フランコ・ネロ様♥と言えば、1960年代~70年代に制作されたマカロニウエスタン作品が有名で、なかでも「続・荒野の用心棒/Django」のジャンゴ役で知られています。ボク個人的には「男の子映画」的なマカロニウエスタンやB級アクションモノよりも・・・ちょっとエロティックな作品が気になってしまうのです。
フランコ・ネロ様♥の存在を知ったのは、ティーンエイジャーの頃、ボロボロになるまで繰り返し繰り返し読んでいた映画のムック本に掲載されていた出演映画のスチール写真を見たのが最初だと思います。イタリア人独特のクッキリとした顔立ち、ギラギラと輝くブルーの瞳、不精髭と胸毛の男臭さに、すっかり魅せられてしまったのです。はっきり言って、純粋に”見た目”だけ。ただ、それほど好きだったのにも関わらず、わざわざ映画館に足を運んで観た作品というのは、ほんの数えるほどだったりもします。
地元の大学を辞めて、ミラノのピッコロ座(Piccolo Teatro di Milan)という有名なレパトリー劇団(日本でいうと文学座のような?)で演劇のイロハを学んだことから、フランコ・ネロ様♥自身は”演劇人”という意識があるようなのですが・・・特に演技派男優というイメージはありません。(と言って・・・大根役者ってわけでもありませんが!)
そもそも、ブレイクのきっかけとなった「続・荒野の用心棒」で抜擢された理由というのも、主役のジャンゴ役を演じるはずだった俳優が降板してしまったため、急遽、代役を探す羽目になっ製作陣が、フランコ・ネロ様♥のプロフィール写真の”顔”を気に入ったから・・・演技力とかは無関係だったらしいのです。奇しくもジャンゴ役が大当たりしてしまったフランコ・ネロ様♥は、ハリウッドで活躍する機会も与えられるものの、本人的には肌に合わないということでイタリアに戻り、マカロニウエスタンのスターとなったというわけであります。
「続・荒野の用心棒」公開された年、ミュージカル映画の大作「キャメロット」の制作現場で、フランコ・ネロ様♥は、バネッサ・レッドグレーブと出会います。フェミニストでリベラルな政治活動家としても知られるイギリス人女優と、イタリアの色男の男優という組み合わせは、少々意外にも思えるのですが・・・お堅いイギリス人女性が情熱的な恋愛相手として選ぶのは。イタリア人の色男と相場は決まっているところもあったりするので、実はこの上なく凡庸な組み合わせかもしれません。二人は子供をもうけたものの一旦別れてしまい、お互いに別な人と付き合ったりした後、晩年になって40年越しの愛を晩成させて2006年に結婚しています。
そんな二人が付き合い始めた時期につくられた共演作品が「怪奇な恋の物語/Un Tranquillo Posto Di Campagna」なのです。本作は、サイコミステリー仕立ての作品で、ボク個人的に印象に残ったのは、本作の冒頭のSMチックな幻想シーン。何故か、パンツ一丁の裸でロープで椅子に縛られているフランコ・ネロ様♥・・・胸毛を露わにした無防備な姿に、衝撃を受けた記憶があります。ただし、フランコ・ネロ様♥が脱いでいる(!)シーンはこれだけで、残りの本編は主人公が幻覚と現実に混乱していくという展開になっていくのです。
付き合い始めのカップルの共演作品として(幻想でもSMプレイというのは)なかなかエグい気がしてしまいます。晩年の二人が共演した「ジュリエットからの手紙」とは大違いです。若かれしフランコ・ネロ様♥の裸体を拝見できる貴重なの作品なのであります。(マカロニウエスタンでは脱がない・・・)
上流階級の娘とジプシーとの格差を超えた恋愛を描いたD・H・ロレンスの中編小説を映画化した「ザ・ヴァージン・アンド・ザ・ジプシー(原題)/The Virgin and the Gypsy」で、フランコ・ネロ様♥が演じるのは野性味のある性的魅力に溢れるジプシー・・・ぴったりの役であることは言うまでもありません。
性的に抑圧された上流階級の娘が、バケーションで片田舎を訪れるのですが、そこで屋敷近くに暮らすジプシーの男と惹かれてしまう・・・という”ロレンス”らしい物語です。おそらく、ケン・ラッセル監督による同じくロレンス原作の「恋する女たち/Women in Love」に便乗(?)して、企画されたと思われるのですが日本では未公開のまま(ビデオ化もされず)。性的な描写は控えめで、ロレンス的なテーマも無難にまとまっている”だけ”の作品なのですが、野性味溢れるフランコ・ネロ様♥の全裸ラブシーンという”ご褒美”があるのです。
30代半ば脂の乗り切ってきたフランコ・ネロ様♥が、フェロモン全開で臨んだのが「スキャンダル/Lo Scandalo」であります。当時、多く制作されていたイタリアの官能モノで、大学教授夫人で薬局を切り盛りするマダム(リザ・ガストーニ)を、性奴隷として虜にしていく使用人(下男)を演じるのがフランコ・ネロ様♥です。
下層階級の男が上流階級のマダムを性奴隷にしていくというのは、1974年(本作の2年前)リナ・ウェルトミューラー監督の「流されて・・・・/Swept Away」と似通っているのですが、第二次世界大戦下の戦況が悪化していくという刹那的なムードは、同じく1974年のリリアーナ・カヴァーニ監督による「愛の嵐/ The Night Porter」にも似ているところがあります。ただ、「流されて・・・」のような政治風刺やユーモアがあるわけでもなく、また「愛の嵐」のデカタンスを感じさせるわけでもありません。
あくまでも、本作の”売り”はリザ・ガストーニの(熟れたというよりも腐りかけた?)熟女ヌードで、フランコ・ネロ様♥の脱衣は皆無・・・・。「征服されていみたい」「服従してみたい」と思わせてしまう”非情などSっぷり”と、「なんか可愛らしい」「どこか許せてしまう」という”チャーミングな男臭さ”が同居していのは、フランコ・ネロ様♥が生まれ持った魔性なのではないでしょうか?
