2013/02/02

”日本のカワイイ文化”と”見世物的クラブシーン”を融合した(?)日本人デザイナー・・・”日本人のメンタルの弱さ”と”総合的デザイン力の欠如”が露呈してしまったのかも!?~「プロジェクト・ランウェイ・シーズン10/Project Runway Season 10」~



2004年からアメリカで放映されている「プロジェクト・ランウェイ/Project Runway」が、遂に「シーズン10」を超えました!番組の内容については、以前「めのおかしブログ」で「プロジェクト・ランウェイ」について書いたことがあるので、良かったらご覧下さい。

過去のファイナリストたちを集めた「プロジェクト・ランウェイ・オールスターズ」、ジュエリー、ハンドバッグ、靴などのデザインで競うアクセサリー版の「プロジェクト・アクセサリー」という”スピンオフ番組”が制作されていますし、世界各国(イギリス、オーストラリア、ベルギー、オランダ、フィリピン、韓国など、計20カ国)で、その国のバージョンの「プロジェクト・ランウェイ」というのも制作されています。現在「シーズン11」がアメリカでは放映され始めたところで、リアリティー番組の中でも長寿番組のひとつとなっています。

ボクは「シーズン1」からアメリカでDVDボックスが発売されると同時に購入して、全エピソードを一気に観てきました。しかし「シーズン8」を最後に、アメリカではネット配信のみ(日本からは閲覧不可能?)で、DVDボックスの発売をしなくなってしまったため「シーズン9」以降は観ていませんでした。日本では、WOWWOWが日本語吹き替えで放映しているようですが、先日「シーズン8」が終わったところのようで、2013年に「シーズン9」の放映が決まっています。オフィシャルサイトには放映中の「シーズン11」について書かれているし、番組の一部の映像は”YouTube”にアップされているので、リアルタイムで情報を得ることは出来るのですが、まとめて観る時の楽しみを奪われてしまうような気がして・・・あえて、ボクはネット上の情報は見ないようにしてきました。

最近になって怪しげなサイトで「シーズン10」までのDVDボックスセットを販売しているのを発見し、さっそく取り寄せてみました。テレビからダビングした番組をDVDに焼いた中国版海賊版らしく、画質はVHS並み、編集点ではシーンが飛ぶことがある粗悪品・・・ただ、正規版DVDが販売されない以上、海賊版の存在はありがたいものだったりします。

「シーズン8」では日系アメリカ人(四世?)の女性(アイビー・ヒガ/Ivy Higa)が出演していましたが・・・「シーズン10」では、初めて日本生まれの「日本人デザイナー」が「プロジェクト・ランウェイ」のキャストの一人として出演しているのです!

アメリカ人以外のキャストは、今まで数多く出演しているのですが、リアリティー番組の性質上、英語でのコミュニケーション能力というのは「必須」となります。また、単に言葉の問題だけではなく・・・共同生活しながらキャスト達とのコミュニケーションを取っていったり、審査員からの辛口批評に対して屈せずに自分の意見を述べたり、番組の中で自分のキャラクターをどう表現して振る舞っていくのかなどの能力も要求されるのです。

同調性をコミュニケーション手段とする日本人にとって、お互いを批判し合いながらも尊重していくというのは(頭で分かっていても)なかなか難しいこと・・・英語力、服作りの技術、デザインの才能以前に、切磋琢磨しながら素人同士が争うというリアリティー番組というフォーマット自体に、日本人にはハードルが高いのかもしれません。それ故に(1対1のバトルの似たような番組は過去にあったけど)日本版の「プロジェクト・ランウェイ」という番組が制作されることがないのかもしれません。初めての日本人キャストに対して(ボク自身がなし得なかったことをやってくれるという)大きな期待と同時に・・・最悪の結果を残してしまうのではないかという不安も感じぜずにはいられませんでした。

さて・・・「プロジェクト・ランウェイ」に登場する日本人デザイナーというのは、どんな人なのでしょうか?「Kooan Kosuke」という名前で出演していますが、本名は「大川公輔」という姫路出身の現在(番組出演時)30歳男性・・・番組内では「KOOan/コーアン」と呼ばれています。2002年(20歳?)で渡米して、「F.I.T」に入学してファッションデザインを学んだということなので・・・18歳で渡米し、英語学校、プレップスクール、美術大学を経由して、23歳でパーソンズ・デザイン大学のファッション科に入学したボクには親近感が湧きます。

