日本では、とかく「絶対悪」のように扱われる「ドラッグ」ですが、アメリカでは「ドラッグ」=「犯罪」というニュアンスではなく、ごく日常的に行われている事でした。
州によっては痛み止めや精神安定薬として医者に処方されれば薬局で買えたりするし、学生のパーティーでは大麻(時には覚せい剤も)は当たり前のようなところもあったし、エクスタシーなどもクラブに行く前に摂ったいりするので、ドラッグが大変な犯罪であるような雰囲気はありませんでした。
ニューヨークに留学を決めた際に、高校時代の元担任が心配したのは、治安の問題もありましたが、ドラッグの誘惑の危惧でした。
実際のところ、逆にニューメキシコのような僻地(へきち)の方が何もすることがないので、学生たちは夜な夜な集まってドラッグパーティー・・・という感じだったりするので、ニューヨークのような都会だから特にドラッグが蔓延しているというわけではないのです。
結果的に、自分はニューヨーク留学を決行したわけですが、確かに元担任が心配するような誘惑の環境がありました・・・日本人留学生の中で。
1981年の当時はカリフォルニアと比べて、ニューヨークの日本人留学生の数は少なく、日本人留学生の世界は狭いものでした。
自分のまわりには、大学を卒業したばかりの22,3歳のグループと、一度社会に出て働いてお金を貯めて留学してきた27.8歳のグループがいたのですが、年長グループは、ドラッグ目的の留学というぐらいドラッグ漬けのグループでした。
若いグループも基本的にドラッグ大好きという感じで、機会があれば「ぜひ、欲しい!」というノリでした。
そんな日本人グループの中でドラッグに手を出さなかったのは、一番年少だった(18歳)の自分だけでした。
自分は未成年ながらアルコールは飲んでいましたが、どんなに勧められてもドラッグには一度も手を出すことはありませんでした。
周りにとっては白ける態度ですが、雰囲気の順応性だけには長けていてようで、お酒だけしか飲んでいないのにテーブル上で踊りまくるような”はしゃぎ方”をしていたので「スゲェ、ぶっ飛んでんじゃん!」としか思われなかったようです。
今でも「留学=ドラッグ」というのが一般的なのかは分かりませんが・・・アメリカ留学の時に経験して、それから癖になったという人は少なからずいると思います。
潜在的に依存症の傾向があったり、元々ドラッグに興味があったり、仲間グループから疎外感を感じたくないようなタイプの人にとって、日本より格段にドラッグに対する社会的なハードルが低く、不法という意識が希薄で、容易く手に入りやすい環境にいると、日本のような「絶対悪」という感覚は持てなくなってしまうのかもしれません・・・。
どうして自分が、頑なにドラッグに手に出さなかったのかは、自分でもよく分かりません。
欲しければ入手することは可能な環境でしたが、倫理的、法律的にドラッグを拒否する強い意志や信念ということではないのです。
ただ、どうしても、自分は「ドラッグ」というモノに興味を持てないだけなのでした。
それは、ある意味ラッキーなことだったのかもしれません。