプロダクトデザインです。
これは、明確な行き先を失ったデザインの方向性として、ひとつの選択であるという可能性は強く感じさせるのと同時に、リー・エデルコート氏自身の得意とする切り口のような印象でした。
ルーシー・リー展にも足を運びました。
数年前に「ポスト・フォッシル」展が行われている21_21でルーシー・リーの作品を含んだグループ展が行われたのですが、展示品が広くて大きな台に並べられていて、サイズの大きくないルーシー・リーの作品を近くで見ることが出来ず、非常にストレスを感じました。
また、当時はルーリー・リーのブームの最中で、彼女の作品の”写し”を制作しているような影響を強く受けた作家モノが、お店であまりにも多く見られた頃で、ルーシー・リー的なテイスト自体にお腹いっぱいな気分でもありました。
数年経って、今度は本格的な回顧展の開催となったわけですが、ボクにはまるで「ポスト・フォッシル展」で感じた「問い」に対する「ひとつの答え」のような印象の展覧会でした。
ルーシー・リーのフォルムは、アバンギャルドでもなく、アートっぽくもなく、彼女が好んだ形を繰り返し制作しています。
そして、釉薬のテクニックによって、溶岩のような表面を焼き上げたり、淡い貝のような色合いにしたり、モダンなラインで表面に装飾を施したりして。実験と研究を繰り返しているのです。
緻密な計算と化学反応による偶然性を巧みに利用して、有機的な要素を作品に閉じ込めているように・・・。
だから、ルーシー・リーの作品を目にすると、彼女はずっと「答え」を持っていたように思えてしまうのです。
「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展
21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン)
2010年6月27日まで
ルーシー・リー展
国立新美術館 企画展示室1E
2010年6月21日まで
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