2006年、彼は「ベストデザイナー」を受賞して「F.I.T.」を卒業します。デザインの方向性はさておき・・・日本人のステレオタイプとしての手先の器用さを裏切らず、彼の服作りの”クラフトマン・シップ”のレベルは高いことは間違いないようです。「パーソンズ・デザイン大学」と合同で開催された「Fusion Fashion Show/フージョン・ファッション・ショー」では、計30名の卒業生たちのフィナーレを堂々と飾っています。


卒業の1年後には、2008年の春夏コレクションを発表・・・このショーの後、セントクリストファー・ネイビス連邦(西インド諸島にあるイギリス連邦の王国のひとつ)でのファッションショーに参加したり、ニューヨークマガジンが出版している「ルックブック」で取り上げられたり、ケーブルテレビのTLC(ザ・ラーニング・チャンネル)で放映された古着をリメイクして素人をメイクオーバーするという「I 've Got Nothing to Wear」という番組に出演したり、ビヨンセの「Freakum Dress」ミュージックビデオに出演しているダンサーのジョンテ(JONTE' ☆ MOANING)の衣装デザインを韓国人アーティストのクラヨン・リー(Crayon Lee)とコラボをしたりと・・・着々とデザイン活動の場を広げていきます。

彼のファッション・ショー映像を見るかぎり、ファッション専門学校の学生に”ありがちな”スタイルという印象は拭えません。彼のスタイルが日本人デザイナーを代表しているとは、殆どの日本人(アパレル関係者)が思わないでしょう。クラブシーンで受けそうな見世物的なキッチュさはイギリスのパフォーミング・アーティストのリー・バワリーなどの影響と同時に、いかにも海外受けしそうな日本の「カワイイ文化」の引用をしているようにも見えます。ある意味、いつの時代にも必ず存在しているナイトクラブシーンの”アヴァンギャルド”・・・既成の服のディテールを誇張した”Catoon/カートゥーン”(漫画チック)のスタイルは、アメリカでは「ハラジュク系」と解釈されがちな「ストリートクチュール(?)」といったところでしょうか?

ニューヨークにいる日本人には、異様に”キャラ”が立っている人が、たくさんいるのですが・・・その人たちに共通するのは、とにかく見た目が派手で、テンションが異様に高いということ。(何故か関西出身者が多かったり・・・)良くも悪くも「イロモノ」として、クラブシーンでは目立つ存在となり、”プチ有名人”になることもあったりするのです。何を隠そう・・・ボク自身もパーソンズ・デザイン大学に在学中は、髪の毛をブリーチしてブロンドならぬ”たまご色”にして、相当おかしな格好をして、当時流行していたナイトクラブ(パラディアム、マーズ、トンネル、MK、リトルネールズ、ボーイバー、ピラミッド、セーブ・ザ・ロボット、スザンヌ・バーチのパーティーなど)を徘徊しておりました。とりあえず目立つことによって、言葉のコミュニケーションに多少ハンディがあっても、クラブでは注目を浴びることができるわけです。地方から原宿に遊びに来て、ド派手なファッションや奇妙な行動をするのに、ちょっと似ているのかもしれません。


「プロジェクト・ランウェイ」のオーディションでは、彼のハイテンションと金髪のアフロヘアの奇抜なスタイルが受けたそうです。実は「シーズン10」は彼にとって三度目の挑戦で・・・「F.I.T.」在学時代にオーディションを受けて落選、その後「シーズン6」(2008年)の時に再挑戦して一旦キャストに選ばれるものの、クリーンカード(永住権)を持ってないことを理由に却下されてしまったそうです。2008年から2012年の間に、何らかの手段でグリーンカードを取得したのでしょうか?仕事を通じてワーキングビザが発行してもらえたのか、グリーンカードの抽選にでも当たったのか分かりませんが、晴れてアメリカ滞在のためのステイタスの問題もなくなり、念願叶ったということです。

ただ、どう見ても彼は「ヒーローズ」に出演していた日本人俳優マシ・オカ的な扱いをされていて・・・ハイテンションの「おかしな日本人」というポジションでのキャスティングであることは否定することは出来ません。

