2012/09/15

いろんなホラー映画ぜ~んぶ入り!・・・「13日の金曜日」のパロディどころじゃない風呂敷の広げっぷりが、あっぱれ!~「キャビン/The Cabin in the Woods」~


いわゆる「13日の金曜日」系のティーン・ホラー映画のパターンは、繰り返し焼き直しされています。バカな若者たちが「行っちゃダメよ!」と警告された人里離れた辺鄙な場所に出掛けるというのが典型的な設定・・・また、その若者グループというが、いろんなキャラを集めましたというような、決して一緒に行動しそうもない組み合わせになっているのも、お馴染みかもしれません。

まず、この手の映画に不可欠なキャラと言えば・・・金髪のバカ女(Blonde Bimbo)。おっぱい出しヌードのサービス担当で、エッチをする奴から殺されていくというティーン・ホラー映画の定説通り、真っ先に殺されることが多いようです。その金髪バカ女の恋人役という場合が多いスポーツマン系のマッチョ(Jock)。映画の冒頭ではリーダー役として登場するものの・・・やっぱり途中で殺されます。金髪バカ女と対比するように存在する女性キャラが、黒髪、茶髪、赤毛など金髪以外の女性キャラのヒロイン(Heroine)。どういうわけか、グループの中でも抜群の肉体能力と抜けない頭脳で、最後まで生き残るキャラということが多いようです。オタク系(Nerd)の男というのも外せないキャラで、身体的に不自由だったり、いかにもスポーツが苦手でトロそうという役回り・・・どう考えても、スポーツ系のマッチョと友達とは思えないのメンバーなのにグループに入っているのは、女性キャラの兄とかという設定にしていることも多かったりします。マッチョとキャラ的にはかぶりながらも、敵対する存在で登場する事があるのがライバル(Rival)。どうしたら良いのかの決断場面でリーダー格のマッチョと口論になる・・・というのが、ありがちなパターンですが、最近の傾向としては”白人”ではなく、アフリカ系やラテン系という場合が多いようです。いかにもスポーツばっかりで頭悪そうなマッチョ役と対比するように、お勉強のできる真面目なキャラというのもありがちかもしれません。その他、”白人”でない女性キャラを登場させることも多く、その場合には、分かりやすい”ステレオタイプ”そのものを演じさせられます。アフリカ系なら、とにかくぎゃーぎゃー騒ぐ、ラテン系なら気が強い、アジア系ならミステリアス・・・という具合でしょうか?「13日の金曜日」的なティーン・ホラー映画に欠かせないのは、人種的にも、キャラ的にも、最低限のステレオタイプのバリエーションを揃えるというのは”お約束”ではあるようです。

「キャビン・イン・ザ・ウッズ」は「13日の金曜日」的なティーン・ホラー映画の”お約束”を、これでもかというほどなぞっていく、ベタで典型的な設定と展開になっていますが・・・「ハロウィン」に対する「スクリーム」ような、この手の映画にありがちな”お約束”を”逆手”に取った作品であることが分かります。まず、登場人物は見事なほど典型的なキャラを揃えています。金髪バカ女、リーダー格のマッチョ、赤毛のヒロイン、ヒロインの恋人でアフリカ系(ラテン系のミックス?)の男、そしてマリファナ中毒の男友達・・・という5人。途中で立ち寄ったガソリンスタンドでは、不気味な男が「そっち行くんじゃなぇ!」と注意するというベタっぷりです。到着する森の小屋も、ホラー映画で何度も観て来たような佇まいの、イカニモ危ない小屋・・・登場人物達のやり取りも、この手のホラー映画にありがりな、どうでも良いような”いざこざ”でしかありません。

しかし、本作が違うのは、若者達が入り込んだ森や森の小屋というのが、どこかしらの指令室でモニタリングされ、その環境がコントロールされているという事・・・これってケーブルテレビで放映されている「リアリティショー」の”やらせ”みたいに見えます。地下室で発見した謎の呪文を読み上げることによって、墓場から蘇るゾンビ一家・・・しかし、これは、指令室ではギャンブルでもするかのように、彼らが何を選択するかを賭けていたりします。まるで”お約束”のように金髪バカ女とマッチョが森の中でチチクリ始めるのですが・・・金髪バカ女が「涼しい」と言って服を脱がないでいると、指令室では気温と湿度を上げたりします。期待通り、服を脱ぎすてエッチを始める二人に、ゾンビ達が襲いかかります。しかし、これはテレビ向けの”やらせ”なんかではなく・・・金髪バカ女はゾンビ達に捕まって、あっさりと惨殺されてしまいます。

どうやら若者達は自分たちがモニタリングされていることなど全く知らないようで・・・マジでゾンビに襲われているようなのです。オタクは小屋からゾンビに連れ去られてしまいます。ヒロインとアフリカ系のボーイフレンド、マッチョの3人は車で逃げようとするのですが、何故か崖から橋がなくなって渡れません。勿論、指令室で地形さえもコントロールされているのです。バイクで崖を乗り越えようとしたマッチョは、見えない電磁波の壁のようなものに阻まれて、谷底へ落ちていきます。結局、ヒロインとボーイフレンドは小屋へ引き返すハメになるのですが・・・その途中でボーイフレンドは喉を切られて殺されてしまいます。こうしてヒロインは一人で森の小屋に舞い戻ってくるしかないんです。一体、森の天候から地形までコントールして、ゾンビまでを修験させる指令室というのは、何なんでしょうか?

この後、とんでもなく雄大な物語へと発展していきます。「13日の金曜日」だけでなく、サム・ライミ監督の「死霊のはらわた」、ピーター・ジャクソン監督の「ブレインデッド」、さらに今まで作られたホラー、ファンタジー、モンスター映画も全部入れて・・・・最後には「プロメテウス」的(?!)なテーマさえも彷彿とさせるトンデモナイ作品なのです。司令室のトップのディレクターの正体は・・・なんと「宇宙人ポール」のあの人。そして、この司令室が行なうとしている計画が明らかにされるのですが・・・その風呂敷の広げっぷりには、かなりの無理があります。また、脚本も演出も、まだまだ良くなる余地はありそうだし、相変わらずクリス・ヘムズワースの超大根っぷりにはシラけ、正直言って映画の出来としては”お粗末”・・・しかし、使い古された「ティーン・ホラー映画」ネタを、誰もが予想だにできない”オチ”へ、強引にでも引っ張っていくパワーは、ただ「あっぱれ!」なのであります!

「キャビン」
原題/The Cabin in the Woods
2012年/アメリカ
監督 : ドリュー・ゴダード
脚本 : ドリュー・ゴダード、ジェス・ウェドン
出演 : クリス・ヘムズワース、ジョシ・ウィリアムス、アナ・ハッチソン、フラン・クランツ、裏チャード、ジェスキンス、ブラッドリー・ホイットフォード、シガニー・ウェイバー

2012年9月16日「第5回したまちコメディ映画祭 in 台東」映画秘宝まつりにて日本プレミア公開
2013年3月9日より日本劇場公開


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