ニューヨークに住んでいた時は自分が”ゲイ”を隠す必然性を感じないというか・・・”ゲイ”しかいない、というぐらいファッション業界は”ゲイ”だらけだったので、隠すこと自体がまったくもって無意味なことに思えていました。
逆に、オネエっぽい態度をとらないと「何、格好つけて男ぶっているの?」という逆差別みたないことが、ゲイ同士にあったりしたものです。
また、ボクの住んでいたのは、当時(1990年代)道を歩いている人の6割が”ゲイ”ではないかというチェルシー地区のど真ん中(23丁目と7番街の近く)だったりしたものだから、日常の雑踏さえも”ゲイ”ばかり・・・自分がマイノリティーであるという感覚さえも、ボクからは薄れていくばかりでした。
思い返せば・・・高校時代に初体験(男性と!)した夜・・・「セックスってさぁ~、疲れんだよねぇ」なんて、ボクは自分の経験を偉そうに、童貞の男友達(ストレート)に電話で何時間も語っていました。
彼にとっては「性体験」と「男同士の行為」という、ダブルの意味で未知の世界だったわけで・・・その行為の事細かな説明されたものだから、かなり複雑な気持ちだったかもしれません。
また、高校時代にボクが好きだった他の男友達(ストレート)に「ボクはゲイなんだけど、XX(彼の名前)こと好きなんだよ」と、彼の自宅近くの河原で告白したら・・・「その気持ちには応えられないけど、率直に言ってくれてありがとう!」なんて、青春ドラマのような「大正解の返事」をしてくれたことに、感動したことを覚えています。
親に対しても「知っていると思うけど・・・ボク、ゲイだから」と、高校生の時に唐突に話しました。
最初は「これからも、ずっとそうなの?」と、ちょっと心配したようだったのですが・・・「そうだよ!でも、大丈夫!病気じゃないから心配しないでね!」と、ボクは元気良く答えたので、勢いで親は納得させられてしまったのでした。
そんなわけで、ボクは「ゲイごころ」がついたころから、こんな調子で常に”カミングアウト”しているように生きていのかもしれません・・・といっても、どこでもかしこでもゲイアピールをしているわけではなくて、ごく自然にという感じですが。
日本に戻ってきてから、日本人の”ゲイ”と知り合って驚いたのが、殆どの人が「クローゼット」の中(ゲイであることを隠して生きること)で、普段の生活をしているということでした。
外見的にはゲイの王道をいくような・・・「ジムで鍛えた筋肉に脂肪がのってるガチムチの短髪、髭」という、ある意味(?)誰が見ても”ゲイ”以外の何者でもない人が、昼間の生活(職場など)では、ゲイが「ばれない」ように生きているというのです。
(実際に、ばれているか、ばれていないかは確かではありませんが・・・)
職場で隠す以上に「ありえない」と思うのが、男とも”エッチする”既婚者が日本にはやたら多いことでしょう・・・特に年齢の高い人に。
(アメリカにも、そういう既婚者がいないわけではありません)
日本人では、子供が生まれたらセックスレスの夫婦はフツーのことのようだから、旦那はお金を稼いで表面上は家庭に留まってくれれば良いということなのでしょうか・・・たとえ外で男とセックスしていたとしても。
ある年齢より上の世代が若い頃は・・・結婚していないと仕事場でも一人前に扱われないという時代だったらしいので、ゲイでも結婚を選択することが多かったのかもしれません。
また、20代で結婚した時には男にはまったく興味なく、普通に結婚生活を過ごしていたのに、ある時、男とエッチをしてから”やみつき”ということもあるみたいです。
いずれにしても「クローゼット」の中で生きることに無縁だったボクからすると、「結婚」というのは究極の「クローゼット」の中の人生としか思えません。
日本に帰国後、ボクは既婚者の「T」さんという人と知り合うことがあって、ある時期たまに会う関係になりました。
「T」さんは単身赴任を始めた10年ほど前に男に目覚めたそうで、同年代の生粋のゲイの人とは違う雰囲気を持っていました。
家族(奥さまと子供3人)で温泉に行ったこと、長男がもうすぐ結婚することなどなど、ハニカミながら嬉しそうにボクに語ったりすることもありました。
正直言って・・・普通に家庭を持って、父親でもある人とエッチをするというのは、ボクはちょっと複雑な気分にさせらることがあります
矛盾するようですが・・・父親/夫としての役割もしっかりとしているTさんのことを、より魅力的で素敵な人に感じる自分がいたりするのです。
・・・と同時に、偽りの人生を生きていることに、彼に対して苛立ちや哀れさ感じたりもするのです。
ある日、ボクは「T」さんに何気なく質問してみました。
「Tさんって・・・バイ?ゲイ?」と。
彼は大きく息を吸って、苦笑いしながら
「もう・・・”ゲイ”だよ」と、つぶやいたのでした。
彼の答えに、ある種の「ずるさ」を感じながらも・・・ボクは悟りました。
彼の生きている「クローゼット」の中は、ボクに知る由もないんだと。
どちらが幸せな人生なのか・・・それはボクにも、まだ分かりません。
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