2017/02/16

”コレジャナイ”感しかない「キング・オブ・カルトムービー」のリメイク・・・シャドウキャスト公演の”お約束”だけを拝借~「ロッキー・ホラー・ショー:レッツ・ドゥ・ザ・タイムワープ・アゲイン(原題)/The Rocky Horror Picture Show : Let's Do the Time Wrap Again 」〜


映画作品の”リメイク”というのは、昔から行なわれていたこと。”リメイク”されるということは、元となる作品に人気があるからですが、オリジナルを超えることは稀です。ドラマをミュージカル化するとか、時代設定を現代にするとか、オリジナルとは”別物”としてリメイクされれば、新たな作品として成功することもあるのですが「何故リメイクするの?」という作品もよくあったりします。


「ロッキー・ホラー・ショー」は、カルト映画の中でも有名な作品のひとつ。ロンドン舞台版のキャストをそのまま起用して、1975年に映画化されましたが、公開時はそれほどヒットしなかったそうです。その後、ニューヨークやロサンジェルスのミッドナイト上映で人気を博して「カルトムービー」を代表する作品となります。映画上映中にお約束のツッコミを入れたり、画面の中に登場するモノ(お米、新聞紙、ライター、紙吹雪など)を使用したりするのは、今でいう”応援上映”(?)のルーツと言えるのかもしれません。また、キャラクターと同じ”コスプレ”をして、スクリーンの前で映像と同時進行で演じる”シャドウキャスト”は、初公開から40年以上経った今でも世界各国で行なわれています。


「ザ・ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー:レッツ・ドゥ・ザ・タイムワープ・アゲイン(原題)/ The Rocky Horror Picture Show : Let's Do the Time Wrap Again 」は、アメリカのFOXテレビにて放映されたテレビ映画で、監督を務めたのは元々振り付け師のケニー・オルテガ・・・ドキュメンタリー映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」の監督を務めたことで知られていますが、ライブコンサートの演出家としてはさておき、映画監督としては「どうなの?」という人”では”あります。

オリジナル版の「ロッキー・ホラー・ショー」は、フランクン・フルター博士を演じたティム・カリーの出世作です。スパンコールのコルセットとガーターベルトに厚底のハイヒール、毒々しい化粧の女装姿は、一度観たら忘れられない強烈なインパクトです。リメイク版では、このフランクン・フルター博士役を「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」に出演しているトランスジェンダー(性転換手術済み)でアフリカ系のラヴァーン・コックスが演じています。



フランクン・フルター博士は、女装趣味のある(マッチョ好きでかなりゲイ寄りの)バイセクシャルの男性という設定で、良くも悪くも悪趣味気味で男性と分かる程度のクオリティの低い(?)女装ということろが愛すべきポイントだと(ボク個人的には)思うのですが、本作でフランクン・フルター博士を演じるラヴァーン・コックスは、豊満な胸の谷間をもつ「女性」・・・声の低さや体格の大きさから「元・男性」であることは分かりますが、アフリカ系の男女の外見的な性差が他の人種と比較して少なめ(?)ということもあり、女装趣味の男性というよりも大柄な女性に見えてしまうかもしれません。

フランクン・フルター博士を演じる俳優が「”白人=アングロサクソン系”でならなければならない」とは思いません。ただ、博士が理想の男性とする人造人間のロッキーは、歌詞にもあるように”ブロンドで日焼けしたマッチョマン”なのですから、違和感が全くないかというとビミョーなところであります。さらに、リフ・ラフ(リーブ・カーニー/アングロサクソン系)の”妹”であるマジェンタは、ヒスパニック系のクリスティーナ・ミリアン・・・エディ(アダム・ランバート/アングロサクソン系&ユダヤ系)の叔父であるスコット博士は、アフリカ系ベン・ヴァリーンによって演じられているのです。”ポリティカリー・コレクトネス”の観点では、演じる俳優の人種と役柄の設定は”無関係”とするべきなのかもしれませんが、シャドウキャスト公演、または、舞台ならまだしも、テレビ映画のような映像作品の場合、少々無茶な印象はあるのです。