ここからは「プロジェクト・ランウェイ・シーズン10」のネタバレを含みます。


エピソード1の「お題」は、宿題として制作してきた一着目の自分のデザイン哲学を表現したルックと対になる二着目をデザインして一日で制作するというものでした。一着目は色の組み合わせも、使用している生地の選択も、服のディテールも、まるでジョークのようなコスチュームだと、彼のデザインはレギュラー審査委員たちには評されてしまいます。一着目と二着目のデザイン的な関連性も、イマイチ分からず・・・リアルな服としての存在感の感じない奇妙なスタイルでした。ただ、ゲスト審査員が、ストリート系スタイルに理解のあるパトリシア・フィールドであったことはラッキーだったかもしれません。評価の低い3人に選ばれるものの、最初の落伍者になることは免れることができました。


エピソード2では、一般的には服の素材でないモノで服を作るという「プロジェクト・ランウェイ」ではお馴染みの「お題」・・・今シーズンは、ラルフ・ローレンの娘さんが経営するキャンディ屋さんが舞台。彼のデザインの方向性とキャンディの相性は良さそうなので、彼には”もってこい”の「お題」のように思えたのですが・・・溶けてしまう”綿アメ”をスカートにしようとして失敗し、単にたくさんのキャンディをモスリン生地で作った土台に無理矢理縫いつけただけのドレスを制作しました。勿論、ランウェイを歩くモデルのドレスからは、ボロボロとキャンディが落ちてしまったことは言うまでもありません。せっかく、彼の持ち味のスタイルに合ったテーマであったのに、そのポテンシャルを生かすことなく、かろうじて合格点で通過という無難な結果に終わりました。

このエピソードまでは、相変わらずハイテンションで、おちゃらけていたのですが・・・その後、様子が急変して塞ぎ込むようになってしまうのです。番組には映っていない部分なので、あくまでもボクの想像なのですが・・・長時間ライバル同士で競い合う状況で、他のキャストたちと本当の意味でのコミュニケーションが、彼は取れていなかったのではないでしょうか?元々、キャラ”が立ち過ぎているところはあったのですが・・・一体、彼がどういう人間なのかは、他のメンバー達には理解出来なかった気がします。結局、番組内で彼自身の作り上げたペルソナである「おかしな日本人」という不可解な存在というアイデンティティーしか表現できなかったのかもしれません。

日本人は「建前」と「本音」という文化(?)が、深みのある美徳として自負しているような気がするのですが・・・実は、これこそが日本人のメンタルの弱さの根源ではないかとボクは考えています。日本人は、追い込まれた状況になると、急に押し黙ったり、逆ギレして感情的になりがち・・・「建前」である”キャラ”が崩壊してしまうと、あっさりと”素”という「本音」を露呈させてしまうことがあります。ある時まで「建前」で冷静さを装っている日本人は、実は非常に感情に流されがちだったりするのです。映画やドラマでは、すぐに感情を剥き出すステレオタイプのあるアメリカ人ですが、実は”素”を出してしまうことは、理性のある大人であったら恥ずかしいこと・・・”幼稚な行動”と受け取られて、冷たい視線を送られたりします。日本人からみると些細ないことで感情的になっているようにみえるのも、実は一種のガス抜きであったり、自分の意見を押し通すための小細工をしているだけ・・・セルフイメージを保つために必要な防衛策だったりするのです。


エピソード3の「お題」は、デザイナーがペアとなってクライアントのために”レッドカーペット・ルック”(エミー賞授賞式に出席するためのドレスやガウン)を制作するというものでした。「プロジェクト・ランウェイ」では、自分ひとりでデザインするだけでなく、他のデザイナーとの共同作業や、クライアントのためにデザインするというチャレンジが多くあり、自己主張しているだけでも駄目・・・といって、自分の個性を殺しても駄目という”コミュニケーションの駆け引き”も求められるのです。

この「お題」は、明らかに彼にとって苦手なことは推測できました。運良くフェミニンなスタイルが得意なデザイナーとペアを組むことになるのですが・・・イニシャティブは完全にパートナーに奪われてしまい、彼がデザインプロセスに関わることもできないまま終わってしまいます。結果的には、審査員たちには好評で、高い評価の2グループに入る快挙を成し遂げるのですが・・・自分を見失ってしまった結果、彼のおちゃらけた”キャラ”は崩壊していくのです。