「ザ・サラマンダー(原題)/The Salamander」は、フランコ・ネロ様♥主演で、アンソニー・クィン、クリストファー・リー、クラウディア・カルディナーレら往年のヨーロッパスターたちが共演した作品であります。アクションスリラーとしては平凡な作品で、日本では劇場未公開。ビデオ/ブルーレイ化はおろかテレビ放映されたこともないようです。
殺人事件を捜査するフランコ・ネロ様♥演じるイタリア警察長官が、監禁されて拷問されるシーンがあるのですが・・・ジャックストラップ(日本のゲイには”ケツ割れ”と呼ばれているエッチな下着)を身につけただけの姿になってしまうのであります。それも、一部のゲイにはコアな人気を誇る(?)髭熊系のポール・L・スミス(1980年の「ポパイ」のブルート役)を相手にしたアクション!個人的には、数分間の二人が絡んでいるシーン(エッチではありませんが)以外は、どうでも良い映画だったりします。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「ファスビンダーのケレル/Querelle」は、公開当時(1982年)珍しかったゲイセックスを露骨に扱っていたアートフィルムこともあり、ゲイの観客を多くを集めていたことは言うまでもありません。
ケレルに密かに魅かれているクロゼット(カミングアウトしていない)ゲイの将校役を演じたフランコ・ネロ様♥は(演技とはわかっていても!)それまで多くのゲイのファン(ボクを含む)が妄想していた姿で、まるで「ポルノ映画」のよう。上半身裸で作業するケレル(ブラッド・デイヴィス)を司令室から眺めながらフランコ・ネロ様♥の手が自分の股間を弄るとか、「Young man needs boys with big dicks/若い男にはチンポのでかい少年が必要(直訳)」なんて卑猥な言葉を落書きしたり、ケレルへの思いが伝わった後にお互い強く抱擁し合うとか・・・マジで”鼻血ブーもの”だったのです。
多少頭髪も薄くなりかけて、すっかり”おじさん”になってきたフランコ・ネロ様♥が、娘ほどの年齢の少女に翻弄される「魔・少・女/ザ・ガール/The Girl」は、世界的にはマイナーな一作・・・1990年代に一度ビデオ化はされたものの、その後DVD化されることはなく、今では忘れ去られた作品かもしれません。
少女のクレア・パウニーが、それほど若くは見えなくて、ちょっと不潔な感じがするところが、まるでアダルトビデオ・・・。股間のモロ出しシーン(男女ともに)がある本作ではありますが、さすがにフランコ・ネロ様♥が股間を露わにすることはありません。しかし、必然性のあるなしに関わらず、妙にフランコ・ネロ様♥裸(上半身)になるシーンが多いのは、様々な方向性から(?)「エロティック」スリラーを意識してのことなのでしょうか?
「フランコ・ネロ」という俳優名を聞いて、40代以下の方には「ダイ・ハード2」や「ジョン・ウィック:チャプター2」に出てたおじさん?くらいの存在でしかないかもしれません。ただ、若い頃に夢中になったアイドルやスターを、いつまでも憧れの対象として崇拝しまうように・・・おじいちゃんになってもフランコ・ネロ様♥は、ボクの心をときめかすのであります。
「怪奇な恋の物語」
原題/Un Tranquillo Posto Di Campagna
イタリア/1968年
監督 : エリオ・ペトリ
出演 : フランコ・ネロ、バネッサ・レッドグレーブ、ジョルジュ・ジェレ
1971年11月20日、日本劇場公開
「ザ・ヴァージン・アンド・ザ・ジプシー(原題)」
原題/The Virgin and the Gypsy
イギリス/1970年
監督 :
出演 : フランコ・ネロ、ジョアナ・シムクス、ホーマー・ブラックマン、マーク・バーンズ
日本未公開
「スキャンダル」
原題/Lo Scandalo
イタリア/1976年
監督 : サルヴァトーレ・サンペリ
出演 : フランコ・ネロ、リザ・ガストーニ、レイモン・ペルグラン、クラウディア・マルサーニ、アンドレア・フェレオル
1977年6月11日、日本劇場公開
「ザ・サラマンダー(原題)」
原題/The Salamander
アメリカ、イタリア、イギリス/1981年
監督 : ピーター・ツィイナー
出演 : フランコ・ネロ、アンソニー・クィン、クリストファー・リー、クラウディア・カルディナーレ
日本未公開
「ファスビンダーのケレル」
原題/Querelle
西ドイツ、フランス/1982年
監督 : ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演 : ブラッド・デイヴィス、ジャンヌ・モロー、フランコ・ネロ、ギュンター・カウフマン
1985年5月20日、日本劇場公開
「魔・少・女/ザ・ガール」
原題/The Girl
イギリス、スウェーデン/1986年
監督 : アルネ・マットソン
出演 : フランコ・ネロ、クレア・パウニー、バーニス・ステジャース、フランク・ブレナン、クリストファー・リー
日本劇場未公開、日本国内VHS発売あり
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