「ロッキー・ホラー・ショー」は、1930年代から1950年代のサイエンス・フィクション、モンスター、ミュージカルに数々のオマージュを捧げています。しかし、今の視聴者には、それらの”元ネタ”には馴染みがないかもしれません。リメイク版のオープニング曲(Rocky Horror Picture Show Science Fiction Double Feture)では、シャドウキャスト公演や舞台版と同様に”案内嬢”(アイビー・レバン)が登場・・・歌詞にでてくる映画のポスター(「キングコング」「地球が静止した日」「透明人間」「禁断の惑星」など)が壁に貼られており、親切な(?)説明となっています。


「タイムワープ」で登場する”トランスベニアン”たちは、オリジナル版では”奇人変人”としかいいようのない摩訶不思議なキャスティング(デブ、ノッポ、チビ、老人など)と、お揃いの黒い燕尾服姿により(良い意味で)時代性を意識させませんでした。しかし、リメイク版では衣装と振り付けが今風(?)に変更されています。また「タイムワープ」の直後、フルター博士の登場シーンに於いては、オリジナル版はエレベーターを巧みに使うことにより、その姿の異様さの”サプライズ”を演出がされていたのですが、リメイク版ではフルター博士は撮影用(?)クレーンに乗ってゆっくりと現れる上に、その後ろの壁にはフルター博士の肖像画が飾られているために”サプライズ”もありません。


エキスパート(犯罪学者)が物語を解説するという”メタ構造”をもっている「ロッキー・ホラー・ショー」・・・リメイク版では本編を映画館の観客が観ているという、さらなる”メタ構造”となっているのです。2012年に脳梗塞により車椅子生活で言語障害を抱えている御年70歳のティム・カリーが、物語をナレーションするエキスパート役で起用されているのは胸がいっぱいになります。ティム・カリーがエキパート役でスクリーンに登場するやいなや、大騒ぎになる画面の中にいる映画館の観客たちは、本作をテレビで観ている視聴者と同じ立場(オリジナル版を知っていてリメイク版を観ている)ということになるわけであります。カルト映画であることが”前提”でのリメイク版で、オリジナル版”ありき”の”メタ構造”というわけです。


アメリカ絵画の「アメリカンゴシック」、B級のSF映画で知られていた「RKOピクチャー映画会社シンボルタワー」、トランスベニア星人としてマジェンタが登場するときの髪型の「フランケンシュタインの花嫁」、など、オリジナル版で随所に散りばめられていたオマージュの数々は、リメイク版では何故かスルー(?)という矛盾・・・逆(?)に、フルター博士がゴム手袋を引っ張るとか、スコット博士がいきなりカメラに向かって話しかけるとか、些細なギャグはしっかりと踏襲されていたりして、オリジナルへのリスペクト度合いが少々不可解。なんだかんだで、カルト映画の”お約束”だけを拝借している印象になってしまうのです。


古くは1980年の映画「フェーム」から近年では「Glee」のセカンドシーズンでフィーチャーされて、新たな世代にも浸透している「ロッキー・ホラー・ショー」をリメイクするというのは、いくらテレビ映画といえ”コレジャナイ”感しかない無謀なチャレンジではあります。セットや美術などにはオリジナル版よりもプロダクションの規模も大きくなっていますし、出演しているキャストたちも良い仕事をしていると思うのですが・・・ケニー・オルテガ監督によるリメイク版は、まったくの”別物”として突き抜けているわけでもなく、といって・・・オリジナル版への愛に満ち溢れているようにも特に感じられません。

「キング・オブ・カルトムービー」を甦えらせるのであれば、オリジナル版に忠実なシャドウキャストのライブの方が、(今までに、そのようなスペシャル番組はありましたが)素直に”リスペクト”が感じられたのではなかったでしょうか?


「ザ・ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー:レッツ・ドゥ・ザ・タイムワープ・アゲイン(原題)」
原題/ The Rocky Horror Picture Show : Let's Do the Time Wrap Again 
2016年/アメリカ
監督 : ケニー・オルテガ
出演 : ラヴァーン・コックス、ヴィクトリア・ジャスティス、ライアン・マッカータン、アナリー・アッシュフォード、アダム・ランバート、リーブ・カーニー、クリスティーナ・ミリアン、アイビー・レバン、スタッズ・ナール、ベン・ヴァリーン、ジェーン・イーストウッド、ティム・カリー
2016年10月20日アメリカFOXテレビにて放映
日本未公開

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