2011/10/27

台詞に酔っているだけの薄っぺらいファッション映画、再び!・・・おしゃれが似合わない”向井理”と女装子を怪演する”五十嵐隼士”にズッコケまくり~「パラダイス・キス」~



このテの映画をわざわざ映画館に観に行くというのは、いくらなんでも時間と金の無駄のように思えて・・・DVDレンタルでの観賞であります。「ランウェイ☆ビート」よりも頭の悪いファッション映画なんて、いくらなんでもアリエナイって思っていましたが、やってくれました・・・「パラダイス・キス」。原作マンガは読んでないし、アニメも観ていないので、あくまでも実写映画版”のみ”についてのお話でありますが。

なんと言っても、服飾専門学校の生徒で、超お金持ちのジョージ役の「向井理」がヒドい・・・。演技が下手とか、顔や雰囲気が好きじゃないっていうのはありますが・・・よく引き受けたと思うほどの、無惨なまでの”ミスキャス”トです。まず、ブリム付きのハットを、ずっとかぶっているんだけど、まったく似合いません。彼のような無個性で薄い顔の男って、素朴っぽい普通の格好しかサマにならないので、トレンディーなファッションに、完全に着られてしまうんですよね。

ジョージは超金持ちの息子で、都心の高層マンション(4ベットルームほどの部屋数に、40畳ぐらいのリビングルーム)に暮らしており、目黒川沿いの地下のアトリエ(こちらも天井が高い50畳ほどの空間)もあるという・・・ファッションデザインの専門学校生にして、すでに大成功しているデザイナーのような生活をしています。それだけ経済力あるなら「自分で会社作った方が早くねぇ?」としか思えないんだけど・・・チマチマと卒業製作を3人の仲間と共にしていたりするんです。

不思議なのは「天才デザイナー」と言われ、5歳の時からドレスを作っているという設定なんだけど、まともに服作っているシーンとか全然なくて、唯一手を動かしているのは卒業制作のドレスのための「青いバラの造花」ぐらい。今まで彼のつくったドレスの数々を収めたクローゼットルーム(何故か、アクセサリーや靴まである)を見ると、ジョージの作ってきた服のデザインって、キャバ嬢が誕生日の営業で着るようなゴテゴテと装飾のついたドレープのロングドレスばっかり。その上、このドレスたちは”思い出”だから誰にも売らないなんて・・・「おまえ岡本太郎か!」と叱りたくなるような、かなり勘違いしているデザイナー志望のお坊ちゃまなのであります。

このジョージに見初められて、モデルの道を進むことになる女子高校生の紫(ゆかり)を演じるのは、ポスト沢尻エリカとも言われる”北川景子”・・・出番の8割は仏頂面で、”エリカ様”を参考にしたのかしら・・・と思えるほどの堂々とした太々しさ。まったくもって、受験校に通う女子高校生には見えません・・・化粧も濃くて、まるで酸いも甘いも知っているキャバ嬢の女子高校生のコスプレみたい。イヤイヤ引き受けたのに、卒業ファッションショーで「モデル」という仕事に目覚めるというのが、物語的にも山場のはずなのですが・・・美人の北川景子では、最初っから「モデル然」として完成され尽くしていて「女子高校生が自分の夢を見つける」という自分探しの成長物語としてのカタルシスが感じられないのです。

日本で「ファッションショー」の意味を勘違いしているのが・・・「ファッションショーは、モデルのパフォーマンスを見るためではない」ってこと。東京ガールズコレクションのように、服を買うお客さん相手のファッションショーというのが、日本のマスコミで大々的に報道されるという事情もあるのでしょうが・・・ファッションを扱うメディアが、あまりにもモデルを持ち上げ過ぎるから、変なことになっているような気がします。

ジョージとゆかり(実は仲間からは、キャロラインとか、キャリーとも、呼ばれているという恥ずかしさ)の経緯で、ありえないのが、オープン(!)スポーツカーで、いきなりラブホテルにゆかりを連れ込むジョージが、ベットの上で嫌がるゆかりに対して「自分の足で歩いてホテル部屋まで入ってきたくせに、自分の意志はどこにあるんだ?」と問い詰めるシーン・・・女子高校生相手に、へりくつの説教して、レイプまがいのことするなんて、恐ろし過ぎます。この台詞の伏線が、卒業ファッションショーのランウェイに上がる直前に緊張しているゆかりに向かってジョージが言う「自分の足で歩いてこい!俺がここでおまえを待っているから」なんだけど・・・元々の台詞を引用しているシーンがシーンだけに、感動とはほど遠くなってしまうのであります。

