2011/09/25

アラフォー女子目線のビタースウィートなドタバタコメディ・・・女性コメディアンらしい下品でリアルな”あるあるネタ”満載でゲイも共感!~「Bridesmaids/ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」~



西洋の不思議な習慣のひとつが、結婚式での「付添人/立会人」の存在であります。(日本の結婚式の仲人の役目とは全く違います)花嫁側は「ブライズメイド」花婿側「グルームマン」で、ブライズメイドの代表が「メイド・オブ・オナー」でグルームマンの代表が「ベストマン」と呼ばれています。

ボク自身は20年のアメリカ在住中に、たった2度しか結婚式に出席したことがありませんが・・・どちらの結婚式でも、ブライドメイドがおりました。ボクは花嫁側の友人で招待客の中では付き合いも長くて仲が良い方ではあったけど・・・ブライドメイドにはなれませんでした、男だから!もうひとつアメリカの結婚式の習慣で、ボクが驚いたのは(花嫁の親の経済力があればの場合に限りますが)結婚式の出費は花嫁の父親が全額支払うということ。ボクが出席した結婚式のひとつは、ニューハンプシャー州の民宿みたな大きな一軒家を貸し切って行なわれたんだけど、花嫁側の招待客全員にベットルームが用意されていて”いたせりつくせり”でした。結果的に、その友人は数年で離婚してしまったけど、お父さまの出費は相当な金額であったことは確かであります。

ブライズメイドは、親しい友人、親戚から選ばれるのですが、名誉なことではあるけれど、その責任は大きいです。結婚の祝福するために、ブライダルシャワーから結婚式までの数々のイベントを企画/プロデュースして、成功させなければなりません。特にメイド・オブ・オナーの責任とプレッシャーは相当なもの。また、花嫁の純白のウエディングドレスの美しさを際立たせるためにブライドメイドたちは、デザイン的にひどく、キレイでない色のドレスを、自費で購入して着なければならないという損な役目を請け負います。そんな理由から、ブライドメイドのドレスと言えば、ブルー系やグリーン系のポリエスターサテンの、ゴチャゴチャしたデザインのドレスなんていうのが多かったりします。

ブライズメイドに焦点を当てた映画がアメリカで大ヒットしたのが、そのタイトルもズバリ「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」というコメディ映画です。サタデー・ナイト・ライブ(S.N.L.)出身のクリスティン・ウィグが、「40歳の童貞男」「無ケーカクの命中男/ノックドアップ」「スーパーバッド/童貞ウォーズ」などの男子目線のコメディを手掛けてきたジャド・アバトーから勧められて、コメディアン仲間のアニー・ムモロと共同執筆した脚本を、TVシリーズを演出してきたポール・フェイグが監督した「女子目線のドタバタコメディ」であります。アメリカでは歴代のS.N.L.出身のスターが主演した映画の中で最もヒットした作品となったという本作は、”ガールズ・ムービーの枠を超えた作品と言っていいでしょう。

アニー(クリスティン・ウィグ)は、元カレと始めたケーキショップの経営は破綻・・・小さなジュエリーストアで販売員のバイトをしています。ハンサムで金持ちだけど最低男のテッド(ジョン・ハム)にはナンバー3(後に判明する事実)の”セクフ”として、都合良く扱われているという、なんとも残念なアラフォー女性であります。ひとむかし前の言い回しなら「負け犬」ってことです。お互いに未婚で幼なじみの親友リリアン(マヤ・ルドルフ)の突然の婚約で、アニーは”メイド・オブ・オナー”を指名されるのですが、親友の結婚というのは未婚で残される側にとっては、いろいろと複雑な心境でもあったりするのです。

婚約発表パーティーは豪華なクラブハウスで行われることになるのですが、リリアンの婚約者の上司の妻で最近リリアンが仲良くなったという、ブライズメイドのひとりのヘレン(ローズ・バーン)は、若くて美しくてお金持ちのちょっと厭味な女・・・リリアンの一番の親友の座をかけてアニーに何かと挑戦的だったりします。子供のときからの思い出や、リリアンの趣味が一番分かっているのは「私よ!」という自負しかアニーにはなく・・・圧倒的な経済力とネットワークがあるヘレンには敵うわけありません。他3人のブライズメイドたちも個性的・・・新郎の姉メーガン(メリッサ・マッカーシー)は巨漢デブの変わり者、リリアンの従姉リタ(ウェンディー・マクレンドン・コヴィー)は性息子3人にうんざりしている主婦、リリアンの仕事仲間ベッカ(エリー・ケンパー)は空気読めない新婚の妻という、まとめきれないメンツばかりです。