エピソード4ではスタート早々、とんでもないニュースが明らかにされます。女性キャストの1人が夜中に共同生活しているマンションから逃げ出したというのです。過去にリタイヤした人は何人かいますが、夜中にコッソリというのは初めてのこと・・・キャスト内に異様な衝撃が走る中、生地を購入して作業室に戻って来たメンバーたちに、彼はいきなりリタイヤすることを告げます。すでに混乱の渦の中にいるキャストたちは、彼の宣言に、ただ唖然・・・もしかすると、彼なりの判断で、このドサクサに紛れてリタイヤしなければ、もうチャンスはないとでも思ったのかもしれません。

彼はリタイヤの理由として「自分なりの方法でファッションデザインをしたい」という”もっともらしい”言い訳をするのですが・・・正直、これには理解に苦しみます。どのような「お題」が出されるとか、どれほどの短時間で完成品を制作しなければならないとか、自分のコンフォートゾーン以外のデザインを求められることなどは「プロジェクト・ランウェイ」を観たのならば明白なこと・・・自分の好きなスタイルだけでなく、アヴァンギャルドからエレガント、太った女性から子供、幅広いデザインをこなす柔軟性が要求されることは、覚悟できたはずではないでしょうか?極端な時間の制約や無茶なお題にチャレンジすることを承知して、番組に参加していることが前提なのです。「厳しいファッション業界でデザイナーになる別な方法を探していきたい」という、業界に関わったことのある者であれば当然の結論を理由にリタイヤしてしまうのであれば・・・「そもそも何故、そこまでして、この番組に出演しようと思ったの?」と根本的な疑問さえ浮んでしまいます。

ライバルである仲間たちが、彼のリタイヤを湿っぽく引き止めたりしないのは、アメリカならでは・・・サポート役であるティム・ガン氏も、自分で決めたのであれば仕方ないというあっさりとしたものです。こうして、エピソード4で唐突に、彼は番組から消えることとなります。作業室を去る際の彼の行動は、残されたキャストたちの目を点にさせるのですが・・・最後の最後に、おちゃらけた”キャラ”を取り戻して、彼なりの「建前」を繕ったのかもしれません。ただ悲しいかな、それは・・・やっぱり「おかしな日本人」の不可解な振る舞いとしか、キャストの目にも、多くの視聴者の目にも映らなかったのではないでしょうか?

残念ながら、日本人的なメンタルの弱さと総合的なデザイン力の欠如を露呈させてしまう結果となりました。もし、彼が自らリタイヤしていなくても、遅かれ早かれ落伍者になっていたかもしれません。ただ、誰もが簡単に手にすることの出来ないチャンスを得た者の使命を感じて、石にかじりついてでも、行ける所までは頑張って欲しかったというのが、ボクを含む多くの日本人、そして視聴者の気持ちだと思います。

「プロジェクト・ランウェイ」を観るたび、過去の自分に与えられていたのかもしれない無限の”可能性”を振り返って、漠然とした切なさに襲われてしまうことがあるボクにとって・・・リタイヤした彼の姿は自分自身の淡い後悔の念と重なり、胸を痛めて止まないのです。

「プロジェクト・ランウェイ」
WOWOWプライムにて順次放映

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3 件のコメント:

  1. いろいろな記事を読ませていただきました。
    「松木冬子」さんや「手芸女子」の記事で、本当に容姿が美しく生まれてこなければ女は価値のない害獣になることがよくわかりました。本当に容姿の悪い女(ブス)が嫌いなんですね(笑)
    視界に入るな消えろというのが直に伝わってきますv
    普通の男は「性格が良ければいい」「内面のほうが必要」なんてきれいごとを言いますが、生まれてきた時点で人生って決まります。きっとそういうことをはっきりと言えるおかしさんは美男子なんでしょうね!(^V^)
    私は生まれてきた時点で消えるべき美しくない女なのでこちらのブログを読んでますます自殺するべきなのだというのを再認識いたしました。何度死ねと言われて実際に試したのに本当にブスって害獣ですね!(笑)容姿を向上させようとしても笑われるだけ、ブスの努力は見苦しい!美人の努力は美しい!美人は何があっても守る!ブスは死ね!全部正しいことだと思います。

    いつも面白い記事をありがとうございます。長文で申し訳ありませんでした。

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    1. この記事に関係ないコメを投稿するのはルール違反と違う?
      手芸女子の記事にコメントすればいいじゃない。
      あなたがブスか何かは知らないけど、
      そういう行動もブスだと本当に救いがなくなるわよ。
      まぁブスが性格悪いというのは良くあることだから、
      死ぬ事ないわよ?あたしもそうだから良ーく分かるの。笑

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  2. かわいそうな人ね

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