サイドストーリーで取って付けたように登場するのが、ゆかりの初恋の人で憧れの徳森くん。演じる山本裕典は、まず、見た目からして、チャラいホストにしか見えないんなんだけど・・・なんで、ゆかりがそこまで惚れてしまうのか全然分かりません。キャバ嬢系のゆかりだから外見的にホストっぽいルックスに弱いのかしら・・・?徳森くんの幼なじみであるミワコとアラシはジョージと一緒に「パラダイス・キス」というブランドをやろうと頑張っているわけなんだけど、実は子供時代、徳森くんを含めた三角関係でミワコを取り合っていた仲という設定・・・といっても、トンチンカンな三人の感情の流れに理解不可能。本筋とは関係ないんだから、もうどうにでもなってくれ〜!という感じでした。

残念ながら、ボクにとっては魅力に欠けた面々ばかりなんだけど・・・上手いか下手かは別にして(笑)、ひとり異彩を放っていたのが、女装子のイザベラです。奇妙奇天烈なギャル風メイクに、淑女のような帽子とドレープのロングドレスという1970年代の浅丘ルリ子か加賀まりこを彷彿させる”イデタチ”。「みんなのことは、全部分かっててよ」的な”ゴットマザー”のような存在という・・・冗談みたいな役柄を、”五十嵐隼士”が、真面目に「怪演」しております。映画公開の時には、女装のイザベラの姿で舞台挨拶をしていたようで・・・その無意味な”プロ根性”に、思わず拍手です。イザベラがジョージに恋心をよせていることは明らか・・・卒業後、パリのメゾンで修行するというジョージに甲斐甲斐しく付いていくほどなのだから。「彼のためにパターンを引き続けるのが私の夢♡」なんて裏方でジョージを支えることを志した可愛い人なのです。それなのに・・・ラストでは、ゆかりにジョージを再び奪われてしまうなんて、なんとも可哀想なイザベラであります。

全編に渡って・・・「こりゃないだろう」というツッコミどころ満載の本作ですが、最後の最後、ジョージはパリへ修行へ行ったものの、売るためのだけの服が服ではないって思って、ニューヨークのブロードウェイの衣装デザイナーになったという下り”だけ”は、ある意味「正解」のエンディングではありました。だって・・・ジョージのデザインした服って、時代錯誤した「衣装」にしか見えないのだから。コスチューム・デザイナーとしては”あり”というのは、キャリアの選択としては「非常に正しい」と納得なのでした。・・・ただ、組合(ユニオン)の非常に厳しいブロードウェイのコスチュームデザイン業界というのは、実は狭き門で年功序列の世界。数年でブロードウェイのショーの衣装を任されるというのは、絶対にあり得ないことではあるのですが。

この映画のキャッチコピーは「自分の可能性を信じなきゃ何も始まらない。」ということなんだけど、ジョージにしても、ゆかりにしても、スタートラインでのポテンシャルが高いから・・・可能性を信じるも、何も、物語を成り立たせるために決められた成功の道を進んだに過ぎないという感じであります。「夢」とか「可能性」とか、台詞に酔っただけの薄っぺらい物語は、今のファッション業界が発信している流行の”薄っぺらさ”そのものに過ぎないのかもしれません。

それにしても「パラダイス・キス/Paradise Kiss」というタイトルになっている”ブランドネーム”・・・英語的な感覚だと「エロティック・ランジェリー」のブランドにしか思えない、かなり安っぽいネーミングセンスです。

「パラダイス♡キス」にしなかったのは「ランウェイ☆ビート」よりは・・・賢明でした。

「パラダイス・キス」
2011年/日本
監督 : 新城毅彦
脚本 : 坂東賢治
出演 : 北川景子、向井理、山本裕典、五十嵐隼士、大政絢、賀来賢人、加藤夏希



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