ブライダルシャワーのプランは、メイド・オブ・オナーの大事な役目のひとつ。アニーは、子供の頃からパリに行きたがっていたリリアンのために「パリ」をテーマにしたシャワーの企画を提案するのですが、他のブライズメイドたちは、自分勝手なこと言いたい放題。その上、アニーが打ち合わせランチのために選んだ町外れにあるブラジリアンレストランでは怪しい肉料理が出されて・・・その後の展開はガールズ・ムービーにはありえないトンデモナイことになってしまいます。街でも最もファンシーなブライダルショップでブライドメイド用のドレスを試着し始めたところ・・・先ほどの肉料理で食中毒を起こしてしまうのであります。嘔吐と下痢便に襲われるという地獄絵図が繰り広げられることとなるのです。リリアンに至っては、ウエディングドレスの試着中に路上で垂れ流してしまうという悲惨な事態に・・・アニーの面目は丸潰れです。

バチェラレット・パーティー(女だけ参加できる花嫁と友達の婚前パーティー)は、ヘレンの根回しで決まったラスベガス旅行・・・しかし、行きの飛行機の中で睡眠薬とアルコールで”へべれけ状態”になって、アニーはヘレンに悪態をつくだけでなく、飛行妨害までしてしまう始末。結局、彼女たちは飛行機を下ろされて、旅行自体がオジャンになってしまいます。そこで、アニーはリリアンからウエディングの仕切りからのクビを言い渡されてしまうのです。

アニーに替わってヘレンが仕切ったブライダルシャワーは、アニーが元々提案していた「パリ」のテーマのパクリだけど、お金をかけた超ゴージャスなもの。アニーが思い出の詰まった手作り感のあるチープなプレゼントすれば、ヘレンからはウエディングドレスのフィッティングを兼ねたパリ旅行のプレゼントという圧倒的な差をつけられてしまいます。これでアニーもお手上げかと思いきや・・・嫉妬したアニーは、ぶっちぎれて会場をめちゃくちゃにしてしまいます。そして、遂にリリアンから結婚式への出席までも断られてしまいます。

そんなアニーにも、彼女に心を寄せる警察官のネーサン・ローデス(クリス・オダウド)というパッとはしなけど、優しい男が現れます。メイド・オブ・オナーをクビになって自暴自棄になったアニーは、彼とひと晩を共にしてしまうのですが、最低男のテッドを初め、12年前に母親(ジル・クレイバーグ)を捨てた父親の存在から、男を信用できなくなっているアニーにとって、彼の優しさや誠実さは重荷としか感じられません。このあたりは、アラフォー女性ならずし~んとくる”あるあるネタ”であります。

さらに、住んでいたアパート(大家が奇妙なイギリス人兄妹!)からは追い出され、ジュエリーストアでは不貞腐れの悪態ぶりに仕事も失い、オンボロの自家用車はオカマを掘られて壊れてしまうという、さらなる「人生のどん底」の深みにはまってしまうアニー。勿論、映画の最後には、ハッピーエンディングが待っているわけですが・・・リリアンの結婚式までに、まだまだ紆余曲折が用意されていて、アニーが学ばなければならない人生のレッスンがあるのです。

映画のエンディングで特別出演する”ウィルソン・フィリップ”という女性コーラスグループの大ヒット曲「ホールド・オン/Hold On」の歌詞は、本作のテーマそのもの!1990年頃に流行ったこの曲・・・当時はMTVで流れるたびに「ダサっ!」と聞き流していたボクでしたが、改めて聴いてみると妙に懐かしかったりします。

ブレーレイのメイキングによると、多くのシーンは役者のアドリブや現場での即興で、いくつものパターンを撮影した中から選んで編集したとのこと。台詞のひとつひとつがスタンドアップコメディのネタのように冴えているし、コメディアンとして演じてきた数々のキャラクターの積み重ねがあったからこそ、役柄のひとりひとりが生き生きとしていたのです

結婚を巡るドタバタということで「ハングオーバー」の女性版のような本作ですが、切ない人生の本質や女性の本音が見え隠れするハリウッドお得意の、大爆笑しながら、ちょっと真面目に人生も考えさせてしまうところもあったりする味深いコメディ・・・アメリカ社会のステレオタイプは勿論、台詞のニュアンスを理解できるかがキモの作品なので、字幕によって伝わらないジョークもあるかもしれませんが、シングルのアラフォー以上の女性は勿論、内面的にはシングル女性と共感できてしまうアロフォー以上のゲイにとっても「ブライズメイズ」は、ビタースイートな”あるあるネタ”満載の映画であります!

「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」
原題/Bridesmaids
2011年/アメリカ
製作 : ジャッド・アバトー、バリー・メンデル、クレイトン・タウンゼン
監督 : ホール・フェイグ
脚本 : クリスティン・ウィッグ、アニー・ムモロ
出演 : クリスティン・ウィッグ、マヤ・ルドルフ、ローズ・バーン、メリッサ・マッカーシー、クリス・オダウド、ウェンディー・マクレンドン・コヴィー、エリー・ケンパー、ジル・クレイバーグ
2012年4月28日より劇場公開


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